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薬局経営者は覚えておきたい
薬剤師を育てるコーチング

薬局のビジネスモデルは、処方箋を応需して利益を得るモデルから、地域医療に貢献する体制を整えることが利益につながるモデルへと移り変わっています。そんな中、薬局を支える薬剤師や事務スタッフに求められるスキルにも変化が起こっているといいます。地域に貢献するためにかかりつけ薬剤師として一人ひとりの患者さんに合った対応をしたり、在宅訪問でも患者さんの生活環境や病状に合わせた柔軟な対応が求められるようになっています。また、地域医療に貢献していく上で、多職種とうまく連携していく能力も欠かせません。今、これまで以上に主体的に、積極的に行動できる人材が求められています。今回は、薬局で働くさまざまなスタッフの中でも、特に主体性が求められる薬剤師へのコーチングに焦点を当ててご紹介します。

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上司は、部下のやる気と行動を引き出すサポート役

コーチングとは、相手の目標達成やパフォーマンスの向上のために、やる気を引き出し、自発的な行動を促すコミュニケーションスキルです。

これまでの人材育成の基本は「ティーチング(教える・指導する)」であり、マネジメントにおいても、指示・命令を出すトップダウン式が主流でした。しかし、競争社会の現代においては、自ら考え、行動を起こすことができる主体性の高い人材を育成することが求められるようになりました。これは薬局運営においても変わりません。過去の経験から、それを実感している薬局経営者も少なくないはずです。

コーチングとは、「相手に答えがあると考え、その答えを引き出す手法」であり、「答えは伝える側にあると考え、必要な情報や知識を共有し、相手が同じことをできるようにサポートする」ことと言えます。

薬局経営者やマネージャーは、薬剤師の気持ちを整理し、やる気と行動を引き出すためのサポート役です。まずは、薬剤師がどうしたいのか、何を考えているのか、これらを明確にするために、これから紹介するコーチングを用いて部下の気持ちを引き出し、背中を押してあげましょう。

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コーチングのコツ1 目標を設定する

コーチングにおいて、まず大切なのは「目標を明確にする」ことです。目標とは「組織の目標」だけではなく、対象者の「自己実現」も達成できるものでないといけません。ここでいう「自己実現」とは、あなたの下で働いてくれている薬剤師が本来持っている能力や可能性を最大限に発揮するものを指します。

目標が達成されたとき、自分が何を手にすることができるのか。どのような価値や意味があるのか。これらを具体化することで、薬剤師のモチベーションは上がり、組織の目標達成に向けて考え、行動できるようになります。

正しい目標設定を行うには、次の2つのルールを意識しましょう。

目標設定2つのルール

  1. 1.自分が心から望んでいるやりたい事であること
  2. 2.ゴールは複数用意すること

例えば、いま勤めている薬局で長く働きたいと思っている薬剤師には以下のようなコーチングがいいのかもしれません。

「この薬局で、どのように働きたい?」
「そのために身につけた方がいいスキルはなんだろう?」

また、高い向上心を持つ薬剤師には、以下のようなコーチングが有効でしょう。

「薬剤師としてより成長するために、患者さんに信頼してもらうことも大切じゃないかな? そのためにできることってなんだろう?」
「患者さんにとって、安心できて居心地のいい雰囲気をつくるためにできることはなんだろう?」

このような患者さんからの信頼獲得や雰囲気づくりについてのコーチングは、薬剤師に限らず薬局を支えてくれる事務スタッフやパートタイマーにも有効です。

コーチングに正解はありません。薬剤師一人ひとりの性格や価値観に合わせたコーチングというものがあります。

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コーチングのコツ2 相手を信頼・承認する

目標を設定したら次に心がけるべきことがあります。それは、「相手を信頼・承認する」ことです。ビジネスシーンにおいて、承認は目標達成を促進する効果があります。また、やる気や自発性を促し、お互いの信頼関係を構築してくれます。

承認は英語で「アクノレッジ」、コーチング用語で「アクノレッジ」は「そこにいることに気づく」という意味があります。承認とは、その人の存在に気づいていて、それを伝えることなのです。薬剤師は承認を通して、自分の成長を認識し、さらなる成長に向けてチャレンジするエネルギーを得るのです。

チャレンジするエネルギーに満ちた薬剤師に対して質問を投げかけ、考えてもらうことによって、答えとなる「取るべき行動」を明らかにしていきます。

信頼・承認するための3つの哲学

  1. 1. 人は皆、無限の可能性を持っている。
  2. 2. その人が必要とする答えは、すべてその人の中にある。
  3. 3. その答えを見つけるためにはコーチングが必要である。

これらを意識すると、薬剤師を信頼したり承認したりする具体的なコーチングが見えてきます。承認には、主に次の2つの方法があります。ひとつは、薬剤師が目標を達成したときに使用する結果承認です。

