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流通改善の先にある
地域医療への貢献とは
「医薬品に関わる企業として『公』に向けた仕事をしていきたい」
「ちかくにいる。ちからになる。」第3回

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「ちかくにいる。ちからになる。」第3回

株式会社メディカルシステムネットワーク

株式会社メディカルシステムネットワーク

SCM事業本部 副本部長 兼 営業推進部長勝木桂太

「ちかくにいる。ちからになる。」  この連載は、”患者の方々や地域、さらには医療人を、いちばんちかくで支えるちからになりたい。”という想いから始まった企画です。地域医療の未来を創るさまざまな人物が、それぞれの役割や視点から想いを語っていきます。 第3回目は、薬局と医薬品卸売会社(以下、卸)の間に立って流通改善に取り組む、(株)メディカルシステムネットワーク SCM事業本部副本部長 兼 営業推進部長の勝木桂太氏の登場です。日本国内の医薬品流通の変遷や「医薬品ネットワーク」が目指す方向性、地域医療への想いについてお話を聞きました。

1
医薬品流通が抱える長年の課題

勝木氏が株式会社メディカルネットワークシステムに入社したのは2004年のこと。その前年には、卸の一次売差がマイナスに転じ、卸は仕入れ値より安い価格で薬局に薬を販売するという、業界特有のいびつな流通構造が明らかになっている。

勝木副本部長が入社された2000年代、医薬品業界はどのような問題を抱えていましたか?

  • 勝木 氏:
  • 入社した頃は、1990年代から始まった卸の吸収合併、集約化が概ね終わった頃です。私は医薬品業界の門外漢でしたから、入社直後はよくわかっていませんでしたが(笑)。 当時から問題になっていたのは未妥結・仮納入でした。医療用医薬品の公定価格である薬価は原則2年ごとに見直しが行われます。薬局は技術料と薬価差益が収益の2本柱となるため、公定価格が見直されるたびにできるだけ安く購入し薬価差益を出したいと考えます。一方、卸はできるだけ高く売りたいという思惑がありますから、価格が決まらないまま納品だけが行われ、価格交渉の期間が長引くというものです。医薬品は生命に関わる商品ですから、薬局から発注があれば卸は納品せざるを得ません。すると売り上げは立っても、価格が決まらないまま月日が過ぎていくといった状況になります。

会計上も齟齬が生じますね。

  • 勝木 氏:
  • 一応、薬局・卸間で取り決めた暫定価で支払いは行われますが、未妥結期間が長引き、納入価格が決まらないまま決算期をまたいでしまう「決算期またぎ」がおこることもありました。上場企業が発表する利益数値の信憑性に疑問を持たれるような状況です。 また、厚労省が行う医薬品価格調査にも影響がありました。本来、調査に反映させるべき妥結価ではなく、暫定価でしか薬価調査ができませんから、未妥結期間が長期化すればするほど影響が大きくなります。

その他にも問題はありましたか?

  • 勝木 氏:
  • 未妥結・仮納入の背後には総価取引の問題があります。医薬品は、研究開発コスト・製造コスト・原薬構成比率等によって利益率の多寡が決まります。また、患者数の大小というマーケットの大きさにも影響をうけます。本来、それぞれの医薬品の価値に基づいて薬価が決められていますので、価格交渉も同様に医薬品の価値に基づいて交渉がなされるべきですが、それはなかなか難しいことです。薬局の取扱品目は1,000品目~2,000品目程度。複数の店舗を持ちいろいろな診療科の処方箋を受け付けている法人ですとその3~4倍程度の3,000品目~8,000品目程度になるでしょうか。それら全てを医薬品ごとに価格交渉を行うのは大変な作業です。結果として、薬局と卸の間では、「購入する医薬品を全部まとめて2割引きにしてほしい」「医薬品のカテゴリごとにまとめて交渉させて」という総価交渉に陥ってしまいます。ですが、総価取引は医薬品の価値が価格と紐づかない理屈のない価格になってしまいます。すると、薬局と卸の我慢比べとなり1〜2年ほど妥結しないというケースにもなりがちです。

2
最安値ではなく最適価格を目指す

医薬品ネットワークは、医薬品業界全体に好影響を及ぼすことを目指している。その根底には税金が大半を占める医療費に携わることへの責任感と、世の中に貢献したいという企業理念がある。

医薬品ネットワークは流通改善を目指して1999年に開設されました。加盟店が増えるまでに長い年月を要していますね。

  • 勝木 氏:
  • はい。今でこそ5,600件以上が加盟するサービスですが、2018年の流通改善ガイドライン施行をきっかけに加盟店が急増するまでは、年間の新規加盟は200~300件程度でした。以前は、総価交渉・カテゴリ交渉が業界の慣習となっていましたので、卸との直接交渉によって価格や条件を満たせる薬局が多かったのだと思います。 医薬品ネットワークは開設当初から「一物一価」制で、一つの医薬品には一つの価格しか持ちません。「A」というお薬は、全国のどの卸から購入しても同じ仕入価格です。数社から相見積もりをとって、一番安い価格を提示した卸と取引をするわけではありませんから、最安値ではなく「ほどほどの良い価格」でした。ですので、当時は薬局にとって当社ネットワークの価格条件がそれほど魅力的ではなかったのかもしれません。

