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「対人への転換」再び、報酬改定の基本方針
厚生労働省が提案、中医協では「対物と両輪で」

2022年度診療報酬改定の基本方針の取りまとめに向けた検討が本格化しています。厚生労働相の諮問機関「社会保障審議会」の下に設置されている2つの部会が議論し、従来通り12月上旬ごろの取りまとめを目指します。薬局関連では、薬剤師による対人業務の推進や後発医薬品の使用促進などが盛り込まれる見通しで、中央社会保険医療協議会(中医協)が並行して点数設定を議論しています。薬局経営を左右しそうなこれまでの議論の流れをまとめました。 ※この記事は「CBnews」とのタイアップ企画です。

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点数配分の議論の前提に、改定の基本方針

診療報酬改定の基本方針は、予算編成の過程で内閣が決定する改定率と共に、中央社会保険医療協議会が点数配分を議論する際の前提となる大切な要素です。

近年では、報酬改定を行うに当たっての「基本認識」や「基本的視点」を掲げ、改定を行う際の医療の状況などを踏まえた「重点課題」を設定しています。2016年度以降の基本方針には、それらに沿った対応の「方向性」も盛り込んでいます。そうした構成は2022年度も引き継がれる見通しです(図1)。

図1 次期診療報酬改定に向けた主な検討スケジュール(案)

中央社会保険医療協議会 総会(2021年4月14日)の資料を基に作成

2020年度改定の基本方針では、改定に当たっての「基本認識」として、▽健康寿命の延伸、人生100年時代に向けた「全世代型社会保障」の実現▽患者・国民に身近な医療の実現▽どこに住んでいても適切な医療を安心して受けられる社会の実現、医師等の働き方改革の推進▽社会保障制度の安定性・持続可能性の確保、経済・財政との調和-の4本を掲げました。

一方、改定の「基本的視点」は▽医療従事者の負担軽減、医師等の働き方改革の推進▽医療機能の分化・強化、連携と地域包括ケアシステムの推進▽患者・国民にとって身近で安心・安全で質の高い医療の実現▽効率化・適正化を通じた制度の安定性・持続可能性の向上-のこちらも4本。

それらを踏まえた対応の「方向性」が、「薬局の対物業務から対人業務への構造的な転換」や「かかりつけ機能の強化」などです。

対人業務への転換を進めるため、中央社会保険医療協議会が決めたことの一つが内服薬の調剤料の見直しです。1日に5点ずつ高くなる投与日数「1-7日分」の点数設定を見直し、28点に統一しました。同じように、1日4点ずつ高くなる「8-14日分」は55点にしました(図2)。

図2 内服薬の調剤料の見直し(2020年度診療報酬改定)

出典:「2020年度診療報酬改定の概要(調剤)」を基に作成

調剤料は、処方内容の確認や薬剤の調製などの調剤業務を行うと算定できる技術料で、対物業務への評価とされています。

経済財政諮問会議の民間議員は2019年、薬局の調剤料や調剤基本料の点数が医療機関を大きく上回る「内外価格差」を問題視。そうした点数設定の効果を検証し、正当性が疑われるなら報酬を大胆に適正化すべきだと提言しました。

中央社会保険医療協議会では、それらも踏まえて2020年度の対応を話し合いましたが、薬局と医療機関とでは業務の中身や全体の報酬体系が大きく異なります。そのため、点数だけを比較し、格差を解消することへの反対や慎重論が目立ちました。

一方、薬局の調剤料の点数に関しては、診療側と支払側の双方の委員が14日分までを一本化すべきだと主張しました。この期間を「1-7日分」と「8-14日分」の2つに分け、それぞれの点数を一本化した実際の対応に近い提案です。

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「対人への転換、言葉自体受け入れられぬ」

2022年度の基本方針の議論は8月上旬までに始まりました。厚生労働省のたたき台では、2020年度の「基本的視点」をほぼ継承しつつ、新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえて「新興感染症等に対応できる医療提供体制を構築する視点」を加えました(図3)。

それらを踏まえた改定の「方向」も2020年度の基本方針をほぼ踏襲し、「対人中心への転換の推進」「かかりつけ機能の強化」「質の高い在宅医療・訪問看護の確保」などを挙げています。新型コロナウイルス感染症に関しては「当面、継続的な対応が見込まれる」とし、それらへの反対意見は出ていません。

図3 2022年度診療報酬改定の「基本的視点」と「具体的方向性」(たたき台)

社会保障審議会・医療保険部会(2021年9月22日)の資料を基に作成

一方、中央社会保険医療協議会は、基本方針の取りまとめに先立ち調剤報酬改定の議論を2021年7月に始め、厚生労働省は、対人中心への転換の推進を早速俎上に載せました。

対人中心への転換が必要な根拠の一つとされるのが、調剤医療費のうち薬剤料を含めない「技術料」に占める調剤料、調剤基本料、薬学管理料ごとの割合(点数ベース)です。

厚生労働省によると、対物業務を評価する調剤料のウエートは2015年度の54.0%から毎年低下していますが、そのペースは緩やかです。2020年度は51.6%でした。この年の改定で対人業務への転換を進めたはずなのに、「技術料」の半分超を依然として調剤料が占めていることになります。

