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薬局経営

処方箋枚数あと9年で頭打ち、薬剤師過剰に
薬局がこれからカバーすべき役割とは

2025年をにらみ国が整備を進める地域包括ケアシステムを支えるため、薬局の薬剤師がカバーすべき役割として医療機関との連携や在宅医療への参入などを挙げる内容の取りまとめを厚生労働省の検討会が行いました。厚生労働省の推計では、対人業務への転換がたとえ進んでも薬剤師は2045年に2.4万人が過剰になるとしています。そうした中、薬剤師の資質の維持・向上が課題とされ、取りまとめでは、薬学部の入学定員の「抑制」も提言しました。中央社会保険医療協議会では、2022年度の診療報酬改定に向けて、薬剤師の対人業務を促す報酬の在り方を、取りまとめを踏まえて議論することにしています。薬局経営を大きく左右しそうな取りまとめを読み解きます。 ※この記事は「CBnews」とのタイアップ企画です。

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薬剤師は45年に2.4万-12.6万人の過剰に

取りまとめを行ったのは厚生労働省が2020年7月に立ち上げた「薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会」です。医療の高度化・複雑化や少子・高齢化の進展、薬学部6年制課程の開始などの変化を踏まえ、検討会では、薬剤師の養成や資質向上の課題などを計10回議論しました。

今回、薬剤師の養成に関して薬学部の入学定員の抑制に踏み込んだのは、厚生労働省の需給推計の結果を踏まえてのことです。

この推計は、薬局のほか病院や診療所、企業、大学、行政機関などの薬剤師の需要を積み上げて2020-45年の推移を推計し、供給の見込み数と比較したものです。

そのうちの薬局薬剤師の需要は処方箋の発行枚数の推計をベースに割り出しました。それによると、全国ベースでの処方箋枚数は2020年が約8.6億枚で、その後の10年間は増え続ける見通しです。しかし、2030年に9.5億枚で頭打ちになり、その後は横ばいで推移します。これは人口減少の影響によるもので、2045年の処方箋枚数は20年比で8.4%増の9.3億枚とされました。

それらをカバーするのに必要な薬局の薬剤師数(需要)は、処方箋1枚当たりの業務量が今と変わらないと仮定して機械的に推計すると、2045年は20.6万人。対人業務の充実などで外来での業務量が2045年までに1割増えるなら26.7万人、調剤業務の機械化なども進み差し引き1割減るなら23.8万人としています。

病院や診療所、企業、行政機関などの必要薬剤師数をこれに上乗せすると、薬剤師全体での需要の推計値は、2045年時点で最大40.8万人、最小で33.2万人という結果でした。

一方、薬剤師の供給数の推計は2020年が32.5万人。2045年の供給見込みは、人口減少の影響を考慮しない機械的な推計だと45.8万人、人口減に伴い国家試験の合格者も減少すると仮定して推計すると43.2万人でした。

需要と供給を比べると、薬剤師は2020年の時点で既に0.5万人の供給過剰で、45年には最大で12.6万人、少なくとも2.4万人が過剰に拡大する見通しです(図1)。

図1 薬剤師の需給推計(全国総数) ※推計期間 2020-45年

出典:薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会「とりまとめ(概要)」(2021年6月30日)を基に作成

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教育の質向上へ文科省「具体策を早急に検討」

今回の需給推計は、対人業務への移行がたとえ進んでも、薬学部の入学定員を現在のまま維持する場合、薬剤師の供給過剰の解消を2045年にかけて見込めないことを示唆する結果です。その上、薬剤師の養成を巡っては、学生を確保し切れず入学定員を割り込んだり、国家試験の合格率が低迷したりする薬学部が特に私立大で目立っており、学生や教育の維持・向上が課題とされています。

6年制課程が始まる2006年に前後して、薬学部を新設する大学が相次ぎました。文部科学省によると、2003年から08年の6年間に新設されたのは実に28学部。2020年現在、薬学部は全国に77あり、定員の総計は1万3,050人です。2002年の計8,200人と比べると、20年足らずでほぼ6割も増えたことになります。

これでは学生獲得競争の激化は避けられません。文部科学省の調べでは、全国に59ある私立大薬学部のうち23の学部(39.0%)では、2020年度の定員充足率が9割以下でした。

検討会の取りまとめでは、人口の減少で大学進学者数が減少すると予測される中、現在の定員を維持すると、定員割れの学部や入試の競争倍率が低い学部がさらに増える可能性があると指摘しています。

