薬局経営NAVIとは?
薬局経営

店舗数を増やすよりも
地域に根差して患者さまと関わりたい。

ふたば薬局代表取締役向井 秀人さん

神奈川県横浜市の西部、内陸に位置する旭区。ベッドタウンとして発展してきたこのエリアに、「ふたば薬局」は3店舗を構えています。1988年の開業以来、30年以上にわたり地域に根ざした薬局経営を実践してきた向井秀人さん。開業当時の苦労話から患者さまとのエピソードまで、自身のこれまでの歩みを振り返ってくれました。自らも薬剤師として患者さまに向き合い続けてきた、その想いに迫ります。

店舗データ

横浜市で調剤薬局を開業した経緯を教えてください。

  • 向井 さん:
  • 私は、もともと名古屋の出身です。父が医薬品の卸の仕事をしていて子どもの頃から医薬品業界について知っていたこともあり、薬剤師になりました。大学卒業後は製薬会社で働いていたのですが、配属が横浜になり、こちらに引っ越してきたんです。製薬会社で働きながら、いつか薬局を開業しようという気持ちを持っていました。私事ですが、私の妻も薬剤師で、名古屋の病院に勤め、横浜に出てきてからは調剤薬局で働いて、薬局での仕事のノウハウを身につけておりました。30歳のときに運よく現在の本店の場所を見つけることができ、開業しました。

店舗の立地状況や患者数について教えてください。

  • 向井 さん:
  • 3店舗ありますが距離は近く、車だと5分ほどで回れます。近隣には内科・整形外科・小児科・眼科・皮膚科があり、隣の駅には神奈川県立がんセンターがあります。実際に扱う処方箋は、3店舗で月に520機関ほど。東京都内の病院の処方箋も入ってきます。患者さまの数は、本店で1日約170人。OTCも扱っていますが、95%は調剤です。

開業してからご苦労されたことは?

  • 向井 さん:
  • 開業当時、周辺の医療機関は院内で薬を出していたので、最初の半年間は月に10枚くらいしか処方箋が来ないような状況でした。本当に苦しかったですね。家賃が1日1万円、売り上げが7千円という日々でしたから⋯⋯(笑)
    栄養ドリンクを1本売ることがどれだけ大変か、と同時に1本でも買いに来てくれることのありがたさも、教え込まれました。当時、私たちが遅くまで店を開けていると、近所のかたがご飯や焼き魚を持って来てくださったり、1人での店番は危いからと用事もないのに寄ってくださったり、人の優しさを知りましたね。

    そんな中で少しずつOTCが売れるようになり、その患者さまが、我々夫婦が苦労しているのを見て、医療機関の先生たちに「薬を院外に出したら?」ということを言ってくれたんです。それからようやく処方箋が来るようになりました。このように、地域の方々に助けられて続けてこられたのですから、そのご恩は今も忘れることはありません。

    また、32年間の中では、さまざまなトラブルもありました。完璧に対策はしていても、人間なので漏れは出てしまう。トラブルがあったときに、誠実に対応し、いかに患者さまとの関係を切らないようにすることが大事ですね。それが成功すると、患者さまとの信頼関係は続くと考えています。

薬局を経営するうえで、大切にしていることがあればお聞かせください。

  • 向井 さん:
  • やはり、患者さまと向き合って、目先の利益より患者さまのためになることを第一に考える経営をすることが大切だと思っています。そのため、「かかりつけ薬剤師・薬局」も「健康サポート薬局」も、それまで行っていたことと変わらなかったのでさほど苦もなく、制度ができてわりと早い時期から始めました。
    取り組んでいることの一つが、1カ月に1回程度開催する「健康サポート相談会」というイベントです。内容は、血管年齢測定や講演、相談会などです。イベントをきっかけにして、患者さまとしっかり話ができる環境を作っていきたいと思っています。

    1年半ほど前から、管理栄養士も勤務しています。イベントで食に関する講演を行ったり、日常業務でも患者さまの栄養相談に応じたり。正直なところ、管理栄養士にここまで活躍してもらえるとは思っていませんでした。一般的には管理栄養士のいる薬局はまだそれほど多くはないと思いますし、一緒に働く薬剤師や事務スタッフがうまく活きる環境を作っていく必要はあります。薬剤師でも食生活に踏みこむことはできますが、管理栄養士の知識は薬剤師のはるか上をいっています。今では、患者さまから栄養相談の指名がかかることもしばしばです。

