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地域医療

薬薬連携を国が後押し、高齢化見据え
「多様で全人的ニーズへの対応」呼び掛け

薬局と医療機関の薬剤師たちによる「薬薬連携」の大切さが叫ばれています。入退院を繰り返しがちな高齢者が「ポリファーマシー」になるのを防いだり、がんの患者さんに質の高い外来化学療法を提供したりするには、薬局と医療機関の薬剤師たちが情報を共有して適切に対応することが不可欠なためで、国は近年、診療報酬と医薬品医療機器等法(薬機法)の両面で連携の強化を進めようとしています。医療機関との連携はどのように始めたらいいか、薬薬連携にまつわる最近の動きと共にまとめました。 ※この記事は「CBnews」とのタイアップ企画です。

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在宅の高齢者、平均6.5種類服用

厚生労働省の「高齢者医薬品適正使用検討会」が2019年4月24日に開いた会合では、省内の研究班が行った実態調査の結果が報告されました。

この調査は、高齢者(65歳以上)の多剤服用の実態を明らかにするのが目的で、研究班は、在宅療養中の患者さん1,211人と特別養護老人ホームの入所者925人に処方されている薬剤の数などを、ある自治体の1カ月(2014年10月)分のレセプトデータで解析しました。

報告によると、この期間に処方されていた薬剤の種類数は、在宅療養中が平均6.5種類、特養入所では平均4.9種類。6種類以上処方されている人は在宅療養中で全体の計60%、特養入所では計41%を占め、慎重な投与が必要な薬(PIMs)のうち、睡眠薬・抗不安薬や利尿薬を処方された割合が在宅療養中(計49%)と特養入所(計39%)の双方で高いことも分かりました。

複数の病気を抱えがちな高齢者では、症状を和らげるために薬の処方が増え、多剤服用になりやすいといわれます。多剤服用のうち、抑うつなどの有害事象を伴う「ポリファーマシー」の発生頻度は6種類以上を服用すると高まるとされますが、厚生労働省の集計では、75歳以上のほぼ4人に1人がそれより多い7種類以上を調剤されていることも分かっています(図1)。

図1 同一の薬局で調剤された薬剤の種類数(月)

出典:「高齢者の医薬品適正使用の指針」(総論編)

原出典:2016年 社会医療診療行為別統計

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厚労省課長、薬薬連携の大切さを強調

後期高齢者(75歳以上)が急増し始める2022年が目前に迫り、薬の適正使用の重要性が叫ばれています。そうした中、国は薬局と医療機関の連携を進めようと相次いで対策を打ち出しています。

2020年度の診療報酬改定では、医療の役割分担と連携強化がテーマの一つになり、薬局と医療機関の連携強化が具体策とされました。

地域包括ケアシステムの整備を促すのが狙いで、複数の医療機関を受診する患者さんの重複投薬の解消を処方元の医療機関に提案した場合に薬局が算定する服用薬剤調整支援料2(3カ月に1回100点)などが新設されました。

この報酬は、複数の医療機関から内服薬を6種類以上処方されている外来患者さんが対象で、▽服用中の薬剤を一元的に把握し、▽処方の見直しの提案や服用中の薬剤の一覧を報告書にまとめ、医療機関に送付する-などが算定要件とされました(図2)。

一方、2020年9月からは、薬機法の改正に伴い、調剤を行った後も患者さんを必要に応じてフォローすることが薬剤師に義務付けられ、患者さんの服薬状況を処方医らにフィードバックする努力義務も規定されました。そして2021年8月には、医療連携の体制を整備した薬局を都道府県知事が認定する制度の運用が始まります。

新たに認定されるのは「地域連携薬局」と「専門医療機関連携薬局」で、それぞれ地域の医療機関や、がんの専門病院などとの情報連携が求められます。

薬剤師や薬局関連の政策を担当する厚生労働省医薬・生活衛生局の込山愛郎(こみやま・あいろう)総務課長は、2020年度の全国薬務関係主管課長会議の説明動画の中で、これからの薬局の役割について、「地域包括ケアの一員としてどう活躍するかが、本当に現実的な問題として大きなテーマになる」と述べ、今回の法改正がそれを見据えたものだと説明しました。

