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後発薬促進、財務省「加算から減算中心に」
年末に決着する社保費の自然増抑制の行方

2022年度政府予算案の編成に向けて、厚生労働省は、新型コロナウイルスの感染対策などに過去最高の33兆9,450億円を要求しました。薬局や薬剤師関連では、電子処方箋管理サービスの円滑な導入のための予算などを盛り込みました。医療など社会保障費の自然増には6,600億円を見込んでいますが、政府は年末の予算案の編成でこれを高齢化に伴う伸びのみの水準に抑制することを目指します。それに向け、薬価の引き下げや診療報酬改定と共に焦点になりそうなのが後発医薬品の使用促進です。財務省は、これまで加算中心だった取り組みを減算中心に見直すべきだと主張していて、予算編成の焦点になりそうです。 ※この記事は「CBnews」とのタイアップ企画です。

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「有効な服薬指導」に電子処方箋を活用へ

厚生労働省の医薬・生活衛生局が要求した薬局・薬剤師関連の政策の予算は、9月に発足したデジタル庁の計上分を含め110億7,600万円となりました。これは2021年度当初予算に比べ18.0%増で、新型コロナウイルスの感染対策や、電子処方箋管理サービスの円滑な導入、薬局・薬剤師の資質向上などを盛り込みました(表1)。

新型コロナウイルス対策では、薬局の「薬剤交付支援事業」の予算を要求しました。ウイルスに感染した患者さんの自宅などに薬局が薬剤を配送する際の費用や、スタッフが薬剤を届けるための費用を支援します。この事業は2020年度の補正予算で始まりましたが、感染収束のめどが立たず22年度も規模を縮小して継続します。

電子処方箋管理サービスの円滑な導入では、2022年度中の開始を目指す電子処方箋を安全で正確に運用するための環境を整備します。

電子処方箋は、処方や調剤、服薬指導などに関する患者さんの情報を薬局と医療機関が専用のサーバーで共有する仕組みです。健康に関する情報を扱うだけに、医師が処方した内容の伝達に万が一誤りが生じたら重大な影響が及びかねません。そこで厚生労働省は、実施時の検証を行い運用ルールの整備に役立てます。さらに、電子処方箋を使って薬剤師が効果的に服薬指導を行うためのガイドラインも作る方針で、これらが薬局の仕事を大きく変えるかもしれません。

一方、薬剤師の資質向上策では新たな研修事業の費用を要求しました。医療の高度化や少子・高齢化などの変化に対応し、がんの患者さんや妊産婦・小児への薬物療法など専門性の高い薬学管理を行うための研修や、薬局業務へのICT(情報通信技術)の導入に関する研修を推進するとしています。

医薬・生活衛生局以外では、医療提供体制の整備に関する政策を担当する医政局が、医療用医薬品の供給に関する情報提供サイトの検討事業の予算を新たに求めました。製薬各社が薬局などへ個別に提供している医療用医薬品の「供給不安」に関する情報を一元的に把握できるサイトを構築するため、諸外国の取り組みを調査し、検討します。

表1 2022年度 医薬関係概算要求の概要(主なものを抜粋)

出典:「厚生労働省医薬・生活衛生局 2022年度医薬関係概算要求の概要」を基に作成

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団塊世代が75歳以上に、社保費伸び抑制へ

各省庁の概算要求に先立ち、政府が7月に決めた2022年度予算の概算要求基準では、デジタル化の推進など「成長戦略」に盛り込まれた政策を後押しする「新たな成長推進枠」の予算を設定し、人件費などの義務的経費からの切り替えを促しました。

一方、社会保障費は政府全体で自然増6,600億円を含めて要求することが認められ、各省庁はそれらを踏まえて8月末までに概算要求を財務省に提出しました。

厚生労働省全体での一般会計の要求額は33兆9,450億円(表2)です。2021年度当初予算比2.4%の増で、過去最高になりました。新型コロナウイルス感染症の経験を踏まえた柔軟で強靭な保健・医療・介護の構築やデジタル化の推進などが柱です。

表2 2022年度 厚生労働省予算概算要求の姿

出典:「厚生労働省 2022年度予算概算要求の概要」を基に作成

医療など社会保障費の要求額は、2021年度の当初予算から6,738億円増えました。概算要求基準の6,600億円を超える分は他省庁の要求を減らし、政府全体でこの枠内に収めました。

社会保障費の自然増は、高齢化による増加分と、医療の高度化など「その他の要因」に伴う増加分に分かれます。高齢化に伴う増加は社会保障費に特有のもので、財務省は「一定程度やむを得ない」としています。一方、「その他の要因」に伴う増加に対しては、ほかの分野と同じように「抑制していかなければならない」というスタンスです。