    また、介護保険制度ができる前から在宅患者さまへの訪問も行っています。今、うちの薬局では、施設で100人程と、個人宅は10軒くらいですが、正直なところ、とても大変なので手いっぱいです。独居のかたが多いので、倒れられた場合には、私たちが救急車と一緒に病院に行くような状況になることもありますし、老々介護の場合、薬ももちろんですが物理的、精神的な助けを必要としていることも多いです。そうした対応も含めて薬局の仕事であり、それが私の生きがいであるかもしれない、と思っています。

地域に根差す薬局としての思いをお聞かせください。

  • 向井 さん:
  • 30年以上この地域で薬局をやっていますので、開業したとき0歳だった赤ちゃんがママになっていたりするわけです。小学生の頃に喘息だった子が今はしっかりと働いているのを知ったりすると、自分の家族の成功のように感じられてうれしいですね。その人にとっては、赤ちゃんのときから約30年間の薬歴が残っているわけです。これは、とてもすごいことです。薬局にとっては患者さまの情報が増えていくし、腹を割って話すこともできるようになります。ある薬を飲んで気持ち悪くなった経験をした場合、将来また同じようなことが起きたときに、その情報を引っ張り出してアドバイスもできる。薬局をそういうふうに使っていただけたらうれしいですね。地域に根差すというのは、素晴らしいことだと感じます。

    一時は川崎市などに店を増やしたこともあります。自分が経営だけに注力すれば10店舗も20店舗もやれたとは思うんですが、やっぱり自分で患者さまに相対したいという気持ちがあったので、店舗を増やすことはやめて、離れた場所にある店舗は独立したいという方にお譲りしました。患者さまと関わることがやっぱり生きがいなんです。今は会社を大きくしていくよりも、地域に根差して人を大切にしていくことに注力をしています。

薬局経営をサポートする「医薬品ネットワーク」に加盟された経緯をお聞かせください。

  • 向井 さん:
  • 話をいただいたとき、最初はけんもほろろに断りました(笑)。卸との価格交渉を代行してくれるということでしたが、私はそれも大事な仕事と考えていましたから。それに私は、父が卸で働いていて、自分も製薬会社と薬局を経験しているので、さまざまな立場から卸を見てきました。卸というのは大切な存在なので、価格交渉をお任せして、卸に利益を与えないような価格になったら、医薬品流通業界は終わってしまうと思ったんです。
    でも、あらためて「医薬品ネットワーク」のシステムについて聞くと、卸からの仕入れ価格を力で安く抑えると考えたのは、私の誤解でした。
    加入したのは2017年4月、その頃、「かかりつけ薬局」の仕事がものすごく多くなっていました。訪問に行きなさい、医師やケアマネージャーへの報告書を出しなさい、書類を書きなさい、と。その状況で、卸が持ってくる2,000〜3,000品目ある価格表を1つずつチェックすることは容易ではありません。上位100品目だけ見ればいいとも言われますが、じゃあそれ以下はどうなっているのかと不安でした。ほかの薬局はどのくらいの値段で買っているのかも、やっぱり気になるんですよ。薬局経営者同士で話をしていると、薬価差益が自分の店舗より高い店も多くて。実際、「医薬品ネットワーク」に加盟してみて、5,000店舗以上(※)の薬局がみな同じ価格で買っているということは、ストレスがないことだとわかりました。卸との関係も、変に価格の話題にふりまわされることがなくなり、スッキリしました。人間関係が崩れたということはなかったですね。

    ※2020年3月取材当時

医薬品ネットワーク」に加盟して、一番大きく変わったことは何でしょうか?

  • 向井 さん:
  • デッドストックの医薬品が売れることですね。ふたば薬局では、「医薬品ネットワーク」加盟以前から、近隣の薬局同士でデッドストックのリストをファックスで送り合い、売買していました。そこで半分くらいは売れるんですが、売り切れない物も当然あります。ですが、「医薬品ネットワーク」に加入してからは「デッドストックエクスチェンジ」によって、在庫の8割まで売れるようになりました。
    私たち薬剤師というのは、薬をごみとして捨てたくはないんです。ちゃんと患者さまに使っていただいて病気を治してもらうということが、薬剤師冥利に尽きること。期限切れになって、薬をごみ箱に捨てたくはないので、使わなくなった薬をいかに再生してあげるかは、薬剤師ならだれでも考えていることだと思います。薬が生きるということは、すごくうれしいことですね。

