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在宅訪問

連載 薬局経営者のための「在宅訪問」の基本 第3回
【インタビュー】在宅訪問は薬局の「使命」です

メディカルシステムネットワークのグループ薬局では、医療人として患者さんのために何をすべきか――という想いのもと、1999年から在宅訪問に取り組んできました。在宅訪問の現場を見てきた薬局事業本部 地域薬局事業部の錦戸事業部長に、在宅訪問の重要性、在宅のニーズに応えるノウハウや今後の展望をうかがいました。

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在宅訪問の現状は?

錦戸部長の現在のお仕事は?

  • 錦戸氏:
  • 2021年4月に地域薬局事業部の事業部長に任命されました。地域薬局事業部をひと言でいうと、なの花薬局などメディカルシステムネットワークのグループ薬局をとりまとめている部署です。薬局の運営会社が全国に7社(北海道、東北、東日本、中部、西日本、九州に2社)あり、各社の社長・事業部長と共に薬局運営に関わる施策、あるいは薬局が抱える課題の解決などについて立案、実施しています。

錦戸部長はどのような立場で在宅訪問に関わられてきたのですか?

  • 錦戸氏:
  • 2021年3月までは、薬局の運営会社のひとつである福岡のトータル・メディカルサービスで開設者をやっていました。そこでグループ薬局の在宅訪問もサポートしていました。

在宅訪問に取り組む薬局は年々増加していますが、薬局の現場でも在宅訪問への関心は高まっていますか?

  • 錦戸氏:
  • 関心は高いと思います。現在は薬局の報酬体系そのものが、在宅訪問を行っていない薬局に不利な形になっています。たとえば在宅患者訪問薬剤管理指導料や居宅療養管理指導料は在宅訪問を行っていないと取れない点数であり、それは基本料にも関わってきます。こうした事情から在宅訪問への取り組みを検討する薬局も増えているのではないでしょうか。
    また2021年8月からは薬局の機能別に知事認定制度が導入され、地域連携薬局の要件として「入退院時や在宅医療に他医療提供施設と連携して対応できる薬局」という項目が加わりました。薬局が今後も地域で存続し続け、その役割を十分に果たしていくためには、薬局経営者が真剣に在宅訪問に取り組まなくてはならない環境になっています。

患者さんの認知度も上がっていますか?

  • 錦戸氏:
  • 徐々に認知度が上がってきたとは思いますが、まだ制度そのものをご存じない方がいらっしゃるのも現状です。私が九州で働いていた時、在宅訪問の対象になりそうな患者さんにアプローチしたのですが「そんなことができるんですね」という反応でした。

全体の需給バランスはどうでしょう?

  • 錦戸氏:
  • 施設に関しては確実に訪問数が増えていますが、個人宅の方はそこまで増えてはいないと思います。ただ、今後も高齢化は進みますから、「できるかぎり患者さんをお宅で診る」という考え方が主流になり、いずれは施設より個人宅の需要が高まるのではないでしょうか。施設は1ヵ所訪ねるだけで大人数の患者さんのケアができるのに対して、個人宅の場合は患者さんのお宅を一軒一軒回らなくてはならず、1日で回れる軒数が限られます。そこを見据えると、在宅訪問を実施する薬局の数は全然足りていないと思います。

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目標は在宅訪問の全店実施

なの花薬局では1999年から在宅訪問に取り組んでいるそうですね。現在の実施率はどれくらいですか?

  • 錦戸氏:
  • 算定店舗で約8割です。基本的には全薬局で在宅訪問を目指すことを掲げていますが、薬剤師が1人の店舗はやはり難しいですし、近隣の病院の診療科目によっては在宅訪問を必要とする患者さんになかなか巡り合えない、ということもあります。

全店舗での実施を目指す背景には、どのような考えがあるのですか?