背景にあるのは、やはり後期高齢者の急増への危機感です。込山課長は、多剤服用の解消など高齢者が抱える多様で全人的な医療ニーズに対応するため、薬局と病院の薬剤師が患者さんの入退院時に連携するなど、地域の多職種による協働の大切さを強調しました。

図2 外来患者さんへの重複投薬解消に対する取り組みへの評価

出典:2020年度診療報酬改定の概要(調剤)を参考に作成

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薬薬連携に共通のツールを活用

薬局と医療機関の連携を円滑にするには、組織をまたぐ薬剤師同士の協働が不可欠ですが、実際にはなかなか進んでいないと指摘されます。そうした中、薬薬連携を強化する取り組みが各地で進んでいます。

新潟県薬剤師会では2018年度、「患者のための薬局ビジョン推進事業」を県から再受託し、薬薬連携やポリファーマシーへの取り組みの実態を調査しました。病院への調査では、県病院薬剤師会の会員が勤務する121病院のうち85病院が回答し(有効回答率70.2%)、疑義照会以外で薬局から情報提供を受けたことがあると答えたのは全体の47%と半数に届きません。

また、病院側は「服薬状況」や「有害事象」などの情報を薬局に求めているのに、実際に提供されている情報は「残薬」に関するものが最も多いなど、一部に差異があることも分かりました。調査結果を踏まえて県薬剤師会では、病院からの「返信欄」を入れた服薬情報提供書(トレーシングレポート)など共通のツールを作り、会員らにそれの活用を呼び掛けています。

一方、地域医療機能推進機構の九州病院では、退院する患者さんへの継続的なフォローにつなげるため、▽退院時の処方▽入院中に処方を中止・追加・変更した理由や経緯▽退院後の服薬上の注意点▽アレルギーや副作用の経験の有無-などを記載した用紙を「お薬手帳」に貼り付け、地域の薬局などと情報共有しています。

用紙には、地域の薬剤師会と共同で行ったアンケートで薬局と病院の薬剤師の80%以上が「必要」と回答した情報を盛り込みました。患者さんが退院する際に病棟薬剤師がこれらの情報を記入し、かかりつけ医や転院先の医療機関、薬局などに患者さんが見せることで共有する仕組みです。

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まずは病院薬剤師さんと接点を

医療機関の薬剤師との連携をどう始めるか。メディカルシステムネットワークで、グループの薬局と医療機関との連携推進を担当する薬剤師の土井真喜さんが、薬薬連携を始めるためにすぐにできる対策として挙げるのが、地域の医療関係者が参加する勉強会や研修会で、病院薬剤師との接点をつくること。研修会終了後に質問したり名刺交換したりして、人脈を広げることが第一歩だということです。

「在宅療養中の患者さんの様子を把握し、薬物療法を的確にフォローするため、病院側も薬局と連携したがっている。まずは友達づくりから。患者さんのことを思って活動していれば、きっとうまくいく」と土井さんは話します。

薬局からの疑義照会でも、人となりが分かっている相手からの相談には、病院側も親身に対応してくれると土井さんは実感しているといい、「例えば『1医療機関1薬剤師』を目標にするといいかもしれない」と話します。

患者さんへの服薬指導で迷ったり、トレーシングレポートへの返信が多忙な医師から届かなかったりする場面でそうした人脈がものをいい、助言や仲介を頼みやすくなります。「1人対1人」のつながりが、円滑な情報連携につながることもありました。

例えば、がんの入院治療を終えた患者さんの情報連携では、入院中に患者さんが受けた治療や処方の経緯、退院後の服薬フォローで特に注目すべきことなどを病院から確認します。一方、薬局からは、退院後の生活の様子や服薬、副作用の発現状況などを伝えてきました。

退院時カンファレンスに参加すれば治療の経緯や治療方針などの情報を格段に入手しやすくなりますが、病院から呼ばれないとそもそも参加できません。土井さんは「『退院時共同指導に加わってほしい』と感じてもらうには、かかりつけ薬局・かかりつけ薬剤師としての役割をしっかり果たし、医療機関との関係づくりにつなげることが大切」と話しています。

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