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医薬品の基礎知識

忙しい薬局経営者に! パッと見てわかる新薬解説
【2021.4月収載版】

2021年4月21日、厚生労働省は新薬12製品を薬価収載しました。多くの薬剤師が動向を確認する新薬の発売状況。日々、経営業務に追われて、見過ごしてしまっていませんか? そこで今回は日々忙しい薬局経営者や薬剤師の方々のために、調剤薬局で取り扱われる薬に絞って要点をわかりやすく解説していきます。

1
調剤薬局で取り扱う新薬を紹介

薬価や算定方式については、同年4月14日に行われた第478回中央社会保険医療協議会(中医協)総会で了承されています。

今回薬価収載された12の新薬のうち、調剤薬局で取り扱う機会の多い以下7製品の特徴を簡単に紹介していきます。

2
マスーレッド錠(モリデュスタットナトリウム)

マスーレッドは、保存期と透析期の腎性貧血改善のための低酸素誘導因子プロリン水酸化酵素(HIF-PH)阻害薬です。HIF-PHを阻害することで通常の酸素状態でも転写因子であるHIF-αが安定することによりEPO遺伝子の転写が活性化され、結果的に赤血球産生が促進します。エベレンゾ(ロキサデュスタット)・ダーブロック(ダプロデュスタット)・バフセオ(バダデュスタット)・エナロイ(エナロデュスタット)の4つのHIF-PH阻害薬に次ぐ5剤目となります。
エポエチン アルファ(エスポー他)、ダルベポエチン アルファ(ネスプ他)などの従来腎性貧血の治療に用いられてきた赤血球造血刺激因子(ESA)製剤は、注射薬であることから患者の身体的負担の大きさや感染症リスクが懸念されていました。さらにESAによる抗EPO抗体陽性赤芽球癆(せきがきゅうろう)が発現することも問題となっていました。HIF-PH阻害薬は非ESAの錠剤タイプなので、そのような問題を回避することが可能です。
保存期慢性腎臓病患者の場合、ESA製剤で未治療の場合は1回25mg、ESA製剤から切り替える場合は1回25mgまたは50mg、透析患者の場合は1回75mgを開始用量とし、1日1回食後に経口投与します(患者の状態により適宜増減、最高用量は1回200mgまで)。
重大な副作用として、血栓塞栓症(脳梗塞・心筋梗塞・シャント閉塞など)及び間質性肺疾患があらわれることがあるため、投与開始後はヘモグロビン濃度が目標範囲で安定するまで2週間に1回程度、それ以降は4週間に1回程度確認し、必要以上の造血作用があらわれないよう注意する必要があります。

製品名 マスーレッド錠5mg/同錠12.5mg/同錠25mg/同錠75mg
規格単位(薬価) 5mg1錠(44.30円)
12.5mg1錠(93.70円)
25mg1錠(165.10円)
75mg1錠(405.30円)
効能・効果 腎性貧血
市場規模
予測
ピーク時 9年後
ピーク時投与患者数 10.9万人
ピーク時販売金額 91億円
製造販売(発売日) バイエル薬品(2021年4月22日)

3
エムガルティ皮下注(ガルカネズマブ(遺伝子組換え))

エムガルティはカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)に特異的に結合するヒト化抗CGRPモノクローナル抗体です。片頭痛の急性期治療に用いられてきたセロトニン受容体(5-HT1B/1D)作動薬であるトリプタン系薬などとは異なり、片頭痛発作を抑制する予防療法として使用されます。エムガルティはCGRPに特異的に結合し、生理活性を阻害することで片頭痛発作を抑制するとされています。
成人には初回に 240mgを皮下投与し、以降は 1ヶ月間隔で 120mgを皮下投与します。
従来の片頭痛の予防療法では、バルプロ酸ナトリウム(デパケン他)などの抗てんかん薬、プロプラノロール(インデラル他)などのβ遮断薬、アミトリプチリン(トリプタノール他)などの抗うつ薬などが用いられてきましたが、毎日の服薬が必要でした。エムガルティは、月1回の皮下投与で予防効果を発揮します。用量調節が不要で、長期的な片頭痛患者のアドヒアランスが向上すると考えられています。