これに対し、対人業務への評価とされる薬学管理料の割合は2年連続でむしろ低下し、2020年度は2割に届きませんでした(図4)。厚生労働省は、そうした状況の解消を調剤の分野の課題に位置付けていて、対人中心への転換はもう既定路線といえそうです。

図4 「技術料」に占める調剤基本料、調剤料、薬学管理料(点数ベース)の割合

中央社会保険医療協議会・総会(2021年7月14日)の資料を改編

ただ、中央社会保険医療協議会での議論はこれまでと少し異なります。対物業務を引き締めるだけでなく、適切な対物業務を対人業務とセットで進めるべきだという意見が、診療側と支払側双方の委員から上がっているのです。医療安全の確保には適切な対物業務が欠かせないためです。

支払側の間宮清委員(連合「患者本位の医療を確立する連絡会」委員)は2021年7月14日の総会で、「対物業務から対人業務への転換という言葉自体が私としては受け入れられない。これはもう両輪だ」などと述べました。

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コロナ特例加算終了、10-12月は実費補助に

在宅医療の確保では薬薬連携や在宅患者訪問薬剤管理指導のてこ入れがテーマです。

厚生労働省は中央社会保険医療協議会の2021年8月25日の総会で、入院・外来から在宅医療に移行する際や在宅から入院医療に移行する際に切れ目ない情報提供体制の構築を促す方針を示しました。

在宅医療への需要の急増が都市部などで見込まれ、介護保険の「居宅療養管理指導」を中心に在宅医療に参入する薬局が年々増える中、関係者同士の情報共有を進めることで、有効で安全な薬物療法を在宅でも受けられるようにする狙いです。

診療側の有澤賢二委員(日本薬剤師会常務理事)はこの日、患者さんが退院する際のカンファレンスに参加する薬局が少ないことを指摘し、参加を難しくする課題の改善策を議論するよう求めました。

また、厚生労働省は2021年10月22日、在宅医療の担当医だけでなく、担当医の連携先の医師の指示で訪問薬剤管理指導を行った場合も2022年度の改定で新たに評価するてこ入れ案を中央社会保険医療協議会に示しました。

一方、新興感染症対策は、2024年4月に始まる第8次医療計画を見据えた中長期的な対応と、新型コロナウイルスの感染拡大を想定した短期的な対応の2段階です。

医療現場にとって最大の関心事は、新型コロナウイルスの拡大防止策への支援でしょう。感染の拡大防止に取り組む薬局や医療機関の「かかり増し」の経費をカバーするため、国は2021年度予算編成の閣僚折衝で、診療報酬の上乗せを特例で認めることを決めました。

薬局は、調剤基本料や一部の薬学管理料に「調剤感染症対策実施加算」として4点を上乗せできましたが、これは同年4月から9月末までの時限措置。10-12月分の「かかり増し」分は、国が実費を直接補助する形に切り替わりました。

これに対し、特に手厚い感染対策が必要だとして2020年12月に始まった小児(6歳未満)への診療報酬の特例は、2021年10月以降の上乗せを12点から6点に引き下げ、年度末まで続けます。

中央社会保険医療協議会では、診療側が期限後の継続を求めそうですが、それには財源の裏付けが不可欠です。年末の予算案の編成過程で政府内での調整が本格化するとみられます。

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オンラインは「対面の補完」、日薬・有澤委員

2022年度改定の基本方針のたたき台では、安全・安心で質の高い医療の実現の「方向」として、オンライン服薬指導など「ICTの利活用」も挙げました。

政府は、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため2020年4月に始まった特例を恒久化し、オンライン診療を受けていない患者さんを含めて、薬剤師の判断で初回から行えるようにする方針です。

厚生労働省は、医薬品医療機器等法(薬機法)の改正に基づき2020年9月に施行された現行ルールの見直し案を秋ごろまとめ、それへのパブリックコメントを行うとしています。

中央社会保険医療協議会では、新たなルールを前提に点数や算定要件の見直しを議論します。有澤委員は2021年7月14日の総会で、「オンライン服薬指導はあくまで対面実施の補完」「(特例を)そのまま恒久的なものに持っていくことには違和感がある」などと述べました。そのほか、オンライン診療の普及に伴う医療機関と薬局の情報連携について議論が必要なことや、対面診療との関係の考慮を行っていくことは重要だという意見もでています。

一方、基本方針のたたき台では、医療の効率化・適正化を進めるための「方向」の例として、「後発医薬品やバイオ後続品の使用促進等の医薬品の適切な使用の促進」を挙げています。

しかし、メーカーの不祥事に伴う後発薬の供給不安は解消の糸口がまだ見えません。社会保障審議会の医療部会が2021年10月4日に開いた会合では、加納繁照委員(日本医療法人協会会長)が「ドミノ倒しのごとく次から次へと後発医薬品が不足している」と窮状を訴えました。

厚生労働省医政局の安藤公一経済課長はこれに対し、国の方針で量的拡大を最優先させてきた結果、価格競争が進んだことや、後発薬が浸透しメーカーが販路を拡大しにくくなったことが質の確保を難しくしているとの見方を示しました。

安藤課長はその上で、「メーカー側と協力し、新しいビジネスモデルの構築も含めて安定供給の取り組みを進めたい」と述べました。

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