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転換期こそチャンス、薬剤師の成果示せ
服薬期間中のフォローアップ義務化

医薬品医療機器等法(薬機法)が2019年に改正され、薬剤師の仕事が転換期を迎えています。2020年9月1日には改正法の一部が施行し、服薬状況のチェックや指導などのフォローアップが必要なら、投薬の際だけでなく服薬期間を通じてそれらを行う義務が明確化されました。薬剤の調製など対物中心の業務から、患者さんへのフォローアップなど対人業務へのシフトを促すのが狙いです。大掛かりな見直しは薬剤師の仕事をどう変えるのか。現場の声を聞きました。 この記事は「CBnews」とのタイアップ企画です。

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成果を示し、活躍するチャンス

「お薬、しっかり飲めていますか。体調はどうですか」。
メディカルシステムネットワークグループの(株)トータル・メディカルサービス(TMS)が運営する「さくら薬局新宮中央駅前店」(福岡県新宮町)では、投薬後の服薬に注意が必要だと判断した患者さんに、薬剤師が電話でフォローアップを行っています。

こうした取り組みを始めたのは2019年4月ごろのことです。当初の対象は、血液凝固阻止剤などのハイリスク薬を服用する患者さんでした。薬剤師の知識やキャリアの差によって対応がばらつくのを防ぐため、どのような疾患の患者さんに何を確認するかプロトコルを細かく定め、記録したフォローアップの内容はTMSの店舗で共有してきました。

新宮中央駅前店の薬局長で、TMSの教育担当を務める廣瀬隆さんは、「薬局は制度を後追いしがちですが、患者さんのQOL(生活の質)を高めるための取り組みなら、報酬を算定できるかどうかではなく進めたい」と話します。

それから1年半ほどが経ち、薬剤師の仕事が大きな転換点を迎えています。改正薬機法が2020年9月1日に一部施行し、薬学的な知見に基づくフォローアップを、投薬時だけでなく服用期間を通じて、必要に応じて行うことが薬剤師の義務として明確化されたためです。

全国の薬局が対応を求められるだけに戸惑いも広がっていますが、廣瀬さんは「薬剤師の職能への理解を促し仕事の成果を世間に示し、活躍するチャンス」だと前向きに捉えています。

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きっかけは「患者メリットの乏しさ」

2019年11月に成立した改正薬機法は、薬剤師や薬局の業務の見直しが柱の一つで、服薬期間中のフォローアップが義務化されたのもその一環です。患者さんの服薬を、調剤後も含めて薬剤師が一元管理し、多剤・重複投薬の防止や残薬解消などにつなげるのが狙いです。厚生労働省は、それによって医療費適正化などの効果も見込んでいます。

今回の見直しは、「医薬分業」に対する問題意識の高まりがきっかけでした。医師と薬剤師の専門性を生かしながら役割分担を進めることで医療の質向上につなげようと、国は1970年代から医薬分業を後押ししてきました。日本薬剤師会によると、分業の進行度合いを示す「処方箋受取率」は、2019年度には74.9%を占め、2009年度の60.7%から10年間で10ポイント超上昇しています。

しかし、「医薬分業によって医薬品を薬局で受け取ると患者の医療費負担は増えるのに、それに見合うだけのメリットを実感できない」という指摘が政府内などから上がり、患者さんにとっての利便性の向上策を検討することになりました。改正案の骨格を固めた厚生科学審議会(厚生労働相の諮問機関)の医薬品医療機器制度部会の会合で、厚生労働省は、従来の対物から対人中心に薬剤師の業務をシフトさせる考えを示しました。

服薬期間中のフォローアップはそのための具体策の一つという位置付けで、2020年9月1日に施行しました。患者さんを適切にフォローアップするため、薬剤師は服薬の状況や体調の変化、検査値などの「患者情報」を継続的に把握しなくてはなりません。さらに、服薬指導や情報提供を行った年月日、患者さんの氏名や年齢、指導や情報提供のポイントなどを記録し、記入日から3年間保存することとされました。

ただ、フォローアップは全ての患者さんに一律で行うわけではありません。どのような患者さんにフォローアップを行うべきか、国は具体的な基準を示さず、「薬剤師の薬学的知見」に判断を委ねました。

