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フォーミュラリを検討・推進、医療費適正化計画に記載へ
次期診療報酬改定で点数評価も

ジェネリック医薬品のさらなる使用促進、特に高額なバイオ医薬品のジェネリック医薬品であるバイオ後続品の使用促進に向け、「フォーミュラリの取り組みを検討・推進する」ことが、2024年度からスタートする第4期医療費適正化計画に位置付けられる方向となりました。フォーミュラリの導入促進に向けた診療報酬評価は、2020年度、2022年度の2回の診療報酬改定で見送られましたが、2024年度改定に向けても議論は続き、実現の可能性もあります。 ※この記事は「CBnews」とのタイアップ企画です。

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薬局・診療所にも動き、DPC病院に浸透

フォーミュラリの導入は、DPC病院を中心にすでに大きく進展しています。点数評価を議論してきた中央社会保険医療協議会は、診療報酬改定結果検証部会によるジェネリック医薬品に関する調査の中で、薬局、病院、診療所のそれぞれについて、フォーミュラリへの取り組み状況を調査しています。
2021年度調査の結果、DPC対象病院とDPC準備病院では、フォーミュラリを「定めている」が14.5%、「今は定めていないが、定める予定がある」が31.6%で、合わせると46.1%と、半数近くになりました。

病院全体でも、フォーミュラリを「定めている」が9.2%、「今は定めていないが、予定がある」が19.1%で、合わせると28.3%、約3割に達しています。
病院のフォーミュラリは、基本的に個別病院ごとに策定されています。

一方、薬局や診療所が関わるフォーミュラリは、地域の医療機関や薬局で共有する「地域フォーミュラリ」となります。

診療所調査では、地域フォーミュラリが「存在する」は2.0%と少ないものの、「作成中」が13.6%あり、合わせると15.6%になります。

病院も、地域フォーミュラリと関わりを持ちます。しかし、病院では、地域フォーミュラリが「存在する」は0.3%でしかなく、「作成中」も2.7%で、合わせても3.0%です。

また、薬局調査では、地域フォーミュラリが「存在する」は6.4%、「作成中」が0.1%で、合わせて6.5%と、診療所よりも少ない状況です。

現状は、病院のフォーミュラリはDPC病院を中心にかなりの進展を見せていますが、病院も含めた地域フォーミュラリは、動き出したばかりという段階のようです。

図1 フォーミュラリの作成状況



出典:中医協・令和2年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査(令和3年度調査)報告書から、図表3-53(145P)、図表2-107(102P)、図表3-67(156P)

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政府・厚生労働省の狙いと中医協

フォーミュラリの策定は進みつつありますが、中医協の調査では、地域フォーミュラリについて、「地域フォーミュラリがどのようなものであるか分からない」との回答が、薬局で15.1%、診療所では39.6%、病院でも6.5%あります。
薬局や診療所では、フォーミュラリそのものの認知度がまだ十分ではないようです。

厚生労働省は、中医協などの資料で、わが国のフォーミュラリの厳密な定義はないが、一般的には「医療機関等において医学的妥当性や経済性等を踏まえて作成された医薬品の使用指針」を意味するものとして用いられていると説明しています。

また、院内フォーミュラリと地域フォーミュラリがあることを示し、▽院内フォーミュラリは、作成は院内の医師や薬剤師、管理運営は病院薬剤部が行い、作成の難易度は低く。地域の医療経済への影響度は小さい▽地域フォーミュラリは、作成は地域の医師(会)、薬剤師(会)、中核病院の3者、管理運営は薬剤師会(医師会)が行い、作成の難易度は高いが、地域の医療経済への影響度は大きい-としています。

地域フォーミュラリの具体例として、日本海ヘルスケアネットの状況を紹介。プロトンポンプ阻害薬(PPI)などの薬効群で地域としての推奨薬剤リストが作成されており、「日本海総合病院では一定の導入効果が出ている」ことを挙げています。

PPIでは、推奨薬剤がランソプラゾール、ラベプラゾール、オメプラゾールとされています。いずれもジェネリック医薬品の使用が想定されます。
同病院のPPIの処方は、フォーミュラリを導入した2018年現在で、導入前は新薬のネキシウムがトップ、ランソプラゾールは2番目でしたが、導入の翌月にはネキシウムが減少してランソプラゾールが増える形でほぼ同数となり、さらに翌月には完全に逆転し、その後はネキシウムが減少を続ける一方、ランソプラゾールは増えて大きな差が生ずる状況となりました。
フォーミュラリの導入により、ジェネリック医薬品の使用が大きく進展したという効果です。

厚生労働省は2020年度診療報酬改定に向けた中医協での議論でこうした説明をし、フォーミュラリの点数評価を提案しましたが、この時には、診療側だけでなく支払側も慎重姿勢を示し、見送りとなりました。

2022年度改定に向けては、首相が議長を務める経済財政諮問会議が、社会保障を含めた国の政策の方向を示す「骨太方針2021」に、ジェネリック医薬品のさらなる使用促進策として、バイオシミラーの目標設定の検討、ジェネリック医薬品調剤体制加算の見直しの検討と共に、「フォーミュラリの活用」を位置付けました。

