
薬機法改正で薬局はどうなる?
オンライン服薬指導などを盛り込んだ薬機法改正が2020年9月1日から施行されました。オンライン服薬指導が広がれば、立地に依存しない薬局経営への実現に一歩近づきます。今回は、オンライン服薬指導を導入するメリットをまとめました。
1 薬局の命運握る薬機法改正がスタート
今回の薬機法改正では、医薬品の承認に関することから製造・販売まで、幅広い内容が盛り込まれています。このうち薬局・薬剤師に大きく関係するテーマとしては、オンライン服薬指導、薬剤師による服薬指導後の継続的なフォローアップ、地域連携薬局・専門医療機関連携薬局の導入などがあります。
法律の施行は段階的にスタートし、2020年9月1日から施行されるもののひとつがオンライン服薬指導です。これまで薬の販売は「対面が原則」とされていました。これは2013年の薬機法改正(旧・薬事法)で明確にされたもので、その際に「5年後をめどに再度、検討する」旨も取り決められています。それに沿って法改正の議論をした結果、今回、対面という原則が一定の要件の下で外されました。
本来であれば9月1日からスタートするはずだったオンライン服薬指導ですが、新型コロナウイルスの影響で4月から前倒しで解禁され、時限措置として初診患者にも対象が広げられました。感染防止の観点からも世間からの注目が集まるその内容は、どのようなものなのでしょうか?
2 時限的措置は「当面の間」継続が決定
オンライン服薬指導には大きく分けて「外来オンライン服薬指導」と「在宅オンライン服薬指導」の2つがあります。それぞれの主な要件は次の通りです。
外来オンライン服薬指導
薬剤服用歴管理指導料4として月に1回まで43点が算定できます。対面でこれまでに原則3ヶ月以内に薬剤服用歴管理指導料1または2を算定したことがあり、オンライン診療で処方せんが交付された患者が対象となります。原則として、オンライン服薬指導を行う保険薬剤師は対面による服薬指導を行ったことがあることとされています。対象となる保険薬局の基準は、オンライン服薬指導の割合が1ヶ月当たりの薬剤服用歴管理指導料と在宅患者訪問薬剤管理指導料の合計算定回数のうち1割以下であることです。
対象患者
- オンライン診療で処方箋が交付された患者
- 原則3ヶ月以内に薬剤服用歴管理指導料1又は2を算定した患者
主な算定要件*1
- 薬剤服用歴管理指導料に係る業務を実施すること。ただし、薬剤服用歴管理指導料の加算は算定できない。
- 医薬品医療機器等法施行規則及び関連通知に沿って実施すること。
- オンライン服薬指導を行う保険薬剤師は、原則として同一の者であること。
主な施設基準
- 1ヶ月当たりの①薬剤服用歴管理指導料と②在宅患者訪問薬剤管理指導料(在宅患者オンライン服薬指導料を含む。)の算定回数の合計に占める③薬剤服用歴管理指導料の4と④在宅患者オンライン服薬指導料の算定回数の割合が1割以下。
*1 薬機法上の要件
①当該薬局において調剤したものと同一内容の薬剤について、②オンライン診療による処方箋に基づき調剤を行う。
在宅患者訪問薬剤管理指導料
在宅患者オンライン服薬指導料は月に1回まで57点が算定できます。訪問診療で処方せんが交付されていて、月に1回のみ在宅患者訪問薬剤管理指導料を算定している患者が対象です。イメージとしてこれまでは月に2回、訪問していた患者に対して、2回のうち1回だけはオンライン服薬指導に置き換えることができます。
対象患者
- 在宅時医学総合管理料による訪問診療時に処方箋が交付された患者
- 在宅患者訪問薬剤管理指導料を月1回のみ算定してる患者
主な算定要件*2(基本的に外来患者と同様。異なる部分のみ記載)
- 訪問診療を行った医師に対して、在宅患者オンライン服薬指導の結果について必要な情報提供を文書で行うこと。
施設基準
- 薬剤服用歴管理指導料の4に係る届出を行った保険薬局であること。
*2 薬機法上の要件
①当該薬局において調剤したものと同一内容の薬剤について、②訪問診療による処方箋に基づき調剤を行う。
コロナウイルスによる時限的措置
本来であれば必要な「服薬指導計画書」の策定や「映像」による相互の確認は要件から外されていて、電話による服薬指導も認められています。厚生労働省は感染拡大が続いていること、また新型コロナウイルス以外の疾病の受診控えが見られることから、この時限的措置を当面の間は継続すると決めています(2020年8月6日現在)。
それでは実際にオンライン服薬指導を行う場合は、どのような流れになるのでしょうか?日本薬剤師会では「新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取扱いについて」(0410対応)での薬剤交付までの主な流れについてフローチャートをまとめています。
チャートではまず、患者さんの来局がある場合、ない場合で大きく分かれます。来局がない場合は、以下のような流れになります。
3 オンラインで立地に縛られない薬局経営の可能性も
新型コロナウイルス感染防止の観点から、急遽、解禁が早まったオンライン服薬指導ですが、実際にどれほど活用されているのでしょうか?
厚生労働省によれば、5・6月の服薬指導件数全体のうち約0.5%が電話やオンラインで行われていました。全体でみればまだまだボリュームは多くありませんが、仮にオンラインが普及すれば、立地に縛られない薬局経営も可能になると考えられます。
実際に厚生労働省の報告では、東京の医師が北海道の患者さんを診療するなどの事例もみられています。門前薬局という形態から脱却し、立地に縛られない薬局経営を目指す上で、オンライン服薬指導にはさまざまな可能性があると言えそうです。
立地依存からの脱却のほかにも「感染が心配で薬局に行きたくない」「薬局で長時間、待ちたくない」などの患者ニーズに対応することで、選ばれる薬局にもつながります。実際に大手薬局チェーンでは4月に解禁されると同時に、ホームページ上などでオンラインに対応していることをアピールしているようです。
主なメリットをまとめると次のようになります。
- 患者ニーズへの対応から選ばれる薬局へ
- 立地に縛られない薬局経営
- 患者および従業員の感染防止
- 薬を受け取りに来る代理人ではなく、本人に服薬指導ができる
一方で、医科と異なり薬という”物の移動”が伴う調剤は、薬の配送をどうするかなどの課題もあります。
患者ニーズと世の中の大きな流れを考えると、オンライン服薬指導への対応は避けて通ることはできません。では、まだオンラインに対応していない薬局はどうすればいいのでしょうか? オンライン服薬指導の解禁にあわせて、各社から対応ツールが発売されているので、自分の薬局にあったツールを選ぶことが大切です。
新型コロナウイルスによって解禁が早まったオンライン服薬指導。一気に普及するかどうかは難しいところですが、社会全体で”非接触”の流れが加速する中、オンラインにも対応できることは患者さんへの大きなアピールにつながることは間違いありません。患者ニーズと厚生労働省の検証結果の双方を注視しながら、いつでも対応できるように抜かりなく準備を進めておきたいところです。
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