こうした内容は、取りまとめに先立ち厚生労働省が6月16日、検討会に提案しました。この日の会合にオブザーバーとして出席した文部科学省医学教育課の担当者はそれを受け、関係者の意見を聴いて具体的な対応策を早急に検討する方針を説明しました。薬学部の定員抑制はもう既定路線といえそうです。大学側にとっては死活問題になりかねません。

一方、日本薬剤師会は、それを好意的に受け止めています。5月には、定員総数を管理したり、入学・教育課程・卒業に関する薬学部の適切な基準を設定したりすべきだと提言していました。日本薬剤師会は、国家試験の合格率が5割に届かない薬学部があり、そうした大学では薬剤師になれない学生が過半数を占めることになると問題視しています。

また、検討会の取りまとめを受け、各都道府県の薬剤師会宛てに7月20日付で出した通知では、定員抑制を含む薬学教育の質向上策が確実に行われるよう注視する姿勢を説明しました。

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「適切で効率的な対物業務」の重要性を指摘

検討会は、厚生労働省の取りまとめ案を6月16日に大筋で了承し、正式な取りまとめが同30日に公表されました。取りまとめは大きく2部構成で、前段では、薬剤師がカバーすべき役割を薬局や病院、診療所ごとに整理しています。後段では、それを踏まえて薬剤師の養成の見直しや資質向上の取り組みなどを提言しました。

薬局の薬剤師がカバーすべき役割として、前段では、医療機関との連携や在宅医療への参入のほか、ポリファーマシーや重複投薬、相互作用の防止、残薬解消を含む適切な薬学管理などを挙げています。

それらをカバーするため、薬剤師が一元的・継続的に薬物療法を行う必要があるというのが厚生労働省のスタンスで、医療機関の敷地内に開設される「敷地内薬局」や、医療機関のすぐ近くにある「門前薬局」を念頭に、特定の医療機関と連携するだけでは「患者本位の医薬分業とはならない」という文言も盛り込みました。

さらに興味深いのは、薬剤の調製など対物業務に関する書きぶりです。2020年度の診療報酬改定では、従来の対物業務から、薬学管理など対人業務への構造的な転換が基本方針に盛り込まれ、処方内容の確認や調製などの対物業務を評価する調剤料(内服薬)のスキームが大幅に見直されました。

対物業務をまるで軽視するような雰囲気でしたが、検討会の取りまとめでは、薬剤師が地域の中で役割を十分に発揮するには、医療安全を確保して適切・効率的に対物業務を行うことが重要だと強調しました。それを前提に、患者さんや住民に関与する度合いが高い対人業務へのシフトを引き続き進めるべきだとしています。

医療を安全に提供するには適切な対物業務が不可欠ですが、それを効率化させる努力を怠り対人業務をおろそかにしては大切な役割を果たせない、といったところでしょうか。

後段では、薬剤師の養成に関する提言として、薬学部の入学定員の見直しのほかに、薬剤師の免許取得直後に医療機関や薬局で行う卒後教育の制度化も盛り込みました。臨床の実践能力を担保するには薬剤師の免許を取得するだけでは「十分ではない」とし、医師の臨床研修のように薬剤師の卒後研修を広く実施すべきだとしています。

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中医協の論点に「対人シフト」、20年度踏襲

中央社会保険医療協議会は7月14日、2022年度の診療報酬改定に向けて調剤報酬の見直しの議論を始め、20年度を踏襲し、対人業務へのシフトを促す報酬の見直しが論点の一つとされました。

厚生労働省は「患者・住民との関わりの度合いの高い対人業務へとシフトすることにより、薬物療法や健康維持・増進の支援に一層関わり、患者・住民を支えていくことが重要」だとしています。これは検討会の取りまとめに盛り込まれたのとほとんど同じ文言です。

調剤報酬のうち、薬剤料を除く「技術料」に占める調剤料のウエートが2020年度に依然として5割を超えているのに対し、対人業務を評価する薬学管理料の割合が近年20%前後で推移していることが分かっていて(図2)、それらを踏まえたてこ入れが大きな焦点になりそうです。

ただ、中央社会保険医療協議会のこの日の総会では、対人業務への評価を引き締めるだけでなく、対物業務とのバランスに配慮した見直しを求める意見が相次ぎました。診療側の有澤賢二委員(日本薬剤師会常務理事)は「両方が成り立って安全・安心な医療ができる」と強調しました。

2022年度の診療報酬改定案は、中央社会保険医療協議会が年明け以降にまとめる見通しです。

図2 技術料に占める調剤基本料、調剤料、薬学管理料(点数ベース)の割合

出典:中央社会保険医療協議会・総会(2021年7月14日)を基に作成

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