製品名 エムガルティ皮下注120mgオートインジェクター/同皮下注120mgシリンジ
規格単位(薬価) 120mg/オートインジェクター1本(45,165円)、120mg/シリンジ1本(44,940円)
効能・効果 片頭痛発作の発症抑制
市場規模
予測
ピーク時 10年後
ピーク時投与患者数 4.8万人
ピーク時販売金額 173億円
製造販売(発売日) 日本イーライリリー(2021年4月26日)

4
エドルミズ錠(アナモレリン塩酸塩)

エドルミズはアナモレリン塩酸塩を有効成分とする、日本初の「がん悪液質※」に対する治療薬です(※注:非小細胞肺癌、胃癌、膵癌、大腸癌に限る)。
アナモレリンはグレリン受容体であるGHS-R1a(成長ホルモン放出促進因子受容体タイプ1a)を介してGHの分泌を促進させ、食欲を高めることで筋肉量や体重増加を図ります。体重減少や食欲不振を認めるがん悪液質の改善を目的に開発され、2019年8月に行われた新薬の承認可否の審議で、有効性や安全性、医療機関への情報提供などにおける疑義が多数あったため継続審議となっていましたが、がん種を絞らない「がん悪液質」を効能・効果としていたところを「非小細胞肺がん、胃がん、膵がん、大腸がんのがん悪液質」を効能・効果としたほか、全ての疑義を解消したため、今回承認となりました。
成人には100mgを1日1回、空腹時に経口投与します。エドルミズを投与しても体重増加や食欲改善が認められない場合は、投与開始3週間後を目途に原則中止することとされています。

製品名 エドルミズ錠50mg
規格単位(薬価) 50mg1錠(246.40円)
効能・効果 下記の悪性腫瘍におけるがん悪液質
[非小細胞肺癌、胃癌、膵癌、大腸癌]
市場規模
予測
ピーク時 10年後
ピーク時投与患者数 12万人
ピーク時販売金額 38億円
製造販売(発売日) 小野薬品工業(2021年4月21日)

5
オラデオカプセル(ベロトラルスタット塩酸塩)

オラデオカプセルは遺伝性血管性浮腫(HAE)治療のための新規経口剤です。先駆け審査指定制度の対象品目として指定され、さらに希少疾病用医薬品の指定も受けていました。オラデオカプセルは、血漿カリクレインを特異的に阻害することでHAEにおける過剰なブラジキニンの生成を抑制し、HAEの急性発作の発症抑制が期待されています。
成人及び12歳以上の小児に、ベロトラルスタットとして150mgを1日1回経口投与します。

製品名 オラデオカプセル150mg
規格単位(薬価) 150mg1カプセル(74,228.20円)
効能・効果 遺伝性血管性浮腫の急性発作の発症抑制
市場規模
予測
ピーク時 10年後
ピーク時投与患者数 246人
ピーク時販売金額 67億円
製造販売(発売日) オーファンパシフィック(2021年4月23日)

6
カルケンスカプセル(アカラブルチニブ)

カルケンスカプセルは再発又は難治性の慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫を含む)を効能・効果とする硬カプセル剤です。カルケンスは、選択的ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤です。多くのB細胞性腫瘍の発症などには、B細胞受容体(BCR)シグナル伝達経路の活性化が関与しています。このBCR経路でシグナル伝達において重要な役割を担っているBTKにアカラブルチニブが共有結合することで不活性化します。
成人に1回100mgを1日2回、経口投与します(患者の状態により適宜減量)。
抗悪性腫瘍剤であるイブルチニブと比較した第3相試験の結果、アカラブルチニブはイブルチニブに対して無増悪生存期間の非劣性が認められました。また、安全性に関する重要な副次的評価項目も達成しており、アカラブルチニブによる治療を受けた患者はイブルチニブによる治療を受けた患者よりも、心房細動の発現率が統計学的に有意に低いことが示されました。