向井さんと同じように、全国でがんばっている薬局経営者、薬剤師のかたにメッセージをお願いします。

  • 向井 さん:
  • みなさんそれぞれの地でがんばっていらっしゃる。それぞれの独自性を生かしたやり方でいいと思います。薬局の仕事においてはいろいろな情報がありますが、良いところを切り取って、多くの薬局が共有していけるといいですね。

    ふたば薬局は、最初は処方箋が来なくて苦しみましたが、その経験から、人の温かさ、患者さまの大切さを学びました。処方箋が来ることにあぐらをかかず、一人ひとりの患者さまに対して思いやりを持って接することが大切です。全ての薬局で、堂々と胸を張れる仕事をやっていければ、未来はあると思っています。

6+
PREV 安定性試験から紐解く、
薬の使用期限
NEXT 薬が売れるほど赤字?
独特な医薬品卸業界の収益構造

Recommend

関連記事
薬局経営

2020.08.21

北海道札幌市で8店の調剤薬局を経営する本通調剤薬局グループは、1980年に角田都志夫さんが創業。現在は、息子である角田俊人さんが副社長として経営に携わっています。今年で36歳と若手ながら、薬剤師会の常務理事も務める角田俊人さんに、これからの薬局・薬剤師のために今取り組んでいること、今後の目標などをお話しいただきました。

医薬品流通

2020.07.21

医薬品卸売会社(以下、卸)は仕入れた価格よりも安い価格で薬局に医薬品を販売している——。
一見すると売れば売るだけ赤字になる、不可解な構造に思えますが、医薬品卸売業独特の商習慣である”リベートアローワンス”によって卸の利益が確保されています。

薬局にとっては、卸から購入する医薬品の価格をなるべく安く抑えることが利益の増加につながりますが、卸の立場を無視した価格交渉を行うと話し合いが難航し、かえって作業効率も悪くなります。まずは、卸の収益構造について学びましょう。

薬局経営

2020.07.15

神奈川県横浜市の西部、内陸に位置する旭区。ベッドタウンとして発展してきたこのエリアに、「ふたば薬局」は3店舗を構えています。1988年の開業以来、30年以上にわたり地域に根ざした薬局経営を実践してきた向井秀人さん。開業当時の苦労話から患者さまとのエピソードまで、自身のこれまでの歩みを振り返ってくれました。自らも薬剤師として患者さまに向き合い続けてきた、その想いに迫ります。

医薬品流通

2020.07.15

医薬品を病院や調剤薬局に届けてくれる医薬品卸売会社(以下、卸)のことを、どのくらいご存じでしょうか? 全国には71社(2020年3月時点)の日本医薬品卸売業連合会(以下、卸連)加盟社があります。そのうち全国流通している4社は「4大卸」と呼ばれ、8割を越えるシェアを誇ります。再編や統合を経て巨大化し年商1兆円を超える4大卸は、「4メガ卸」の通称で呼ばれることもあります。今回は、医薬品の流通を支える4大卸を解説していきます。

Contact

お問い合わせ

まずはお気軽にご相談ください。

医薬品ネットワーク、加盟についてのお問い合わせはこちらから。お気軽にご相談ください。

Case Study

事例紹介
薬局経営

2020.08.21

北海道札幌市で8店の調剤薬局を経営する本通調剤薬局グループは、1980年に角田都志夫さんが創業。現在は、息子である角田俊人さんが副社長として経営に携わっています。今年で36歳と若手ながら、薬剤師会の常務理...
薬局経営

2020.07.15

神奈川県横浜市の西部、内陸に位置する旭区。ベッドタウンとして発展してきたこのエリアに、「ふたば薬局」は3店舗を構えています。1988年の開業以来、30年以上にわたり地域に根ざした薬局経営を実践してきた向井...

Support Service

薬局経営支援サービス
「医薬品ネットワーク」

医薬品ネットワークとは

株式会社メディカルシステムネットワークが運営する薬局経営の悩みを解決するサービスです。

数字でみる医薬品ネットワーク

医薬品ネットワークに加盟する
3つのメリット

医薬品ネットワーク4つの仕組み

Interview

インタビュー記事

「ちかくにいる。ちからになる。」第3回

流通改善の先にある
地域医療への貢献とは
「医薬品に関わる企業として『公』に向けた仕事をしていきたい」

「ちかくにいる。ちからになる。」第3回

株式会社メディカルシステムネットワーク

SCM事業本部 副本部長 兼 営業推進部長勝木桂太