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医薬品流通

薬が売れるほど赤字?
独特な医薬品卸業界の収益構造

医薬品卸売会社(以下、卸)は仕入れた価格よりも安い価格で薬局に医薬品を販売している——。 一見すると売れば売るだけ赤字になる、不可解な構造に思えますが、医薬品卸売業独特の商習慣である”リベートアローワンス”によって卸の利益が確保されています。 薬局にとっては、卸から購入する医薬品の価格をなるべく安く抑えることが利益の増加につながりますが、卸の立場を無視した価格交渉を行うと話し合いが難航し、かえって作業効率も悪くなります。まずは、卸の収益構造について学びましょう。

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卸の厳しい経営環境

現在、日本医薬品卸売業連合会(卸連)に加盟する医薬品卸売業者は70社(2020年6月1日現在)あります。1978年には卸連に615社が加盟していましたが、平成以降は業界内での統合・合併の動きが激しくなり、約40年間で9割近くの会社が淘汰されました。

現在は全国展開する大手4社(メディパル、アルフレッサ、スズケン、東邦HD)にほぼ集約されており、市場シェアの8割を大手4社が占めている状況です。2018年にはスズケンと東邦HDによる業務提携や合弁会社設立があり、さらなる統合の可能性も示唆されています。当然、独自路線を歩む地方の中堅卸にとっては非常に厳しい経営環境であるため、中堅同士で業務提携を行なうなど、生き残りをかけた経営努力が続けられています。

しかし、業界再編が進んでいるにもかかわらず、利益率は下がる一方。利益率が上がらない理由には、卸の収益構造が「薄利多売」であることが大いに関係しています。

卸連の統計によると、2019年3月期の加盟企業の平均営業利益率は1.12%でした。これは大手4社においても同様で、メディパルが1.57%、アルフレッサが1.70%、スズケンが1.28%、東邦HDが1.29%と厳しい数字が並びます。

医薬品という生命に関わる商品を扱うにも関わらず、なぜ「薄利多売」になるのでしょう。理由として業務において厳しい法規制があるため、競合他社との差別化がしにくく、メーカーが卸をつなぎとめるための値引きが横行していたこと、薬価は国で定めているので、利益を上乗せすることができないことなどが挙げられます。また個々の薬局、医療機関との価格交渉を行い、医薬品の急配に日々対応するなど作業効率が悪く、コストがかかりやすいという面も。さらに近年は調剤報酬の改定による薬価の引き下げがあり、収益性が低いジェネリック医薬品が普及するなど、卸にとって非常に利益を出しにくい環境となっていると言えます。

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医薬品の納入価は仕切価より安い?

薬局に携わる方ならご存じかと思いますが、卸は製薬会社から薬を購入し、薬局や医療機関に薬を販売します。製薬会社に払う金額を「仕切価」、薬局や医療機関に販売する価格を「納入価」と呼び、仕入価と納入価の差額(一次売差)が、卸の利益となります。ところが2003年以降、この一次売差はマイナスとなっており、年々その比率は高まっています。これでは薬を売れば売るほど損をする形になるため、どこかで利益を生む必要があります。

一次売差の赤字分を補填し、さらに利益を生み出すのが、製薬会社から卸に支払われる「リベート」と「アローワンス」です。「リベート」とは製薬会社から卸に対して、取引量や仕入代金の支払条件、納品方法などに応じて、値引や代金の割り戻しを行うことをいいます。

アローワンス」は販売促進にかかる報奨金のことで、医療機関に販売した実績に基づいて支払われているケースが多く、販売促進費の修正として扱われます。これらの資金が払われることから、卸は仕切価より安い納入価を薬局に提示し、利幅は薄いながらもなんとか採算が取れる線を守っています。

しかし、こうした商習慣により、ひとつの医薬品の価値があいまいになったことは否めません。卸も薬局もそれぞれ利益を確保しなければならないため、両者のせめぎあいは続き価格交渉がまとまらないケースが増えました。

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流通改善ガイドライン施行の影響

こうした問題を改善するため、2018年4月には厚生労働省によって医療用医薬品の流通改善に向けて流通関係者が遵守すべきガイドライン(流通改善ガイドライン)が施行されました。このガイドラインでは、卸の一次売差マイナスを解消するため、製薬会社に対して市場実勢価格、つまり納入価の水準を踏まえた適切な仕切価を設定することを求めています。アローワンスはなるべく仕切価に反映させ、リベートについても卸の流通経費を考慮した適切な額とするよう指導しています。

また薬局や医療機関に対しては、個々の医薬品の価値を踏まえた交渉を進め、単品単価契約の割合を高めていくこと、年間契約など長期の契約を基本とし、価格交渉の回数を増やさないこと、さらに医薬品の安定供給や卸の経営に影響を及ぼすような、流通コストを全く考慮しない過大な値引き交渉は慎むことを求めています。

ガイドライン施行後1年となる2019年4月には、製薬会社7社が150品目に渡って仕切価の変更を行いました。いずれもリベートの縮小や廃止、アローワンスの縮小を行い、相当分を仕切価に反映させています。

こうした動きは今後も加速することが予想され、卸の一次売差マイナスは徐々に解消されていくと見られていますが、一方でアローワンスが仕切価に反映されたことで、卸の流通コストをカバーする原資が不足するという新たな問題も浮上しています。またメーカーの仕切価が全体的に値上げされたことで、薬局や医療機関との交渉が難航するケースが増え、さらには取引を断られるような事態も増えました。その結果、卸は納入価の設定に極端に慎重になり、薬価妥結の期限が近づいても価格を提示しないという事態が散見されるようになっています。

製薬会社、卸、薬局および医療機関の三者いずれもが適切な利益を確保でき、安定した経営をしていくためにはどうすべきなのか。解決の糸口を慎重に探していく必要がありそうです。

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卸との関係性を保ちながら、価格交渉を効率的に行う手段

卸が置かれている背景を考えると、薬局と卸の価格交渉が難しくなるケースの根本原因として、業界の決まりごとや商習慣などがあることがわかります。薬局が卸と長い月日をかけて関係性を築いても、この根本原因がある限り利益率の確保は簡単ではないと言わざるを得ません。

そんな中、注目されているのが医薬品流通をサプライチェーンマネジメントで効率化しようとする動きです。メディカルシステムネットワークのサービス「医薬品ネットワーク」をはじめ、いくつかの会社がそれぞれ独自のサービスを展開しています。なかでも全国約60社の卸と連携し、取り扱うすべての医薬品について品目ごとに単価を決め(単品単価)、どの卸に注文しても同じ価格で購入することができる「医薬品ネットワーク」は、多くの薬局から支持を集めています。購入する医薬品一つひとつの価格を検討する必要がなくなるため、業務量も減ります。また、加盟するすべての薬局に対して同じ価格で取引されることから透明性が高く、これもまた薬局経営者を安心させるひとつの要因となっているようです。さらに、薬局にオンライン発注や適正な在庫管理を行うことを勧めているため医薬品の発注回数や急配、返品が減り、それが卸の作業効率を上げることにも繋がります。卸にもメリットがあるため、医薬品ネットワークに加盟したからといって、双方の関係性が崩れることもありません。

卸が置かれる背景をよく知り、薬局としてどのように関わっていくべきなのか。今、薬局経営者には、正確な状況把握と適切な判断が求められています。

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