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対象の選定は薬剤師の判断に

服薬期間中のフォローアップが施行された9月1日以降、さくら薬局新宮中央駅前店では毎日1件ほどのペースでフォローアップの電話を掛け、服薬情報提供書を必要に応じて処方元に出しています。特に、1-2年目など若い世代の対応が円滑だと廣瀬さんは感じています。

フォローアップの電話を掛けた患者さんからの反応はこれまで軒並み好意的で、クレームなどはありません。何らかの課題を見つけ、処方変更の提案につなげるなど患者さんのQOLの向上につながった好事例は、引き続き共有しています。廣瀬さんは、それによって薬局全体のスキルアップにつなげたい考えです。

ただ、どのような患者さんを対象にするか、細かい基準や指針は当面は作らず、薬剤師の判断に任せることにしました。

ハイリスク薬の服用、認知症、コンプライアンス不良がある患者さんなどには投薬後の介入が必要だと廣瀬さんは考えています。しかし、同じ薬剤を服用していても年齢や既往歴、生活習慣といった患者さんごとの背景によってリスクは異なります。そのため、疾患や調剤した薬剤の種類などで対象を決め、一律な対応を取ると、フォローアップが必要な患者さんをむしろ見逃しかねません。

一方で、グループ薬局の中には常勤の薬剤師が1人のみの店もあり、特定の疾患や薬剤でフォローアップの対象を幅広く定めると、そうした薬局ではカバーし切れない可能性もあります。

薬剤師に判断を委ねられた以上は、自分が薬を出した患者さんのQOLに責任を担わなくてはならないと、廣瀬さんは感じています。フォローアップが義務付けられたからとやみくもに電話を掛けているとかえって評判を落としかねません。有効なフォローアップを行うには自己研鑽が不可欠です。本来の対人業務に薬剤師が専念するため、事務スタッフへのタスクシフト(業務移管)も課題です。

ただ廣瀬さんは、そういう時代の到来をむしろ歓迎しています。「いつも来られる患者さんの背景は薬剤師もよく理解しています。医師が決めた薬を出すだけよりも、そちらの方が断然楽しいし、やりがいがある」。

廣瀬さん自身は以前、向精神薬を服用する患者さんの経過が気になり、後日状況を確認したことがあります。すると、症状が安定しないことが分かり、処方医にすぐ連絡しました。医師の指示で用量が変更され、その結果、患者さんの容態も安定しました。

「電話してよかった」と廣瀬さん。「病院に電話を掛けて医師に取り次いでもらうことは、患者さんやご家族にとってハードルが高いでしょう。患者さんと医師の架け橋になることも薬剤師の仕事です」。

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フォローアップの有用性を立証へ

服薬期間中のフォローアップは、患者さんにどのようなメリットをもたらすのか。それを明らかにするための研究を行いました。

この研究は廣瀬さんの発案で、さくら薬局の24店が参加し、2020年1月5日から6月5日にかけて行いました。対象にしたのは、2型糖尿病の18歳以上の患者さんのうち、▽2種類以上の経口治療薬を3カ月以上服用▽研究への参加に口頭で同意▽同意時の処方日数が28日以上-に該当する計84人です。そのうち42人を「介入群」、残りを「非介入群」とし、介入群に対してのみ3カ月間に計5回ずつ電話でフォローアップしました。

フォローアップしたのは、「低血糖など副作用の有無」「発熱があるなど調子が悪いシックデイの対応」「服薬アドヒアランスの状況」など計6項目(表)。HbA1cの値やアドヒアランスの状況、残薬とそれらの金額などに、介入群と非介入群とでどれだけ差が生じるかを解析します。

解析結果は早ければ10月中にも出そろう見通しで、TMSではフォローアップの底上げに役立てる方針です。

この研究を廣瀬さんが提案したのは、薬剤師の業務の成果を見える化し、患者さんのQOLの改善につなげる狙いでした。「薬剤師によるフォローアップの有効性は海外では広く知られていますが、日本からは文献が出ていない。薬剤師の社会的地位を高められるかは私たち薬剤師次第です」。

薬のプロフェッショナルとしてどこまで成果を示せるか。薬剤師の挑戦が始まりました。

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