
忙しい薬局経営者に! パッと見てわかる新薬解説
2021年11月25日、厚生労働省は新薬12製品を薬価収載しました。多くの薬剤師が動向を確認する新薬の発売状況。日々、経営業務に追われて、見過ごしてしまっていませんか? そこで今回は日々忙しい薬局経営者や薬剤師の方々のために、保険薬局で取り扱われる薬に絞って要点をわかりやすく解説していきます。
目次
1 保険薬局で取り扱う新薬を紹介
薬価や算定方式については、2021年11月17日に行われた第497回中央社会保険医療協議会(中医協)総会で了承されています。
今回薬価収載された12の新薬のうち、保険薬局で取り扱う機会の多い以下5製品の特徴を簡単に紹介していきます。
2 レットヴィモカプセル(セルペルカチニブ)
レットヴィモは、RET融合遺伝子陽性非小細胞肺がんに対して日本で初めて承認された、RETキナーゼ阻害薬です。
RETの活性化は、RETのキナーゼドメインとCCDC6などのパートナータンパク質の二量体化ドメインが融合することで、リガンドに依存せず常にキナーゼが活性化した状態になる染色体再構成(RET融合遺伝子)により起こるとされています。
レットヴィモはRET分子内に存在するキナーゼを選択的に阻害し、RETを介したシグナル伝達を遮断することで腫瘍増殖抑制作用を示すと考えられています。RET融合遺伝子陽性は非小細胞肺がんの約2%でみられ、その患者数は約4,390人と推測されます。
レットヴィモはRET融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がんに対して1次治療から使用可能で、成人には1回160mgを1日2回経口投与します(患者の状態により適宜減量)。通常、コンパニオン診断薬を使用して用います。
製品名 | レットヴィモカプセル40mg/同カプセル80mg | |
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規格単位(薬価) | 40mg1カプセル(3,680.00円) 80mg1カプセル(6,984.50円) |
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効能・効果 | RET融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌 | |
市場規模 予測 |
ピーク時 | 10年後 |
ピーク時投与患者数 | 748人 | |
ピーク時販売金額 | 156億円 | |
製造販売(発売日) | 日本イーライリリー(発売日未定) |
3 ビンマックカプセル(タファミジス)
ビンマックは、トランスサイレチン型心アミロイドーシス(ATTR-CM)を対象とするカプセル剤です。
アミロイドーシスは、さまざまな異常タンパク質から形成された難溶性のアミロイド繊維が全身や臓器に沈着することによって起こる機能障害で、難病に指定されています。異常タンパク質のうち、トランスサイレチン(TTR)で形成され、主に心臓に蓄積するアミロイドーシスはATTR-CMと称されており、さらにTTR遺伝子に変異のある変異型と変異のない野生型に分類されます。
ビンマックは野生型及び変異型のATTR-CMの原因となる異常なTTRと特異的に結合し、TTRを安定化することで沈着を防ぎます。ATTR-CM治療薬としてすでに発売されているビンダケルカプセル(一般名:タファミジスメグルミン)ではATTR-CMの場合1日1回4カプセル服用する必要がありました。ビンマックではタファミジスメグルミンの生理活性本体であるタファミジス遊離酸を高用量含むことにより1カプセルの服用で効果を示すようになり、患者負担を軽減することが期待されます。
成人には1日1回1カプセルを経口投与します。
製品名 | ビンマックカプセル61mg | |
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規格単位(薬価) | 61mg1カプセル(155,464.00円) | |
効能・効果 | トランスサイレチン型心アミロイドーシス(野生型及び変異型) | |
市場規模 予測 |
ピーク時 | 10年後 |
ピーク時投与患者数 | 4.1千人 | |
ピーク時販売金額 | 524億円 | |
製造販売(発売日) | ファイザー(発売日未定) |
4 エフメノカプセル(プロゲステロン)
エフメノは、更年期障害及び卵巣欠落症状に対する卵胞ホルモン剤投与時の子宮内膜増殖症の発症抑制を効能・効果とする日本初の経口天然型黄体ホルモン製剤で、同成分が注射薬として発売されています。
ホルモン補充療法(HRT)における子宮内膜癌、子宮内膜過形成のリスクを軽減する目的で黄体ホルモン製剤の併用投与が行われていましたが、HRTにおいて子宮内膜増殖抑制に関する適応をもつ製剤はなかったため、適応を有しない合成黄体ホルモン製剤が使用されてきました。国内第Ⅲ相臨床試験において、子宮非摘出の更年期障害女性におけるエストラジオールとエフメノの併用について有効性及び安全性が確認されたことから、今回の効能・効果で承認となりました。
さらにエフメノは、経口投与では吸収しにくい天然型黄体ホルモンをマイクロナイズド化(微粒子化)することで、経口投与でも吸収しやすくなっています。食後にエフメノを服用した場合、Cmax及びAUCが上昇するとの報告をふまえて、就寝前投与となっています。