卸にも配慮した価格設定ということでしょうか。

  • 勝木 氏:
  • 最安値にこだわって無茶な価格交渉を行うだけでは、卸と薬局がWin-Winの関係を築くことはできませんし、持続性も生まれません。全国の卸に合意頂ける「一物一価」を作り上げることに価値があると思っています。薬局からするとどの卸から購入しても同じ価格になるわけですから、薬局は取引する卸を価格ではなくサービス・機能で評価します。 従来からの取引関係を大切にしても良いですし、情報提供やサービスの質で選んでも良いわけです。 卸は価格競争(値引競争)が無くなりますので、提供サービス・機能で競争することになります。卸にとっては、正しい営業活動が正しく成果に結びつき易くなる仕組みということです。 弊社の田尻(メディカルシステムネットワーク代表取締役社長)はよく「最安値ではなく、最適価を狙え」という表現を使います。最適な価格、リーズナブルゾーンを狙えということです。ただ、最適価で一物一価を作ることは、なかなかの難しさがあります。 我々が一物一価を作り上げる際に交渉のベースにするのは広域卸の見積価格です。 広域卸の見積価をベースに地域卸の見積価格も加味して見積りをマッピングすると一定の価格レンジができてきます。我々は、その価格レンジの中で交渉を行い、適正と思われる価格を見つけ出し妥結します。これを全ての商品について行うわけですからかなりの労力です。 これだけ苦労して作った価格でも、ある卸からは「全国一律価格では、僻地や離島のようなデリバリーコストがかかる地域においては負担が大きい、割に合わない」と言われることもあります。現状の目の前に起きているその取引だけを切り取って見た場合、ご指摘の通りだと思います。ただ、発注を集約し、納品回数を減らすことで、デリバリーの効率化を図ることも可能です。ですから我々は流通改善に拘りますし、卸には「全体を通して医薬品流通コストの適正な負担のあり方を考えて、一緒にやっていきましょう」とお話しています。

薬局もその最適価を受け入れることで、薬局と卸のフェアな関係が生まれるのですね。

  • 勝木 氏:
  • どの業界でも言えることですが、特に医薬品業界に携わっている私たちは、自社の利益だけにこだわるのではなく、公に向かった仕事をしていかなくてはならないと思っています。医薬品ネットワークが医療業界のインフラとして発展し、医薬品サプライチェーンの一部として効率化を進めることで、国の医療財政に対してインパクトを与えることもできるでしょう。こういうビジネスは、社会に対して貢献したいという視座がないと長続きしないと思います。

3
流通改善を実現するためのステップ

医薬品ネットワークに加盟するには条件がある。それは、流通改善を実現するチームの一員として、薬局に日常業務の改善を促すものだ。受発注の方法や時刻を見直し、効率化を図ることが医薬品流通に大きな変化をもたらすという。

医薬品ネットワークに加盟するには、どのような条件があるのですか?

  • 勝木 氏:
  • まず、支払いサイトを2ヶ月にしていただきます。それから加盟1年以内に在庫管理システムを導入し、オンライン発注率90%以上を目指していただく。返品率も注視します。また加盟の際には、薬局の経営者の方に「流通改善に協力します」という主旨の文書にサインをいただいています。このサービスの持続性を保つためにも、あるいは今後の医療を支えていく意味でも、「医薬品ネットワーク」に加盟される皆様には、「卸とWin-Winの関係を築くために協力する」という覚悟を表明していただきたいのです。

支払いサイトを2ヶ月にする理由は何でしょうか?

  • 勝木 氏:
  • 第一にご加盟いただく企業の企業価値向上のためです。 仕入債務は卸からの借金であり、短期流動負債です。この部分を減少させることによるB/Sの改善は自己資本比率を向上させることとなり企業価値が上がります。これからの読みにくい情勢下でフットワークを軽くすることがとても重要と考えています。 第二に卸のキャッシュフロー改善です。 卸は、キャッシュフロー改善・債権圧縮の観点からもサイト短縮を望んでいますが、顧客である薬局に対して、支払いサイトを短縮するように頼むのは難しいものがあります。そこで第三者の私たちが支払いサイトの調整をかけ、それによって卸が得られるメリットを医薬品ネットワークへの評価として一部を価格に反映していただきます。 業界の支払いサイトの平均は3ヶ月程度ですが、薬局では売り上げを立てた2ヶ月後には社保・国保からお金が入ってきます。その入金サイクルに合わせて支払いをしましょう、という考え方です。 加盟時に3ヶ月サイトを2ヶ月に短縮しうるか否かで薬局の財務健全性を評価できますし、加盟タイミングに財務体質を強化し共に健全経営を行いましょうと伝えています。もちろんサイト短縮のためのサポートも弊社で行います。 卸は医薬品が生命関連商品であることから欠品回避のために多くの在庫を持たなくてはなりませんし、急な発注に対応することも求められます。デリバリー面では物流センター等への多額な投資も必要です。結果として高コストな体質になっています。ですから、支払サイトを短縮しキャッシュを創出することには大きな価値があると考えます。

では、オンライン発注率を上げることの意義とは?