  • 錦戸氏:
  • 根底には「在宅訪問は薬局の使命」という想いがあります。もちろん、先ほどお話した薬局をとりまく制度への対応という意味もありますが、各地域で薬局が選ばれて生き残っていくための施策としても、困っている患者さんのためにも在宅訪問への取り組みは必要です。ですからグループ薬局では、在宅訪問の依頼は決して断らず、まずは相談して解決策を探ることを徹底しています。それに、在宅訪問を行うと薬剤師の成長にもつながるというメリットもあるんですよ。

薬剤師にとっても、在宅訪問の経験は成長のチャンスなんですね。

  • 錦戸氏:
  • ドクターと一緒に回って、ドクターの質問に答えたり処方を提案したりするので、薬剤師の質向上には非常にいい機会だと思います。在宅訪問を経験するとより患者さんの実態がわかりますし、お互いの距離感も縮まるので、患者さんの目線に立てるようにもなります。ですから、薬剤師としての意識が変わり、モチベーションが高まる人も多いです。

薬剤師の在宅訪問に対するモチベーションを保つ工夫はありますか?

  • 錦戸氏:
  • 薬剤師の評価制度の中に在宅訪問の件数は組み入れていますが、個人の評価を上げるためではなく、「医療人として必要なことをやっていこう」という考え方を伝えています。在宅訪問を担当する薬剤師には幅広い知識が求められるので、そのための教育というのは非常に難しいのですが、必要な知識をつけてもらう底上げを図るための研修はしっかりやっています。

どのような研修をされているのですか?

  • 錦戸氏:
  • なの花薬局では新人研修で在宅訪問について学ぶ以外に、初めて在宅訪問に取り組むには何が必要かを学ぶ「ゼロイチ研修」を実施しています。また入社1年目、2年目の薬剤師には全員OJTで在宅訪問を経験させていますし、全国に7社ある薬局運営会社には在宅委員会が設けられていて、そこでも定期的に研修会を実施しています。

その研修に薬剤師を参加させたいという薬局は多いのでは?

  • 錦戸氏:
  • メディカルシステムネットワークが運営する医薬品ネットワークの加盟店には「研修を受けさせてもらいたい」というニーズがあると聞いています。在宅訪問に関する研修の要望は相当あるはずですし、私個人としてもそのあたりはすごくやっていきたい分野です。研修を開催することでノウハウを伝えたり、書類の準備や事務手続きの現場に、分からないことがあれば教えるアドバイザー役を同行させるなど、いろいろな方法を徐々に考えていきたいです。

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患者さんとのつながりかた

在宅訪問が必要な患者さんの探し方がわからない、という薬局もあるようです。

  • 錦戸氏:
  • 外来患者さんの中にも在宅訪問を必要とされている方は結構いらっしゃいますよ。前職のときに、患者さんへのアプローチ方法がわからないという薬局がありましたので、まずは処方箋を見返してみて、在宅訪問を必要とされていそうな患者さんにお声がけをすることから始めてもらいました。例えば、ヘルパーやご家族が薬を受け取りに来ている場合や、小児で重い病気を患っている患者さんなどは、在宅訪問を必要とされているケースが多いです。
    とある薬局では小児の患者さんを抱えるお母さんが、お子さんと病院に行って先に子どもを自宅に戻し、その間は他の人にお子さんを見てもらい、薬局に薬を取りに来ていました。そのお母さんに「処方箋をFAXしていただければ、薬剤師がお薬をもって訪問できますよ」とお声がけしたところ、在宅訪問につながったそうです。

患者さんの様子を気にかけたり、処方箋を見直すという地道な作業から在宅訪問を必要とされている患者さんが浮かび上がってくるのですね。

  • 錦戸氏:
  • はい。実はたくさんいらっしゃいます。ただ意識していないと気づかないので、この患者さんは在宅訪問を必要とされているかどうか、という視点を持つことが大事です。また、ネットや掲示板、イベントなどさまざまな方法で、在宅訪問を行っていることをアピールするのも大事だと思いますし、薬局が地域の民生委員や自治体と一緒に活動しているケースもあります。

具体的にはどのような活動を?

