
意外と大きい!?
薬局には、さまざまな理由により在庫しているがほとんど動きがない、いわゆる不動在庫医薬品が数多く存在します。それが消化されないまま使用期限を迎えると廃棄ロスとなってしまうため、「どうやってうまく消化しようか」と頭を悩ませている薬局経営者も少なくありません。そこで今回は、不動在庫が発生する原因や、不動在庫をうまく消化するための具体的な手段をご紹介します。
1 不動在庫が経営を圧迫する
薬局経営において、話題に上がることの多い不動在庫問題。これは在庫が使用期限まで処方されず最終的に廃棄となってしまい、その結果として利益率を圧迫するため、薬局経営に大きな影響を与えることを指します。
薬局ごとの年間廃棄金額は平均20万円程度と推計されており、全国の薬局数は約5万9000店にも及ぶため、医薬品の廃棄にともなう損失額は年間100億円にも達すると推定されています。さらに、院内処方の医薬品も加えると、100億円をはるかに超える見込みです。
また薬局の不動在庫が増えてしまう理由はさまざまです。薬剤師は、調剤の求めがあった場合、正当な理由がなければ拒否できないという応需義務が薬剤師法第21条で定められているため、薬局に在庫していない薬が処方された場合でも、その薬を提供する義務があります。
医薬品は販売包装単位ずつの購入が原則とされるため、必要数が処方された後に残った医薬品は使用期限が過ぎると破棄しなければいけません。しかも、薬は一般ごみとして廃棄できないことから、委託業者への廃棄費用も発生してしまいます。
もちろん、こうした医薬品の廃棄ロスが、個人経営の薬局にとって痛手となることは言うまでもありません。
各調剤薬局は、患者さんが持ち込む処方箋や応需している病院・クリニックとの情報共有などから、備蓄する医薬品の品目や数量を決めるのが一般的です。薬局によっては発注予定情報をカレンダーに書きこむなどのアナログな方法で管理を行っているケースもあります。しかし、どんなに工夫を凝らしても不動在庫は発生してしまうため、適正な在庫管理は薬局運営において最も難しい業務の1つと言われています。
2 不動在庫が発生する原因とは
あなたは自分が経営している薬局に、現在どれくらいの不動在庫があるか把握していますか?
調剤の求めに応じる義務があるとは言え、不動在庫が薬局経営に悪影響を及ぼすことは言うまでもないでしょう。
企業会計上は在庫が資産としてみなされるものの、その資産はすぐには現金化できません。薬局内に把握できていない不動在庫を抱えていることによって、資金繰りに問題が起きていることに気づかないケースもあるようです。医薬品の期限切れ、調剤時の破損や汚損、薬価収載からの除外などによって、医薬品が廃棄となり損失が発生します。そのため、ロス率を把握することは経営において重要です。在庫システム上にある医薬品の期限切れに気づかないことにより、いざ投薬する際に使用できないケースも多々あります。
不動在庫は、いわば「廃棄予備群」とも言うべき存在です。廃棄ロスを抑制するためにも、不動在庫を減らすことは薬局経営的には必要不可欠な課題であると言えるでしょう。
前述したように、医薬品は販売包装単位ずつの購入が原則とされており、開封済みの医薬品は品質管理上、返品が困難であるということも不動在庫が増える要因のひとつとなっていることは否めません。
ある行政の調査報告でも現在の医薬品流通システムについて、「製薬会社・卸・薬局ならびに政府が一体となり、改善に努めるべき」(参議院予算委員会調査室『経済のプリズム』)と指摘されています。この報告では、後述する薬局間で行われている不動在庫の消化にも言及されており、薬局における不動在庫を減らすことについて、「社会的な無駄が省かれるというだけでなく、その流通の効率化によって得られた利益は、薬価の値下げにもつながります。その結果として、医療費削減にまでつながるものと思われる」とその意義も強調しています。
3 不動在庫を効率よく消化する方法
不動在庫を避けるための対策として、普段の在庫量をできるだけ抑えつつ、患者さんの来局状況や処方内容などの推測に基づき小まめに発注量を調整する方法や、近隣の薬局と連携して必要な分だけ調達する方法などがあります。それでは、不動在庫となってしまった医薬品はどうすれば廃棄ロスを防げるのでしょうか。
複数店舗を運営する会社であれば、自社チェーン内の薬局同士で不動在庫医薬品のやりとりをすることができるでしょう。また、地域薬剤師会のシステムを利用することで、自局内の不動在庫を減らす取り組みをしている薬局もあります。
その他には、第三者のシステムを利用することも1つの方法として挙げられます。例えば、医薬品ネットワークのデッドストックエクスチェンジ(不動在庫消化サービス)は、オンラインで不要な在庫を登録すればその薬を必要な薬局とマッチングしてくれるサービスなので、薬剤廃棄ロスを効率的に削減することができます。グループ内で在庫を融通し合うことのできない個人経営の薬局などにとっては、こうしたサービスを利用することが不動在庫の解消に向けた一助となっています。
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