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調剤薬局にも浸透するキャッシュレス決済

あなたが経営する薬局は、いくつの決済手段を選択することが可能ですか? 今、あらゆる取引において決済方法の多様化が求められており、日常の買い物や飲食において、最も利用する決済手段で現金とクレジットカードがほぼ同等に利用されています。決済手段は患者さんにとって薬局選びの材料の1つになります。そのため、現金以外の決済方法を導入している薬局は少なくありません。薬局でも、処方薬の支払いに電子マネー決済やQRコード決済などのキャッシュレス決済を、比較的簡単に導入することができます。今回は、まだキャッシュレス化に踏み出せてないものの、導入に興味を持っているという薬局経営者に、キャッシュレス決済のメリットとデメリット、そして具体的な導入方法をご紹介します。

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キャッシュレス決済の現状

少子高齢化や人口減少が進行する日本は、労働人口が減少する時代を迎え、社会における労働力不足を課題として抱えています。そういった背景の中で、実店舗の無人化や不透明な現金流通の抑止などにつながるキャッシュレス決済の推進が行われています。不透明な現金流通の抑制が税収向上に、支払いデータの活用が消費の利便性向上や活性化につながり、ひいては国力強化にもつながると期待されています。

キャッシュレス決済とは、物理的な現金を使用せずに済ませる決済のことです。近年、クレジットカードなど従来の形態に加えてSuica(スイカ)などの電子マネー、インターネットやアプリケーションを活用した形態がいくつも登場し、多様化を見せています。

経済産業省によると、日本では、2008年に11.9%だったキャッシュレス決済比率が2018年には24.1%まで上昇しています。また、日常の買い物や飲食など(オンラインは除く)で利用する決済手段(複数選択)の調査では、現金に次いでクレジットカードが85.0%、nanaco、WAON、楽天Edyなどの商業系カード型電子マネーが48.8%と、よく利用されていることがわかりました。さらに最も利用する手段としても、現金に次いでクレジットカードが挙がります。

※対象:楽天インサイトに登録しているモニター(約220万人)の中から、全国の20代から60代の男女1,000人

※出典:楽天インサイト「キャッシュレス決済に関する調査」(2019年5月調査)

今後、ますますシェアと選択肢が広がるキャッシュレス決済ですが、他国と比べると普及しにくい背景があると言われています。それは、盗難の少なさや、現金を落としても返ってくる可能性が少なくない治安の良さや、偽札の流通が少ない現金への信頼の高さ、レジ処理のスピードや正確性が高い点などが挙げられます。ATMの利便性が高く、どこでも現金を入手しやすい社会が形成されている点もそうです。

こういった背景が、薬局などの小売業を含めた実店舗が、キャッシュレス導入に消極的な理由にもつながります。消費者の利用比率が限られているのに、わざわざコストをかけて決済端末を導入しようとする決断に至らない気持ちは分かります。端末の回線の引き込みにも負担が発生するでしょう。

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キャッシュレス決済が薬局選びの判断材料に!?

日本におけるキャッシュレス決済の普及について説明してきましたが、薬局業界はどうでしょうか?
実は近年、キャッシュレス決済が利用できる薬局が増えてきています。キャッシュレス決済導入が進む背景としては、「支払額が事前に分からない」という不安を感じる患者さんが一定数いることが挙げられます。もし、現金が足りない場合はATMに現金を引き出しに行く必要があります。これを解消するために、クレジットカードなどのキャッシュレス決済を導入している薬局を選ぶ人が増えている傾向にあります。

都内を中心にクレジットカードが使える薬局は増えてはいるものの、その多くが全国でチェーン展開しているような調剤薬局や大手ドラッグストアというのが実情です。Suicaなどの交通系電子マネーの導入も同様で、中小規模の調剤薬局は、支払いを現金のみとしている店舗がまだまだ多くあります。

小規模な調剤薬局のクレジットカード導入がなかなか進まない背景として、生活雑貨や食品などを取り扱わないため導入するメリットを十分に活かすことができないことが挙げられます。決済手数料の負担が経営の重荷になってしまい、小規模の薬局ほどコスト管理の観点からクレジットカード支払いの導入は難しいとされています。また、地域の小規模な調剤薬局の経営者は、電子機器やスマホの操作に慣れていない高齢の方が少なくありません。そのため、クレジットカードや電子マネー決済の導入が進まないという背景もあります。現在の薬局のマーケティングは病院依存型が主流のため、キャッシュレス化して差別化を図る必要性が薄いとも言えます。今後、オンライン診療が進むと薬局が独自でマーケティングを行う必要があり、その際に差別化としてキャッシュレス化を行う薬局が出てくることも考えられます。

地域に根ざした昔ながらの調剤薬局は、経営者もユーザーも高齢の方が多くなりがち。決済端末やスマホの操作に慣れていない高齢者も多く、積極的にクレジットカードや電子マネー決済を求められるケースも限られています。さらに、一度クレジットカード決済を始めて患者さんがそれに慣れてしまうと、簡単にやめることができないため、導入に慎重になるケースが少なくありません。

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キャッシュレス決済を導入するメリットとデメリット

次に、キャッシュレス決済を導入するメリットとデメリットを整理していきます。前述の通り、現在は決済方法を薬局選びの1つとする患者さんも一定数おり、キャッシュレス決済を導入することでこれらのニーズの取りこぼしを防げるというメリットがあります。現金を扱わない分、会計時間が短くなり効率性が向上する点も外せません。会計ソフトと連携するとさらに便利です。交通系電子マネーはお互いに操作も簡単で煩わしさもなくメリットも大きいと言えます。人と接触することなく支払いができるため衛生面にも優れ、新型コロナウイルスなどの感染症を避けたい患者さんのニーズにも合致します。また、薬局では、患者さんの負担金不足時に次回ツケ払いなどが発生することもしばしば。次回の受診がなさそうな患者さんの場合は、未納状態になってしまいお互いにストレスを感じてしまうこともありますが、そんな心配もキャッシュレス決済が解決してくれます。

一方、デメリットといえば決済手数料がかかる点が挙げられます。患者さんから同じ代金をいただいても、その分利益は減ることになります。ただし、決済手数料については3割負担のうちの3.24%となり、これは売上全体の約1%ほどにあたります。そのためデメリットよりもメリットの方が大きいと考える薬局経営者が過半数を占めます。

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簡単に導入できるキャッシュレス決済

最後にキャッシュレス決済を導入する具体的な方法を紹介します。最近は、さまざまな会社がサービスを展開しています。簡単に申し込むことができ、導入にかかるコストを最小限に抑え、1週間程度で使用可能になるサービスもあります。なかには、20種類以上のクレジットカードや交通系電子マネー、スマホ決済はもちろん、「Apple Pay」や「iD」、QRコード、ポイントカードなどにも幅広く対応し、初期費用にかかる金額も20,000円程度に抑えられるものもあるため、検討してみることをおすすめします。

前述のとおり、キャッシュレス導入は単なる支払い方法の手段ではなく、薬局経営にとってさまざまなメリットを包括しており、他店舗との差別化を図るためにも有効なはずです。今後の薬局経営を効率化するための1つの手段として、キャッシュレス化を検討してみてはいかがでしょうか。

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