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医療保険の「オンライン資格確認」が2021年3月からスタート

マイナンバーカードを使ったオンライン資格確認が2021年3月からスタートします。これは医療機関や薬局で働く人たちの業務負担の軽減を見込める施策です。従来の健康保険証に加え、政府が「2023年3月末にほとんどの住民がカードを保有する」という目標を公表し、その普及率の増加に務めるマイナンバーカードを活用します。また、同年10月からは過去の薬剤情報の閲覧もスタートする予定です。オンライン資格確認を導入するメリットや、3月の制度開始にむけて今から準備すべきことをまとめました。

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オンライン資格確認とは

オンライン資格確認とは、健康保険証やマイナンバーカードを提示してもらうことで、患者さんの最新の保険資格をその場で自動的に確認・取得できる仕組みです。薬局や医療機関、支払基金などの保険者をネットワークで結ぶことで、オンラインシステム上で保険資格を始めとするさまざまな患者情報の確認、閲覧ができるようになります。

2021年3月のシステム開始直後は、保険資格の確認からスタートします。その後、同年10月からは過去3年間にさかのぼり、患者さん本人の同意を得てレセプト情報を基にした患者さんの薬剤情報も閲覧できるようになります。このほか病院や診療所では特定健診情報の閲覧も可能となります。オンライン資格確認を開始するまでの手続きや導入準備のスケジュールについては次の表をご確認ください。

厚生労働省・社会保険診療報酬支払基金が2020年7月に医療機関・薬局向け専用ポータルサイトを開設しており、そのポータルサイトで顔認証付きカードリーダーの申込、オンライン資格確認等システムの利用申請及び医療情報化支援基金の補助申請の受付を行うことができます。

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事務作業を大きく軽減 返戻による未収金も防止

オンライン資格確認のメリットは、大きく次のようなものがあります。

  1. ・保険証の入力作業など事務負担を軽減
  2. ・資格過誤による返戻の防止
  3. ・過去の薬剤情報を確認することによる医療安全の向上
  4. ・災害時の患者情報の確認

1つずつみていきたいと思います。

保険証の入力作業など事務負担の軽減

これまでは患者さんが来局すると、新患や保険資格の変更がある方は受付で保険証を確認し、記号番号などを入力する作業が必要でした。オンライン資格確認を導入すると、例えばマイナンバーカードを利用するケースなら、マイナンバーカードを顔認証付きカードリーダーにかざすだけでICチップから最新の保険資格の確認ができるため、入力の際の手間やミスが大幅に削減できます。保険証の場合は最低限の情報を入力することが必要ですが、保険資格が有効な場合は保険資格情報を取得することが可能です。

資格過誤による返戻の防止

オンライン資格確認を導入すれば、最新の保険資格をその場で確認できます。そのため保険資格の喪失などによる返戻は削減されます。これまでは保険資格が有効でない場合、患者さんに保険資格を確認した上で再請求が必要でしたが、こうした事務作業が大きく軽減されます。また、保険資格が確認できないために再申請ができず、未収金となってしまうリスクも大幅に減ることが期待できます。

過去の薬剤情報を確認することで、医療安全の向上

患者さん本人の同意を得てレセプト情報を基にした患者さんの過去3年間分の薬剤情報を閲覧できるようになります。過去の薬剤情報を参考にしながら調剤、服薬指導ができるため、薬物療法の安全性向上、質の向上に大きく役立てることができます。

災害時の患者情報の確認

オンライン資格確認を導入している薬局は、災害時に特例として、マイナンバーカードがなくても患者情報を閲覧することが可能です。災害時は保険証やお薬手帳などがないと、患者さんの服用薬を正確に把握することが難しいです。こうした時にもオンライン資格確認を導入している薬局であれば、患者さんに適切な薬を調剤することができるのです。

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顔認証付きカードリーダーは無償提供

マイナンバーカードを使った実際の受付の流れは次の通りです。

  1. 1. 患者さんが来局し、患者自身でマイナンバーカードを顔認証付きカードリーダーにかざす
  2. 2. 顔認証または4桁の暗証番号のどちらかを利用して認証を行う
  3. 3. (2021年10月以降)薬剤情報を薬剤師が閲覧することに対する同意の選択

マイナンバーカードは患者自身が顔認証付きカードリーダーにかざすため、受付で預かる必要はありません。また顔認証も非常に高精度であり、暗証番号忘れによる混乱は少ないと厚生労働省では説明しています。

オンライン資格確認を行うには顔認証付きカードリーダーか保険証が必要です。顔認証付きカードリーダーは各薬局に1台まで無償提供されます。

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1つの薬局あたり最大で32.1万円の補助金も

また、設備を導入するための費用も一部、補助金が活用できます。補助金の金額は薬局の規模によって2パターンあり、大型チェーン薬局(グループで処方せんの受付が月4万回以上の薬局)の場合は21.4万円を上限、その他の薬局(大型チェーン薬局以外)の場合は32.1万円を上限に補助金が申請できます。

補助の対象となるのは、主に次の項目となります。

  1. ・マイナンバーカード読み取り、資格確認のためのソフトウェアや機器の導入
  2. ・ネットワーク環境の整備
  3. ・レセプトコンピュータなど既存のシステム改修

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まずはポータルサイトでアカウント取得を

顔認証付きカードリーダーの無償提供やオンライン資格確認利用申請、補助金申請などはいずれも厚生労働省のオンライン資格確認ポータルサイトに登録することで利用できます。すでに顔認証付きカードリーダーの無償提供の申し込みは始まっていて、今後、オンライン資格確認の利用申請や補助金申請も申し込みが始まる予定です。

厚生労働省では「導入を検討している人は、まずはポータルサイトでアカウントの取得を」と呼び掛けています。アカウントを取得するとオンライン資格確認に関する最新情報がメールで届きます。

オンライン資格確認は、薬局の事務負担を省力化し、返戻や未収金を防ぐなど大きなメリットがあります。また顔認証付きカードリーダーの無償提供や補助金など、各種の補助が手厚くなっていて、それだけ厚生労働省が力を入れている事業ともいえます。マイナンバーカードの交付状況は約2,500万枚に上り(2020年9月1日現在)、すでに国内の全人口の約2割を占めています。

総務省マイナンバーカード交付状況

政府は2019年2月にマイナンバーカードの普及やマイナンバーの活用に向けた組織を立ち上げており、今後さらなる普及増加が予想されます。2021年3月のスタート時にシステムが整っていなければ、患者さんがマイナンバーカードを持って来局した時に「うちでは保険証でしか対応できません」となってしまいます。医療機関や薬局で働く人たちの業務負担を軽減し、医療の充実をサポートするオンライン資格確認の導入をぜひ検討してみてはいかがでしょうか。

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※この記事は「CBnews」とのタイアップ企画です。

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