2021年度の自然増は4,800億円とされました。わずか1年後の2022年度に自然増が4割近くも増えるのは、医療や介護のコストが掛かりやすい75歳以上の年代に、人口が多い団塊世代の人たちが22年以降入り始めるためです。

団塊世代の全員が75歳以上になる2025年を見据え、政府は19年から21年までを経済再生のための「基盤強化期間」と位置付け、この3年間の社会保障費の伸びを「高齢化相当分」に抑えてきました。

骨太方針2021では、そうした対応を2022-24年にも継続させるとしていて、22年度予算案の編成でも社会保障費の伸びをいかに抑えるかが課題です。ただ、それをどのように、具体的にどれだけの水準に抑えるのかはまだ見えません。抑制の仕方によっては薬局経営に影響が及ぶ可能性があります。

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薬価引き下げや報酬改定が予算編成の焦点に

2021年度の予算編成では自然増をどのように抑制したのでしょうか。この年には、共に3年置きに行われる介護報酬と障害福祉サービス等報酬の改定があり、2020年12月に行われた閣僚折衝ではそれらを引き上げることで決着しました。

財務省によると、それによる国庫の負担増はそれぞれ200億円と100億円ほど。一方、この年に初めて行われた「中間年」の薬価引き下げで1,000億円程度、後期高齢者医療制度の保険料を軽減する特例などの制度の見直しで700億円程度を浮かすことになりました。政府は、それによって社会保障費の国庫負担を差し引き1,300億円ほど節約し、実質的な伸びを高齢化相当分に収める方針を「着実に達成」したとしています。

2022年度には、薬価引き下げのほか2年置きに行われる診療報酬改定も予定されています。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、国の財政が悪化しているだけに「マイナス改定」を求める声が政府内から上がりそうです。

それに先駆け、医療系の各団体は積極的にアピールを展開しています。2022年度の予算編成をにらみ日本薬剤師会は5月、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で薬局経営が「疲弊」しているなどとして、診療報酬の改定財源を医科・歯科・調剤に公平に配分するよう訴える重点要望をまとめました。

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後発薬促進、供給や品質への不安が障壁に

そして、社会保障費の伸びを抑制するため目玉になりそうなもう一つの政策が後発薬の使用促進です。骨太方針2021では、後発薬の数量シェアを全都道府県で2023年度末までに80%以上にする新しい政府目標を掲げ、さらなる使用を促す方向性を打ち出しました。後発薬の調剤割合が高い薬局を3段階で評価する後発医薬品調剤体制加算の見直しの検討や、「フォーミュラリ」(医薬品の推奨リスト)の活用などを具体策に挙げています。

政策の無駄を見つけて解消するため、財務省が2021年度に行った予算執行調査の結果によると、後発医薬品調剤体制加算は20年7月現在、全国の5万7,284薬局の73.9%が届け出ているのに対し、後発薬の調剤割合が4割以下の場合に調剤基本料を2点減らすペナルティーは0.3%にしか適用されていませんでした。

財務省の推計によると、後発医薬品調剤体制加算は年に合わせて1,200億円ほど算定されていますが、調剤基本料の減算ペナルティーの医療費削減効果は年400万円程度にとどまるとしています(表3)。

表3 後発医薬品調剤体制加算および減算と算定総額

出典:2021年度予算執行調査の総括調査票「診療報酬(後発医薬品関係)」を基に作成

後発薬の使用割合には都道府県によるばらつきも目立ち、財務省は、取り組みが遅れている自治体を底上げするため、これまでの加算中心での後押しを減算中心に見直すべきだと主張しています。

ただ、メーカーの相次ぐ不祥事によって後発薬の安定供給や品質への不安が高まっていて、それが使用促進のハードルになりそうです。

中央社会保険医療協議会が7月21日に開いた総会では、2022年度の診療報酬改定に向けて後発薬の使用促進策を議論し、有澤賢二委員(日本薬剤師会常務理事)は、不祥事に伴う出荷調整のあおりを受け、薬局が後発薬を十分に確保するのが難しい状況にあることを強調しました。

有澤委員はその上で、薬局による後発薬の調剤割合を計算する際、出荷調整が行われている品目を分母から除外するなどの診療報酬上の対応を求め、財務省が主張するペナルティー中心の使用促進には「明確に反対する」と強く反発しました。

後発薬の供給不安を受け、厚生労働省は9月21 日付で事務連絡を出し、後発医薬品調剤体制加算などの算定に必要な使用割合の実績を計算する際、7月1日の時点で供給が停止されていると報告があった後発薬など計1025品目を、対象から除外できるようにすると都道府県などに伝えました。これは2022年3月末までの臨時的な取り扱いです。

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