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医薬品の基礎知識

忙しい薬局経営者に! パッと見てわかる新薬解説
【2021.8月収載版】

2021年8月12日、厚生労働省は新薬15製品を薬価収載しました。多くの薬剤師が動向を確認する新薬の発売状況。日々、経営業務に追われて、見過ごしてしまっていませんか?そこで今回は日々忙しい薬局経営者や薬剤師の方々のために、調剤薬局で取り扱われる薬に絞って要点をわかりやすく解説していきます。

1
調剤薬局で取り扱う新薬を紹介

薬価や算定方式については、2021年8月4日に行われた第485回中央社会保険医療協議会(中医協)総会で了承されています。
今回薬価収載された15の新薬のうち、調剤薬局で取り扱う機会の多い以下9製品の特徴を簡単に紹介していきます。

2
ベリキューボ錠(ベルイシグアト)

ベリキューボは、慢性心不全治療薬としては初の可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)刺激薬です。投与を開始するにあたり、慢性心不全の標準治療を受けていることが条件となっています。sGCは一酸化窒素(NO)のシグナル伝達経路に必要不可欠であり、sGCとNOが結合することによって産生される環状グアノシン一リン酸(cGMP)が血管や心臓の機能において重要な役割を担います。慢性心不全患者ではNOの産生能障害によってsGCの活性低下が起こり、心不全や血管障害を引き起こします。ベリキューボは、NOとsGCとの結合を安定化することでsGCの感受性を高め、さらに血管と心臓に分布するsGCを直接刺激することで、細胞内cGMPの産生レベルを高めて心不全の進行を抑制します。
成人には1回2.5mgを1日1回食後経口投与から開始し、2週間間隔で1回投与量を5mg及び10mgに段階的に増量します(血圧など患者の状態により適宜減量)。併用禁忌は、肺動脈性肺高血圧症を効能・効果とするsGC刺激薬であるアデムパス(リオシグアト)です。空腹時にベリキューボを投与した場合、食後投与と比べてCmax及びAUCの低下や個体間のばらつきが増えるため注意が必要です。

製品名 ベリキューボ錠2.5mg/同錠5mg/同錠10mg
規格単位(薬価) 2.5mg1錠(131.50円)
5mg1錠(230.40円)
10mg1錠(403.80円)
効能・効果 慢性心不全 ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る
市場規模
予測
ピーク時 10年後
ピーク時投与患者数 10万人
ピーク時販売金額 95億円
製造販売(発売日) バイエル薬品(発売日未定)

3
エブリスディドライシロップ(リスジプラム)

エブリスディは、脊髄性筋萎縮症(SMA)に対する国内初の経口治療薬です。SMAは難病指定されている遺伝性の神経筋疾患で、脊髄の運動神経細胞が変性することによる筋力の低下や萎縮、無筋力が特徴的症状であり、乳幼児で最も頻度の高い致死的な遺伝性疾患です。今までのSMA治療薬はスピンラザ髄注(ヌシネルセン)やゾルゲンスマ点滴静注(オナセムノゲンアベパルボベク)の2剤のみで、エブリスディが初めての経口薬となります。
SMAの原因は運動神経細胞生存(SMN)遺伝子の変異で、遺伝子のエキソン7に変異のある変異遺伝子(SMN2)では正常とは異なるスプライシングが行われることで不活性の異常SMNタンパク質が合成され、運動神経細胞が変性することにより発症すると考えられています。エブリスディは異常遺伝子のエキソン7に選択的に結合することで、正常なSMNタンパク質が合成されるように設計されています。
薬価収載は了承されたものの、長期的な服用が必要となるため薬剤費が高額となることから、費用対効果評価の該当性については保留となりました。また、エブリスディは14日間処方制限の対象外です。
生後2ヶ月以上2歳未満の患者には0.2mg/kgを1日1回食後に経口投与します。2歳以上の患者には体重20kg未満では0.25mg/kgを、体重20kg以上では5mgを1日1回食後に経口投与します。

製品名 エブリスディドライシロップ60mg
規格単位(薬価) 60mg1瓶(974,463.70円)
効能・効果 脊髄性筋萎縮症
市場規模
予測
ピーク時 10年後
ピーク時投与患者数 416人
ピーク時販売金額 102億円
製造販売(発売日) 中外製薬(2021年8月12日)

4
レベスティブ皮下注用(テデュグルチド(遺伝子組換え))