「〇〇さんの努力のおかげで、この店の服薬指導加算の算定率は、大幅アップしているよね!いつもありがとう」

もう1つが、存在承認です。目標達成までの一つひとつの成長やプロセスに目を向け、承認してあげることです。
例えばこのような感じです。

「最近の〇〇さんの服薬指導に対するがんばりには、目を見張るものがあるね」
「知識が増えて、患者さんに伝えられることが増えてきたね」
「〇〇さん、いつも服薬指導の業務をありがとう」

たったこれだけの声がけでも、薬剤師のモチベーションは高まるものです。

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コーチングのコツ3 スキルを身につける

コーチングの3大スキルをご存知でしょうか? 前述の「承認」もそのひとつ。それ以外に「傾聴」と「質問」があります。これらのスキルを使いこなすことで、薬剤師は自分の意見や考えを積極的に表現し、行動に起こすことができるようになります。普段の薬剤師とのコミュニケーションで使えそうな具体的なコーチング例を展開しています。

傾聴スキル

傾聴とは、徹底的に相手の話を「聴く」ことです。日頃から「部下が話しかけやすい雰囲気」をつくっておくことが大切です。部下は威圧的・拒絶的な印象が強い上司にはそもそも相談しようという気になりません。つねに穏やかな表情でいることを心がけ、あいさつなども積極的にするよう心がけましょう。

コーチングの目的は薬局経営者が答えを示すのではなく、薬剤師自身に解決策を考えさせることにあります。

問題の事実関係だけではなく、それに対して薬剤師がどのように感じているかについても話してもらわなければなりません。誰かに話をすることで、情報のもつ意味を客観的に認識できるようになります。当初話そうとしていた以上の話をするように仕向けることも必要です。タイミングよく相づちを打つなどして、自分が相手の話をきちんと聞いていることをわかってもらわなければなりません。

質問スキル

質問を通して、薬剤師の考えを引き出してあげましょう。質問は大きく2種類に分けることができます。

「クローズドクエスチョン」と「オープンクエスチョン」です。

クローズドクエスチョン

「はい」や「いいえ」で答えられるような、回答範囲が限定された質問のことをクローズドクエスチョンといいます。「今は西暦何年ですか?」というような明確な正解があるものや、「はい」「いいえ」で答えられるものなど、質問力が問われないものを指します。シンプルに答えを早く知りたい場合や、話を長引かせたくない時などに使います。

オープンクエスチョン

「在宅訪問で患者さんとの会話を引き出すためにはどうすればいいだろう?」
「かかりつけ薬剤師として、〇〇さんが患者さんにできることってなんだろう?」
といった答えが1つに決まっていない質問のことをオープンクエスチョンといいます。

在宅訪問の場合、このような会話があるかもしれません。

「今日の在宅訪問はどうでした?」
「〇〇さんが、私の質問に答えてくれなくてうまくヒアリングできませんでした。どう話しかけるのがいいのかわからなくなってしまいました」
「なるほど、まったく話せなかったわけではないですよね?どんなことをおっしゃっていたか振り返って一緒に対応を考えませんか?」

相手に自由に回答してもらう形式のため、自由な意見が聞きたい場合に有効です。社会には正解のない問いの答えを求められることが多く、このオープンクエスチョンを使えるようになることが重要です。

また、この他にも以下のような質問スキルがあります。

If質問:「もし、○○さんが患者さんだったとしたら、どうしてほしい?」

立場やシチュエーションを変えて考えることで、行き詰まった思考の枠組みを広げる質問スキルです。

チャンクダウン:「すごく興味深いから、もう少し具体的に教えてほしいな?」

薬剤師が答えてくれた内容にさらに質問をすることによって情報を細かく掘り下げていくことをチャンクダウンといいます。細かく掘り下げていくことによって、まだ具体化されていない相手の答えを具体的なものにしていきます。

スライドアウト:「なるほど。〇〇さんのいう通りだね。他には?」

思考の幅を広げる質問テクニックです。アイデアを出すときや、思考をいくつかのパターン用意したいときに使います。チャンクダウンの質問と合わせて使うと効果的です。

薬局経営者は、薬剤師とさまざまな状況で関わります。コーチングスキルを実践することで、状況に応じた質問ができるようになるでしょう。

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コーチングによる人材育成こそ、未来の薬局に不可欠

薬局に限らず、上司は部下にティーチングを行いがちです。

働いてくれている薬剤師たちがこれまで受け身な姿勢だった理由は、薬剤師に原因があるのではなく、「あれをやって」「これをやって」とティーチングをしてしまっていたからかもしれません。コーチングを駆使して、主体的に考えて行動できる薬剤師に変えていきましょう。まずは、答えを決めないオープンクエスチョンから取り入れてみてはいかがですか?急に面談などを行うと警戒されてしまうので、まずは日々の業務の休み時間や、一緒にランチに出かけたときに質問してみましょう。薬局経営は今後、地域医療への貢献がますます重要になっていきます。在宅訪問やかかりつけ薬局として、患者さん一人ひとりの身体や性格に合わせた対応をするために、自身の置かれた状況に合わせて行動できる薬剤師が必要とされています。それが、地域医療に貢献し、経営を安定させることに繋がります。

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