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医薬品の基礎知識

忙しい薬局経営者に! パッと見てわかる新薬解説
【2022.8月収載版】

2022年8月18日、厚生労働省は新薬7製品を薬価収載しました。多くの薬剤師が動向を確認する新薬の発売状況。日々、経営業務に追われて、見過ごしてしまっていませんか? そこで今回は日々忙しい薬局経営者や薬剤師の方々のために、保険薬局で取り扱われる薬に絞って要点をわかりやすく解説していきます。

1
保険薬局で取り扱う新薬を紹介

薬価や算定方式については、2022年8月10日に行われた第527回中央社会保険医療協議会(中医協)総会で了承されています。
今回薬価収載された7の新薬のうち、保険薬局で取り扱う機会の多い以下5製品の特徴を簡単に紹介していきます。

2
ジェセリ錠(ピミテスピブ)

ジェセリは、日本で開発された世界初のHSP(熱ショックタンパク質)90を阻害する作用機序を持つ消化管間質腫瘍(GIST)治療薬です。

GISTは胃や小腸などの消化管の壁に発生し、転移や再発を引き起こす悪性腫瘍の一種です。消化管における間葉系腫瘍の中では最も高頻度に発生し、国内年間罹患数は約1,500~2,500人とされる希少がんの一つとなっています。治療において、発見時に他臓器に転移があったり再発した場合は、チロシンキナーゼ阻害薬による全身治療が標準治療とされています。しかし、チロシンキナーゼ阻害薬に不応・不耐である場合の治療選択肢がなく、新たな治療選択肢が望まれていました。

生体内において細胞は低栄養や低酸素などさまざまなストレスにさらされています。HSP90は、そういったストレスに反応して発現量が増加し、タンパク質を安定化させることによって細胞をストレスから守ります。

HSP90はがん細胞や腫瘍組織に多く発現し、活性の高い状態で存在することから、特にがん細胞の増殖や生存、維持に重要であることが判明しています。さらに、GISTなど一部の悪性腫瘍におけるHSP90の発現は、がんの進行や患者の予後と相関しているといわれています。

ジェセリはHSP90を阻害することで、がんの増殖や生存などに関与するKIT(幹細胞因子受容体)やPDGFRA(血小板由来増殖因子受容体α)、HER2、EGFRなどのタンパクの高次構造形成に影響を与えて不安定化し、腫瘍増殖に関与するタンパク発現量の減少やアポトーシスの誘導などを介することで腫瘍増殖作用を示すとされています。

通常、成人には1日1回160mgを空腹時に投与します。5日間連続経口投与したのち2日間休薬し、これを繰り返します。なお、患者の状態により適宜減量します。

製品名 ジェセリ錠40mg
規格単位(薬価) 40mg1錠(6,265.00円)
効能・効果 がん化学療法後に増悪した消化管間質腫瘍
市場規模
予測
ピーク時 8年後
ピーク時投与患者数 82人
ピーク時販売金額 1.0億円
製造販売(発売日) 大鵬薬品工業(発売日未定)

3
ラゲブリオカプセル(モルヌピラビル)

ラゲブリオは、経口投与が可能な新型コロナウイルス感染症治療薬です。ラゲブリオが体内で代謝されて活性代謝物となり、SARS-CoV-2におけるRNA依存性RNAポリメラーゼによって活性代謝物がウイルスRNA配列に取り込まれる結果、ウイルスRNAのエラー頻度が増加することでウイルスの増殖が阻害されます。

2021年12月24日に特例承認されており、安定供給が難しいことから国において買い上げ、治療を行う医療機関および調剤に対応する薬局に無償で提供されていましたが、今回薬価収載されました。

ラゲブリオは「新型コロナウイルス感染症診療の手引き」で有効性の確立した承認薬として紹介されており、標準治療法になると考えられています。軽症~中等症Ⅰに該当し重症化リスク因子のある患者が対象です。臨床試験において、6日目以降に投与を開始した患者における有効性を裏づけるデータは得られていません。

通常、18歳以上の患者には1回800mgを1日2回、5日間経口投与します。胎児に影響が出るおそれがあるため、妊婦や妊娠している可能性がある女性には服用しないこととなっています。また、脱カプセルや懸濁・簡易懸濁投与に関しては十分なデータがないため、やむを得ない場合を除き、すすめられないとされています。

製品名 ラゲブリオカプセル200mg
規格単位(薬価) 200mg1カプセル(2,357.80円)
効能・効果 SARS-CoV-2による感染症
市場規模
予測
ピーク時 初年後
ピーク時投与患者数 15万人
ピーク時販売金額 138億円
製造販売(発売日) MSD(2021年12月24日)

4
エパデールEMカプセル(イコサペント酸エチル)