レベスティブは日本初の短腸症候群(SBS)に対する治療薬で、天然型グルカゴン様ペプチド-2(GLP-2)よりも長く腸管へ作用する遺伝子組換えヒトGLP-2アナログです。小腸を大量に切除したり先天性欠損によって起こる疾患で、食事から十分な水分や栄養を吸収できないことから静脈栄養が必要となり、患者のQOLを低下させ、重篤な合併症につながる恐れもあります。レベスティブは33個のアミノ酸からなるペプチドで、天然型GLP-2と同じ受容体に結合することで作用し、腸管吸収機能の改善を促します。さらに、ジペプチジルペプチダーゼ4(DPP-4)により不活化されにくく、天然型より半減期が長いという特徴があります。
レベスティブは医療上の必要性が高い未承認薬・適応外薬検討会議において医療上の必要性が高いと判断され、厚生労働省から開発要請がなされていました。
用法用量としては、1日1回0.05mg/kgを皮下注射します。

製品名 レベスティブ皮下注用3.8mg
規格単位(薬価) 3.8mg1瓶(79,302円)
効能・効果 短腸症候群
市場規模
予測
ピーク時 5年後
ピーク時投与患者数 257人
ピーク時販売金額 60億円
製造販売(発売日) 武田薬品工業(2021年8月18日)

5
ツイミーグ錠(イメグリミン塩酸塩)

ツイミーグは2型糖尿病を効能・効果とする錠剤で、ミトコンドリア機能改善を介してインスリン分泌を促進しインスリン抵抗性を改善する、これまでの糖尿病治療にはない新機序の薬剤です。膵β細胞におけるグルコース濃度依存的なインスリン分泌を促す膵作用と、肝臓や筋肉などインスリン感受性のある臓器や組織の糖代謝を改善する膵外作用との2種類の機序により血糖コントロールを改善させると考えられています。
成人には1回1000mgを1日2回朝、夕に経口投与します。腎機能障害患者でeGFRが45mL/min/1.73m2未満の方への投与は推奨されていないので注意してください。

製品名 ツイミーグ錠500mg
規格単位(薬価) 500mg1錠(34.40円)
効能・効果 2型糖尿病
市場規模
予測
ピーク時 10年後
ピーク時投与患者数 40万人
ピーク時販売金額 143億円
製造販売(発売日) 大日本住友製薬(2021年9月16日予定)

6
ギブラーリ皮下注(ギボシランナトリウム)

ギブラーリは、急性肝性ポルフィリン症(AHP)を対象とする国内で2成分目となるsiRNA治療薬で、siRNAによりアミノレブリン酸合成酵素1(ALAS1)を減少させる作用を有する新規作用機序医薬品です。AHPは重症かつ原因不明の腹痛や、嘔吐、けいれんなどの消耗性の発作を特徴とする遺伝性の希少疾患で、遺伝子変異により肝臓内のヘム産生に必要な特定の酵素が欠如することで生じ、これにより体内のポルフィリンなどが毒性量まで蓄積します。ギブラーリはALAS1メッセンジャーRNAを特異的に低下させることで、ポルフィリンなどの蓄積量を減らし、AHPの発作やその他の症状の発現に関連する神経毒性を減少させます。発作時に4日間点滴静注する既存薬ノーモサング点滴静注(ヘミン)に比べて、ギブラーリは月1回皮下投与であり利便性が高いという特徴があります。
12歳以上の患者には、2.5mg/kgを1ヶ月に1回皮下投与します。

製品名 ギブラーリ皮下注189mg
規格単位(薬価) 189mg1mL1瓶(5,006,201円)
効能・効果 急性肝性ポルフィリン症
市場規模
予測
ピーク時 10年後
ピーク時投与患者数 64人
ピーク時販売金額 37億円
製造販売(発売日) Alnylam Japan(2021年8月30日)

7
アジョビ皮下注(フレマネズマブ(遺伝子組換え))

アジョビは、片頭痛発作の発症抑制を効能・効果とする薬剤で、疼痛関連神経伝達物質であるカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)に特異的に結合し、2つのアイソフォーム(α-及びβ-CGRP)のCGRP受容体への結合を阻害するヒト化モノクローナル抗体です。片頭痛発作時、何らかの原因によって脳硬膜血管に分布する三叉神経終末が刺激されることで末梢においてCGRPが高度に発現し、血中のCGRP濃度が増加します。それに伴って血管拡張や血漿蛋白の血管外漏出が起こり、結果として片頭痛や群発頭痛などが起こるという三叉神経血管説が有力とされています。アジョビはCGRPに結合してその働きを阻害することで、片頭痛の発症を抑制すると考えられています。類薬には1ヶ月間隔投与のエムガルティ皮下注(ガルカネズマブ)がありますが、アジョビは1ヶ月及び3ヶ月間隔投与が可能です。
大塚製薬は2021年7月にオートインジェクター製剤の剤形追加を承認申請しており、ワンタッチ操作が可能な針刺し事故を防止する設計になっています。
成人には4週間に1回225mgを皮下投与するか、12週間に1回675mgを皮下投与します。

