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医薬品の基礎知識

安定性試験から紐解く、
薬の使用期限

薬剤のパッケージに記載されている使用期限。その期限は未開封で適切に保管された場合の期限であることがほとんどです。今回は、薬剤を適切に保管するための基礎知識と、薬剤師もあまり知らない使用期限の決め方をご紹介します。

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使用期限は安定性試験に基づいている

医薬品の使用期限(有効期限)は、厚生労働省が所管する安定性試験の結果に基づいて設定されます。使用期限とは、対象となる医薬品が品質規格値を経時的変化させることなく維持できる期限を意味します。安定性試験は、1994年に告示され1997年から適用されている「安定性試験ガイドライン」に基づいて実施されています。医薬品の有効性や安全性を維持するために必要な品質の安定性を評価し、医薬品の貯蔵方法や上述した使用期限の設定に必要な情報を得ることを目的にしています。

安定性試験には、長期保存試験、加速試験、苛酷試験の3種類があり、それぞれの概要は次のとおりです。

長期保存試験
申請する貯蔵方法において、原薬、または製剤の物理的・化学的・生物学的・および微生物学的性質が申請する使用期限を通じて適正に保持されることを評価するための試験です。
未開封の状態における通常の流通期間中での安定性を想定し設定されており、保存条件は、温度:25℃±2℃、湿度:60%RH±5%、根拠があれば他条件可。試験期間は最短保存期間で12ヶ月で申請可能です。

加速試験
申請する貯蔵方法で長期間保存した場合の化学的変化を予測すると同時に、流通期間中に起こり得る貯蔵方法からの短期的な逸脱の影響を評価するための試験です。品質の安定性を短期間で推定するために実施し、化学的変化、または物理的変化を促進する保存条件を用いて行われます。
保存条件は、温度:40℃±2℃、湿度:75%RH±5%、根拠があれば他条件可。最短保存期間は6ヶ月です。

苛酷試験
流通の間に遭遇する可能性のある苛酷な条件における品質の安定性に関する情報を得るための試験であり、加速試験よりも苛酷な保存条件を用いて行います。
光や極端な温度変動・湿度変動・及び凍結によって品質変化が予想される製剤の場合、その影響を検出できる条件設定が行われます。試験期間は試験の目的に合うように適宜設定されます。

測定項目は、「試験法の種類に関わらず、申請書に記載する項目にとらわれず、保存により影響を受けやすい項目、及び品質、安全性、または有効性に影響を与えるような項目。製剤の長期試験では保存剤を含む場合、その量、または効力を測定する」となっています。

医薬品の使用期限は、いずれもこうした緻密な安定性試験を経て決められています。

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剤形ごとに異なる開封後の使用期限の目安

開封後の医薬品の使用期限は条件によって異なりますが、①開封時に微生物が混入する可能性がある、②保管条件(主に保管温度)が不明である、③どの程度の汚染により使用できないか明確に定められていない、などの理由から明確な規定を設けるのは難しい状況にあります。また、医薬品のラベルや箱に表示されている使用期限については原則、未開封の状態で品質を保証する期限であり、開封後のものとは異なるので注意が必要です。

開封後の使用期限について、公的な規定は設けられていませんが、例えば北海道大学病院では「感染対策マニュアル」として、独自の院内指針を定めています。

医薬品 採用薬の例 開封後の推奨使用期限
1 消毒剤 ・ポビドンヨード液10%
・クロルヘキシジングルコン酸塩
 エタノール消毒液1%
3ヶ月
2 綿球に浸した消毒剤 24時間
3 消毒用エタノール含浸綿 ・メディアルコット MZ・S 24時間
4 擦式手指消毒剤 ・ソフティ ハンドクリーン
 手指消毒ジェル
6ヶ月
5 インスリン・バイアル製剤 ・ヒューマリンR等 28日(冷所保存)
6 吸入剤(保存剤含有) ・ブロムヘキシン塩酸塩吸入液
 0.2% タイヨー
・ベネトリン吸入液0.5%等
1ヶ月(冷所保存)
7 吸入剤(保存剤なし) ・アレベール吸入用溶解液 7日(冷所保存)
8 点眼剤 ・レボフロキサシン点眼液1.5%等 1ヶ月(冷所保存)
9 眼軟膏剤 ・タリビッド眼軟膏0.3%等 1ヶ月
10 軟膏剤 ・白色ワセリン等 6ヶ月
11 液剤(シロップ剤等) ・単シロップ等 6ヶ月
12 鼻腔内MRSA除菌剤 ・バクトロバン鼻腔用軟膏2% 1週間後に陽性であった場合の再塗布まで

開封した日付を薬品容器に記載する。
添付文書等に規定があるものについてはそれに従う。
*添付文書に記載あり

出典:北海道大学病院 感染対策マニュアル(第6版)5-4.医薬品開封後の推奨使用期限(大幅改訂)

この「感染対策マニュアル」によると、便宜上、以下のような取扱い条件を設定しています。

  • 容器の注ぎ口やキャップの内側に手指などが接触した際は、その時点で廃棄とする(基本的に手袋を着用し薬液を取り扱う)
  • 直射日光、高温をさけて適切な温度で保管する(冷所保存のものは冷所で保管)
  • 水のはね返りなどが混入しないように使用環境に留意する
  • 開封後の薬液中に異物の混入や異常を認めた場合は、その時点で廃棄とする
  • 開封した日付を薬品容器に記載する

開封後の医薬品の推奨使用期限についても触れられており、例えば、「点眼剤・眼軟膏剤」は、「無菌製剤であり清潔な部位に使用することから、開封後1ヶ月で廃棄する(点眼剤については開封後冷所で保管する)。添付文書などに規定があるものについてはそれに従う」となっています。

また、「軟膏剤(眼軟膏剤を除く)や液剤(シロップ剤など)」については、「開封後6ヶ月で廃棄する。添付文書などに規定があるものについてはそれに従う」とあり、「インスリン・バイアル製剤」は、「冷所保存で28日とする」とされています。

薬局内で日常的に目にする薬剤の使用期限。それが何に基づいて設定されているかを知る薬剤師は多くありません。

仮に規定の保存条件を逸脱した状態で薬剤を保管していたことを患者さんから相談された場合でも、安定性試験の結果をもとに安全性や有効性への影響を推測することで、データに基づいた説明がしやすくなります。特にそれが服用済みの薬剤であった場合においては、患者さんの病態や現在の体の状態によっては医師へ報告する必要があるかもしれません。

使用期限が決まるまでに経ているさまざまな工程を理解することは、患者さんに適切な服薬管理を行うための一助となるでしょう。

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※この記事は「CBnews」とのタイアップ企画です。

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