エパデールEMは新剤形医薬品であり、既存商品であるエパデール(一般名:イコサペント酸エチル)に乳化剤を含めて消化管で吸収されやすく工夫した自己乳化型新規高純度イコサペント酸エチル(EPA)製剤です。

高脂血症に対してエパデールは消化管からの吸収率により1日2回または3回投与で用いられていますが、エパデールEMは1日1回の食直後の経口投与で用いられます。そのためアドヒアランスの向上が見込まれ、食事の影響も受けにくいとされています。トリグリセリド高値の程度により、1回4g、1日1回まで増量できます。

エパデールで承認されている効能・効果「閉塞性動脈硬化症に伴う潰瘍、疼痛及び冷感の改善」はエパデールEMでは承認されていないので注意が必要です。

製品名 エパデールEMカプセル2g
規格単位(薬価) 2g1包(113.00円)
効能・効果 高脂血症
市場規模
予測
ピーク時 6年後
ピーク時投与患者数 9.6万人
ピーク時販売金額 40億円
製造販売(発売日) 持田製薬(発売日未定)

5
イグザレルト錠(リバーロキサバン)

選択的直接作用型第Xa因子阻害薬であるイグザレルトは、今回2.5mg錠の新用量・剤形追加、さらに2.5mg錠の効能・効果として「下肢血行再建術施行後の末梢動脈疾患(PAD)患者における血栓・塞栓形成の抑制」にて収載されます。既存のイグザレルト錠10mg、同15mgなどにはこの効能・効果は収載されません。

PADは冠動脈以外の末梢動脈にプラークが蓄積して、アテローム性動脈硬化症が原因で起こる疾患です。下肢血行再建術施行後のPAD患者では、患肢の再発リスクに加え、対側肢のPAD発症リスク、死亡リスク、心血管イベントなどにも注意が必要とされています。それらの抑制を目的に抗血小板薬単剤療法(SAPT)を終生継続することが推奨されています。

今回、新たな治療選択肢として、アスピリンによる抗血小板療法に抗凝固療法のイグザレルト2.5mg錠を上乗せする治療法が可能になり、より一層の血栓・塞栓形成の抑制への貢献が期待されます。

通常、成人にはリバーロキサバンとして2.5mgを1日2回経口投与します。また投与時はアスピリン(81~100mg/日)と併用することとされています。

製品名 イグザレルト錠2.5mg
規格単位(薬価) 2.5mg1カプセル(117.80円)
効能・効果 下肢血行再建術施行後の末梢動脈疾患患者における血栓・塞栓形成の抑制
市場規模
予測
ピーク時 6年後
ピーク時投与患者数 11万人
ピーク時販売金額 62億円
製造販売(発売日) バイエル薬品(発売日未定)

6
ボックスゾゴ皮下注用(ボソリチド(遺伝子組換え))

ボックスゾゴは軟骨無形成症(ACH)の治療薬として開発された世界初のヒトC型ナトリウム利尿ペプチド類縁体です。今まで治療法は対処療法や成長ホルモン療法しかなく、日本において約25年ぶりのACH治療薬です。

ACH患者では、線維芽細胞増殖因子受容体3型(FGFR3)遺伝子の機能獲得型変異によって、FGFR3が常に活性化されています。その結果、骨組織の形成に欠かせない軟骨内骨化が負の調節を受けることで軟骨細胞の増殖が抑制され、四肢短縮や低身長症、その他多くの合併症を示す希少疾患です。

ボックスゾゴはナトリウム利尿ペプチド受容体Bを活性化し、FGFR3シグナル伝達を下方制御して正の調節を行うことで、軟骨内骨化を促進する作用を持ちます。

通常、2歳以上の患者には15μg/kgを、2歳未満の患者には30μg/kgを1日1回、皮下注射します。ただし、1回投与量は1mgを超えないこととなっています。第527回中医協総会にて在宅自己注射が了承されたため、新発売時から在宅自己注射が可能です。また、なるべく同一時間帯に投与するようにしてください。

製品名 ボックスゾゴ皮下注用0.4mg、同皮下注用0.56mg、同皮下注用1.2mg
規格単位(薬価) 0.4mg1瓶(溶解液付)(121,034円)
0.56mg1瓶(溶解液付)(124,241円)
1.2mg1瓶(溶解液付)(124,994円)
効能・効果 骨端線閉鎖を伴わない軟骨無形成症
市場規模
予測
ピーク時 5年後
ピーク時投与患者数 515人
ピーク時販売金額 232億円
製造販売(発売日) BioMarin Pharmaceutical Japan(発売日未定)

※上記の薬価や効能・効果は全て収載時(2022年8月18日現在)のものです。

※ピーク時・ピーク時の投与患者数・ピーク時の販売金額は、販売製造元が市場規模予測したものです。

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