製品名 カルケンスカプセル100mg
規格単位(薬価) 100mg1カプセル(15,202.20円)
効能・効果 再発又は難治性の慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫を含む)
市場規模
予測
ピーク時 10年後
ピーク時投与患者数 309人
ピーク時販売金額 26億円
製造販売(発売日) アストラゼネカ(2021年4月21日)

7
アルンブリグ錠(ブリグチニブ)

アルンブリグ錠は、選択的にALKを阻害する次世代のチロシンキナーゼ阻害薬(ALK-TKI)です。既存のクリゾチニブなどと同様、ALKのリン酸化活性を阻害する作用によって癌細胞の増殖を抑制する、強力かつ選択的なALKチロシンキナーゼ阻害薬となっています。
増悪したALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発NSCLC患者を対象とした国内第2相試験(J-ALTA試験)や、ALK阻害薬の治療歴のないALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発NSCLC患者を対象とした海外第3相臨床試験(対照:クリゾチニブ)(ALTA-1L試験)において、ブリグチニブの有効性と安全性が検証されました。
ALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がんに対して1次治療から使用可能で、成人には1日1回90mgを7日間経口投与し、その後、1日1回180mgを経口投与します(患者の状態により適宜減量)。

製品名 アルンブリグ錠30mg/同錠90mg
規格単位(薬価) 30mg1錠(4,200.50円)、90mg1錠(11,598.00円)
効能・効果 ALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌
市場規模
予測
ピーク時 10年後
ピーク時投与患者数 670人
ピーク時販売金額 51億円
製造販売(発売日) 武田薬品工業(2021年4月23日)

8
サルプレップ配合内用液(無水硫酸ナトリウム/硫酸カリウム/硫酸マグネシウム水和物)

サルプレップは大腸内視鏡検査を行うための腸管洗浄剤です。服用量は480mL~960mLで、検査当日のみの投与と、検査前日と当日に分けて2回投与する用法があります。検査前日と当日に分けることで朝早くから検査をすることができるため、患者や医療従事者におけるニーズに広く対応できるようになります。
本剤の有効成分である無水硫酸ナトリウムや硫酸カリウム、硫酸マグネシウム水和物に由来する硫酸イオンは腸管吸収が少ないため、硫酸イオンが消化管内で浸透圧成分として働き、水分を保持することで腸管洗浄の効果をより高めます。
国内では、ポリエチレングリコール(PEG)電解質製剤(ニフレック、モビプレップ)が使用頻度の高い腸管洗浄薬ですが、濃縮液を希釈し、複数回に分けて便が透明になるまで追加しながら最大2リットルの希釈液を長時間かけて服用する必要があり、患者への負担が大きく、不十分な腸管洗浄となる懸念がありました。
サルプレップは服用時に調製をする必要がないため、医療現場での調製の手間を省くとともに、患者による濃縮液の誤飲を防ぐことが期待されます。また、3種類の硫酸塩の単剤投与による電解質変動を抑えられるため、副作用の軽減も見込めます。

製品名 サルプレップ配合内用液
規格単位(薬価) 480mL1瓶(1,011.60円)
効能・効果 大腸内視鏡検査時の前処置における腸管内容物の排除
市場規模
予測
ピーク時 7年後
ピーク時投与患者数 110万人
ピーク時販売金額 20億円
製造販売(発売日) 日本製薬(発売日未定)

注)上記の薬価や効能・効果は全て収載時(2021年4月21日現在)のものです。
※ピーク時・ピーク時の投与患者数・ピーク時の販売金額は、販売製造元が市場規模予測したものです。

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