製品名 | エフメノカプセル100mg | |
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規格単位(薬価) | 100mg1カプセル(229.70円) | |
効能・効果 | 更年期障害及び卵巣欠落症状に対する卵胞ホルモン剤投与時の子宮内膜増殖症の発症抑制 | |
市場規模 予測 |
ピーク時 | 10年後 |
ピーク時投与患者数 | 1.9万人 | |
ピーク時販売金額 | 12億円 | |
製造販売(発売日) | 富士製薬工業(11月29日) |
5 サイバインコ錠(アブロシチニブ)
サイバインコは、既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎(AD)に対する経口JAK(ヤヌスキナーゼ)阻害剤で、JAKファミリー(JAK1、JAK2、JAK3及びTyk2)のうち、JAK1を選択的に阻害する低分子化合物です。
炎症が起こるとき、炎症性サイトカインが各受容体に結合して核へとシグナル伝達が行われます。その受容体に結合しているタンパク質をJAKと呼び、JAKを介してシグナルが核へと移行します。サイバインコによってJAK1が阻害されることにより、ADに関与するとされるインターロイキン(IL)-4、IL-13、IL-31、IL-22、胸腺間質性リンパ球新生因子(TSLP)を含む複数のサイトカイン・シグナルが抑制されると考えられています。
ADの適応を持つ経口JAK阻害薬としては、オルミエント錠(一般名:バリシチニブ)、リンヴォック錠(一般名:ウパダシチニブ水和物)に続く3剤目ですが、12歳以上の小児適応を有するのは、リンヴォックに続き2剤目です。
通常、成人及び12歳以上の小児には、100mgを1日1回経口投与します(患者の状態により200mgに増量可)。
製品名 | サイバインコ錠50mg、同錠100mg、同錠200mg | |
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規格単位(薬価) | 50mg1錠(2,678.40円) 100mg1錠(5,221.40円) 200mg1錠(7,832.30円) |
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効能・効果 | 既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎 | |
市場規模 予測 |
ピーク時 | 8年後 |
ピーク時投与患者数 | 1.5万人 | |
ピーク時販売金額 | 166億円 | |
製造販売(発売日) | ファイザー(発売日未定) |
6 ソグルーヤ皮下注(ソマプシタン(遺伝子組換え))
ソグルーヤは重症の成人成長ホルモン分泌不全症に対する治療薬で、国内初の週1回投与の長時間作用型ヒト成長ホルモン(hGH)アナログ製剤です。2021年1月に承認を取得し、再三に渡る収載見送りの末に今回収載となりました。
101位に単一置換を有するアミノ酸骨格にアルブミン結合部位(側鎖)が接合しており、内因性アルブミンとの可逆的な非共有結合で、ソマプシタンの血中からの消失が遅延することで、作用時間の延長が可能となりました。従来は週6~7回の投与が必要でしたが、ソグルーヤは週1回投与であり、投与回数の大幅な減少によって患者負担の軽減が期待されます。
今回発売となったのは1.5mLカートリッジに入った溶解操作が不要なリキッドタイプ製剤で、複数回投与可能な使い捨てプレフィルドペン型注入器に装填された製剤です。保存方法は冷蔵庫(2~8℃)保管です。
通常、1.5mgを開始用量とし、週1回皮下注射します(開始用量は患者の状態により適宜増減)。その後は、患者の臨床症状及び血清インスリン様成長因子-I(IGF-I)濃度等の検査所見に応じて適宜増減します(最高用量8.0 mg)。また、60歳超の患者では1.0mg、経口エストロゲン服用中の女性患者では2.0mgを目安に投与を開始することとされています。
製品名 | ソグルーヤ皮下注5mg、同皮下注10mg | |
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規格単位(薬価) | 5mg1.5mL1キット(26,107円) 10mg1.5mL1キット(52,214円) |
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効能・効果 | 成人成長ホルモン分泌不全症(重症に限る) | |
市場規模 予測 |
ピーク時 | 10年後 |
ピーク時投与患者数 | 7.0千人 | |
ピーク時販売金額 | 47億円 | |
製造販売(発売日) | ノボ ノルディスク ファーマ(12月10日予定) |
※上記の薬価や効能・効果は全て収載時(2021年11月25日現在)のものです。
※ピーク時・ピーク時の投与患者数・ピーク時の販売金額は、販売製造元が市場規模予測したものです。
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