  • 錦戸氏:
  • 民生委員や自治体が開催するイベント、たとえば体操教室などで薬剤師が簡単な講義をする例があります。色々な方法でアピールすることで、薬局や在宅訪問の認知度が高まりますし、なにかあったときには患者さんが相談しやすい薬局になれる。そこから在宅訪問にもつながっていくと思います。

患者さんが在宅訪問に同意された後の手続きについてはこの連載の第1回目でも紹介しましたが、個人宅と施設の在宅訪問はどう違うのでしょうか?

  • 錦戸氏:
  • 個人宅と施設では、在宅訪問のやり方が全く違います。施設では看護師を中心に相談し、薬のセット管理や体調変化を確認することが多いですね。個人宅ではより患者さんや介護人への聞き取り、食事管理などより細かい対応が必要ですし、疾患によってはバイタルサインも確認します。
    施設の場合は1ヵ所でたくさんの患者さんを訪問できるため、効率の良さという意味では、施設に目が行きがちですが、まずは個人宅から始めてみられると良いと思います。施設の訪問はそれなりに時間も人手も必要ですし、施設をターゲットに定めている薬局は多いので、個人宅の方が患者さんを見つけやすいという事情もあります。

個人宅の在宅訪問の効率を上げる良い方法はありますか?

  • 錦戸氏:
  • 個人宅を回る場合は移動に時間を取られますので、薬剤師が1人で訪問する場合は、なるべく訪問先に近い駐車場を探しておくのがポイントです。警察署に届け出をだすと路上駐車の許可証をくれる場合もあります。
    個人宅の訪問を積極的にやっていた薬局のなかで印象的だったのは、在宅専任の薬剤師を置き、ドライバーを雇っていた例です。ドライバーにその日のルートを伝えておけば、薬剤師は移動中に報告書を作成したり、患者さんの情報を確認したりできますから、時間の使い方が非常に有効だと感じました。その薬局は病院とうまく連携して多くの個人宅を回っていたのでその地域で噂が広がり、他から患者さんを紹介されるケースもあったそうです。

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在宅訪問の業務をより効果の高いものにするために

在宅訪問で気をつけることはどんなことですか?

  • 錦戸氏:
  • 在宅訪問を始めて間もない頃は薬を届けるだけになりがちですが、訪問時に患者さんの問題点を把握できるかどうかがポイントです。医師や看護師、ケアマネジャーやヘルパーなど他職種とうまく連携して色々な提案ができるようになると薬剤師としての職能が発揮でき、周囲にも認められていくと思います。

ほかの職種の方とはどういう風にコンタクトを取るのですか?

  • 錦戸氏:
  • 方法はいろいろあります、多職種連携会議で連携をとったり、ケアマネジャーに提出する報告書を提案型にしたり。また患者さんのお宅に連絡帳を置かせてもらって、関係者で情報を共有する方法もあります。

一緒に患者さんを支えるということですね。在宅訪問では、薬剤師の幅広い知識だけでなくコミュニケーション能力も求められるのでは?

  • 錦戸氏:
  • コミュニケーションに関しては口下手な人もいますし、奥手な人もいます。ただ、医療人として「患者さんのために」という原点を忘れなければ、口下手でも思いは伝わると思います。なにより患者さんから、ありがとうと言われて嫌な思いをする人はいません。多少の向き不向きはあっても、必ずやりがいを持てる仕事だと感じます。

在宅訪問への取り組みを検討中の薬局経営者の方に、メッセージを。

  • 錦戸氏:
  • 2021年8月の法改正により、地域に根差す薬局、地域連携薬局が大きなキーワードになっています。地域ごとに必要な医療に取り組むという流れのなかで、患者さんに薬を届けるのは薬局しかありません。必ず在宅訪問の需要は今後増えていきますし、いずれは、やって当然の業務になるでしょう。地域に必要とされる薬局であり続けるためにも経営者の皆さまには、在宅訪問に積極的に取り組まれることをお伝えしたいです。なの花薬局も在宅訪問実施率100%を目指しますので、皆さま、ともに頑張りましょう。
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