製品名 アジョビ皮下注225mgシリンジ
規格単位(薬価) 225mg1.5mL1筒(41,356円)
効能・効果 片頭痛発作の発症抑制
市場規模
予測
ピーク時 10年後
ピーク時投与患者数 4.0万人
ピーク時販売金額 137億円
製造販売(発売日) 大塚製薬(2021年8月30日)

8
アイモビーグ皮下注(エレヌマブ(遺伝子組換え))

アイモビーグは、片頭痛発作の発症抑制を効能・効果とする抗CGRP受容体モノクローナル抗体です。アイモビーグはCGRP受容体に選択的に結合し、内因性のCGRPの生理活性を阻害することで片頭痛発作の発症抑制が期待されています。類薬のエムガルティ皮下注(ガルカネズマブ)及びアジョビ皮下注(フレマネズマブ)はCGRPに対する抗体薬ですが、アイモビーグはCGRP受容体に対する抗体薬のため、作用点が異なります。
現在予定されている小児を対象とした臨床試験の結果次第で小児に係る追加承認申請を行う予定であり、それに伴い再審査期間が通常の8年から10年に延長となりました。
成人には70mgを4週間に1回皮下投与で用います。他の類薬とは異なり、アイモビーグ皮下注の重大な副作用として重篤な便秘があります。これは腸管神経にもCGRPが発現することが関係していると考えられています。

製品名 アイモビーグ皮下注70mgペン
規格単位(薬価) 70mg1mL1キット(41,356円)
効能・効果 片頭痛発作の発症抑制
市場規模
予測
ピーク時 10年後
ピーク時投与患者数 5.7万人
ピーク時販売金額 153億円
製造販売(発売日) アムジェン(2021年8月12日)

9
タズベリク錠(タゼメトスタット臭化水素酸塩)

タズベリクは、がんに対する治療薬で、ヒストン等のメチル基転移酵素であるEZH2の酵素活性に対する阻害作用を有するファースト・イン・クラスの経口EZH2阻害薬です。エピジェネティクス関連タンパク質群であるヒストンメチル基転移酵素の1つであり、発がんプロセスに関与するEZH2を選択的に阻害し、細胞周期の停止及びアポトーシス誘導を生じさせることで、がん細胞の増殖を抑制すると考えられています。
EZH2遺伝子変異を検出するコンパニオン診断薬としては、ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社の「コバス®EZH2変異検出キット」が2012年5月に承認されています。
通常、成人には1回800mgを1日2回経口投与します(患者の状態により適宜減量)。

※エピジェネティクス:DNAの塩基配列を変えることなく、活性化や不活性化などの遺伝子の働きを決める仕組み

製品名 タズベリク錠200mg
規格単位(薬価) 200mg1錠(3,004.60円)
効能・効果 再発又は難治性のEZH2遺伝子変異陽性の濾胞性リンパ腫(標準的な治療が困難な場合に限る)
市場規模
予測
ピーク時 10年後
ピーク時投与患者数 286人
ピーク時販売金額 24億円
製造販売(発売日) エーザイ(2021年8月16日)

10
ハイヤスタ錠(ツシジノスタット)

ハイヤスタ錠は、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)を阻害するベンズアミド系の抗がん剤です。エピジェネティックな作用を有する免疫モジュレーターで、クラスI(HDAC1、2、3)とクラスIIb(HDAC10)のHDACを阻害することで、腫瘍細胞中でアセチル化されたヒストン(H3およびH4)の集積を促し、脱アセチル化を阻害します。これによって、腫瘍細胞の増殖停止に関与する複数のタンパク発現を変化させ、がん微小環境における免疫遺伝子の発現を調整するPD-L1の核内移行を制御することにより、腫瘍免疫力を増強させます。ハイヤスタは免疫チェックポイント阻害薬との併用により、効果を増強することが示されています。
また、再発又は難治性の末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)に対しても2021年4月に承認申請が行われており、単剤治療でのPTCLならびに成人T細胞白血病リンパ腫(ATLL)の治療に係る希少疾病用医薬品の指定を受けています。
成人には1日1回40mgを週2回、3又は4日間隔で食後に経口投与して用います(患者の状態により適宜減量)。

製品名 ハイヤスタ錠10mg
規格単位(薬価) 10mg1錠(20,030.50円)
効能・効果 再発又は難治性の成人T細胞白血病リンパ腫
市場規模
予測
ピーク時 5年後
ピーク時投与患者数 305人
ピーク時販売金額 2.9億円
製造販売(発売日) Huya Japan(発売日未定)

注)上記の薬価や効能・効果は全て収載時(2021年8月12日現在)のものです。
※ピーク時・ピーク時の投与患者数・ピーク時の販売金額は、販売製造元が市場規模予測したものです。

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