  • 勝木 氏:
  • 卸の受注コストを下げることができます。「医薬品をオンラインで発注すると、1行あたりのコストは2.5円。一方、電話やFAXで発注すると1行あたり85円かかります。卸の受注コストを下げるためにオンライン発注にしましょう。その方が皆さまの作業も楽ですよ」と訴え続けて20年が経ち、現在、加盟店のオンライン発注率は、92%になっています。 また医薬品の返品率は非常に高く、これが卸にとって大きな問題となっています。売上を取り消すための処理をコストをかけて行うことになるからです。また返品された医薬品は安全面の観点から再販は難しいです。これらのコストは取引条件に反映せざるを得ません。 加盟店が在庫管理システムを導入しオンライン発注率を上げることにより、適正な発注、適正な在庫に近づきます。その次のステップでは、システム上で発注回数をまとめることもできます。そうなれば卸の受注行数・納品回数が減り、適正なタイミングで発注をかけることもできます。

発注の回数だけでなくタイミングも重要なのですか?

  • 勝木 氏:
  • 多くの薬局は閉店後に発注をかける一方、納品は午前中を希望するケースが多いので、卸は19:00以降に受注して夜間にピッキング作業を行い早朝までに荷積みも終わらせなくてはならず、その時間帯の人員も確保しなくてはなりません。それらすべてが卸のコストとなります。 在庫管理がきちんとできていれば、朝に届かなくても問題はないはずですから、卸の負担を軽減できます。また卸の配送はセンターから納品する場合と、各エリアにあるデポという拠点から納品する場合の2パターンがあり、どちらから配送するかは発注時刻によって変わります。ただし、デポの場合は在庫が限られるため、欠品があれば後からもう一度納品に行かなくてはなりません。センターが受注する時間に発注をかけられると卸の作業も軽減でき、薬局としても欠品や、後送の心配も不要になります。

4
加盟店をつなげることで地域医療に貢献したい

今後、御社の医薬品ネットワークの進んでいく方向性についても教えてください。地域医療についても大きな役割を果たすサービスになるのでは?

  • 勝木 氏:
  • 私たちが意識しているのは、中小薬局の経営支援です。全国各地で医療を維持することを考えると、中小の薬局の存在抜きには語れません。 「チェーン調剤」と呼ばれている大手薬局グループは、採算性の観点から地方へ積極出店は行いません。 すると地方の医療や薬局を守るためには、どうしても個人経営や小規模な薬局にその役割を担ってもらうことになります。今後、在宅医療が当たり前になると、薬局がその地域の医療を守ることになると感じています。そのため、そういった薬局の経営をフォローすることがすごく大事。私たちが中小薬局の経営支援を大切にする1つの理由です。

医薬品ネットワークの加盟店は、中小薬局の他にどのようなものがありますか?

  • 勝木 氏:
  • 医薬品ネットワークの加盟店のなかには地域の基幹病院や、その周りにある薬局が加盟するケースもあります。全国に5,600件以上もの加盟店があると、ドミナントを組める地域も出てきます。今までは弊社と加盟店が点と点でつながる「線」でした。今後は、加盟店同士のつながりや加盟店の基幹病院とのつながりが増えてくることで、点が線となり、線がつながり面となる地域が出てくると思います。すると、その地域で採用する薬をそろえたりできると思っています。医療効率もあがりますし、地域の中でのネットワークを構築して地域包括ケアシステムにも貢献していけるのではないかと考えています。

地域ごとにネットワークが構築されれば、仕入れも無駄が減らせそうですし、情報交換も活発になりそうですね。

  • 勝木 氏:
  • そうですね。今までは年に1〜2回セミナーを開催していたくらいですが、加盟店同士がつながるきっかけを増やしたり、加盟店の声を吸いあげるアンケート機能のような仕組みを作るなどの取り組みもしていきたいと思っています。また、プラットフォームを構築して、加盟店同士をつなぐ仕組みもつくり上げます。その上で、各地域で集合研修のような取り組みがあってもいいですよね。加盟店同士がつながる世界をつくっていくことが、地域医療の貢献につながると考えています。

卸と薬局が互いにサプライチェーンとはどうあるべきかを考えながら良好な関係を築くことで流通改善が実現するという考え方がよくわかりました。また、勝木氏の地域医療への想いや、医薬品ネットワークを通して地域医療に貢献していくビジョンについても伝わってきました。

プロフィール

勝木 桂太(かつき けいた)

2004年、(株)メディカルシステムネットワーク入社。経営企画部に所属し2008年の東証二部上場や会社法・金融商品取引法(J-SOX)対応を担当。その後、(株)ファーマホールディング(現メディカルシステムネットワーク)の営業企画部でM&Aのサポート、事業統括本部(現・薬局事業本部)で東日本における薬局の事業会社の管理などを担当し、2015年から現職。

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