また、政府が同時に閣議決定した成長戦略実行計画2021では、「バイオシミラーの利用を促進するための具体的な方策の検討」が書き込まれました。

この政府方針を受け、厚生労働省は、2022年度診療報酬改定で再びフォーミュラリの点数評価を中医協に提案しました。
2020年度改定後の検証調査で初めて行ったフォーミュラリの導入状況調査の結果、病院の16.1%がフォーミュラリを策定しており、対象薬剤はPPI経口薬が58.1%で最も多かったことなどを示しています。

中医協では、2020年度改定時には慎重姿勢だった支払側が、その姿勢を転換して、ジェネリック医薬品使用促進の観点からフォーミュラリの点数評価導入を主張しました。
しかし、診療側は、コロナ禍が続いていることに加えて、ジェネリック医薬品メーカーによる医薬品医療機器等法違反事案の発覚により、ジェネリック医薬品そのものの安定供給に大きな支障が出ていることへの対応が先決として、フォーミュラリの点数評価には反対の姿勢を貫きました。
点数評価は再度見送りとなりました。

図2 中医協による第1回フォーミュラリ調査の結果

出典:2021年7月21日中央社会保険医療協議会・総会「個別事項その1(医薬品の適切な使用の推進)」54P

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2024年度点数評価導入に向けて

それでも、厚生労働省は、2022年度診療報酬改定後の社会保障審議会・医療保険部会で、骨太方針2022と改革工程表2021により検討が求められていた事項に関する議論の中で、「医療費適正化対策の実効性の確保」の項目の一つ「ジェネリック医薬品の使用促進策」として、「フォーミュラリの策定」を改めて提案し、そこに「フォーミュラリ策定の効果の一つとして、ジェネリック医薬品の使用促進が期待される」と明記したのです。

診療報酬評価に反対してきた診療側、特に日本医師会の委員は、医療保険部会でも、医薬品の供給不安の解消が第一との主張で、フォーミュラリ策定についても「その効果はまだ明確なデータとして示されていない」と慎重な姿勢を維持しました。
しかし、フォーミュラリへの取り組みを検討することは受け入れました。

その結果、2022年12月15日にまとめられた「議論の整理」では、フォーミュラリについて、「医薬品の適正使用の効果も期待されるという指摘もあるフォーミュラリ等の取り組みを地域の実情に応じて検討・推進する」ことが明記されました。

当初案では、「フォーミュラリなどの取り組みを進める」とストレートな表現になっていたのですが、日医委員の意見を踏まえて、「フォーミュラリ等の取り組みを検討・推進する」と修正されたのです。

このジェネリック医薬品の使用促進策は、2024年度から始まる第4期医療費適正化計画に向けたものであり、そこに記載されることになるでしょう。

「議論の整理」を受け、政府の経済財政諮問会議は、2022年12月23日にまとめた新経済・財政再生計画改革工程表2022の中に、ジェネリック医薬品の使用促進策として、「医薬品の適正使用の効果も期待されるフォーミュラリの作成の取り組みの支援」、「ジェネリック医薬品も含めた、医薬品の適正使用に資するフォーミュラリガイドラインを策定」の2項目を位置付けました。ガイドラインは2022年度中にまとめる予定です。

第4期医療費適正化計画への「フォーミュラリの取り組みの検討・推進」、改革工程表2022への「フォーミュラリ作成の取り組みの支援」の記載は、2024年度診療報酬改定に向けても、検討すべき課題の一つとされるのに十分な要素となるでしょう。

2024年度改定までには、ジェネリック医薬品の供給不安に対しても相応の対策が取られていると考えられます。
中医協の改定結果検証部会によるフォーミュラリ取り組み状況の調査も、3回目の結果が出てきます。

ジェネリック医薬品の供給不安、フォーミュラリによる効果のデータの2つの課題が解決されるなら、日医としても点数評価の導入を受け入れる可能性はあると考えられます。

図3 第4期医療費適正化計画に向けたフォーミュラリ策定の提案

出典:2022年10月13日社会保障審議会・医療保険部会「医療費適正化計画の見直しについて」14P

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DPC病院6割が目的達成、薬局は約3割が作成関与

フォーミュラリで厚生労働省が目指すのは、ジェネリック医薬品の使用促進です。
中医協の2021年度調査でも、フォーミュラリを策定している病院の目的は、▽有効性、安全性、費用対効果を検討するため▽薬品在庫を減らすため、採用薬品数を減らすため▽エビデンスがあり、コストパフォーマンスに優れる薬剤を推奨することで、費用対効果および支出抑制効果を得るため▽先発品の使用抑制、ジェネリック医薬品の適正使用促進-などとされ、有効性と安全性を考慮しながら、ジェネリック医薬品の使用促進などによる薬剤費削減が重要な要素となっています。
その意味で、薬剤費が包括評価されているDPC病院で大きな進展を見せているのです。

目的の達成度合いも、病院全体で55.6%と過半数になり、DPC病院では58.8%と6割近くになっています。
フォーミュラリ設定のメリットも、病院全体で70.4%が感じているとし、DPC病院では82.4%に達しています。

薬局が参加する地域フォーミュラリでは、その作成や改定に薬局薬剤師や地域薬剤師会が関与することも想定されていますが、中医協の2021年度調査では、地域フォーミュラリがあるとした6.4%の薬局と地域フォーミュラリを作成中とした0.1%の薬局(合計45薬局)のうち、作成・改定に関与している薬局は26.7%ありました。この割合も増えていくでしょう。

図4 フォーミュラリ作成による目的達成度とメリット(病院)


出典:中医協・令和2年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査(令和3年度調査)報告書から、図表3-59・60(151P)

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