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薬局のバーコード活用、メリットと課題
調剤ミス激減、導入初期は混乱

医療用医薬品のバーコード表示の仕組みが2021年4月以降の出荷分から見直され、有効期限などの情報を含む国際標準の詳しい表示に原則統一されます。医薬品のトレーサビリティーを高め、回収などの業務に対応しやすくすることが狙いで、薬局や医療機関がそれを活用することで、調剤や棚卸しの際に取り違えを防ぐなど医療の質改善への期待も高まっています。ただ、バーコードシステムを導入する際に棚卸しの業務量が一時的に急増するなど、現場にとっての課題もあるようです。表示の統一まであと半年足らず。それによるメリットと課題を整理しました。 ※この記事は「CBnews」とのタイアップ企画です。

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「調剤過誤防止に有用性」、厚労省報告書

調剤の際にバーコードシステムを利用する薬局では、利用しない薬局に比べて調剤漏れや取り違えなどのミスが少ないことが、厚生労働省が2020年7月に公表した調査結果の報告書から分かりました。また、バーコードシステムを利用する薬局では利用しない薬局に比べ、医薬品の有効期限や数量を正確に確認できていることも分かり、この報告書では、医療安全や物品管理などの観点からシステムの有用性が認められたとしています。

厚生労働省が公表したのは、2019年度に委託で行った「医療現場におけるUDI利活用推進事業」の報告書で、薬局によるバーコードシステムの導入効果や導入の際の課題を把握するための実証調査を行いました。

この調査は、医療安全(調剤業務)、物品管理(棚卸業務)、トレーサビリティー(回収対応業務)の3つの観点から行い、医療安全面での導入効果を明らかにするための調査では、隣接する医療機関の診療科などが似ていて、同じ会社が運営する薬局2店ずつを選定。バーコードシステムを調剤に利用した薬局と利用しなかった薬局とでミスの発生割合などを比べました。

その結果、2019年4-9月の調剤業務でのミスの発生率は、バーコードシステムを利用した薬局(処方箋枚数は年間約2万枚)が0.00%だったのに対し、利用しない薬局(約6万枚)では0.02%でした。

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現場でのバーコード活用、国「十分ではない」

一方、物品管理に関する調査は薬剤師4人を対象に実施。「販売包装単位」の箱(任意の11種類の計79個)に表示してある有効期限を確認する際の正確性や所要時間を、バーコードシステムを利用した場合と手作業や目視で行った場合とで比較しました。

すると、バーコードシステムを利用した場合には有効期限切れの薬剤を4人とも全て発見できました。これに対し、利用しない場合に全てを発見できたのは1人のみ。残り3人の「発見率(正解率)」は、1人が98.7%、2人は97.5%でした(表1)。

一方、有効期限を確認するまでの時間は、バーコードシステムを利用した方が4人とも長くなりました(表2)。報告書では、「バーコード利用時にはバーコードリーダーを操作する時間が多くかかっていることが考えられる」と理由を分析しています。また、バーコードリーダーの導入直後は一時的に効率が落ちることが一般的に指摘されており、今回の実験結果にそうした要因が反映されている可能性も指摘しました。

厚生労働省は2006年、「医療用医薬品へのバーコード表示の実施要項」を通知しました。医薬品のトレーサビリティーを確保することで、医療事故の防止や医療現場の業務の効率化につなげるのが狙いです。バーコード表示を普及させるため、官民連携による取り組みがそれ以降、進められてきましたが、同省は、医療現場での利活用は「十分ではない」としています。

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22年12月以降は薬機法で規制へ

厚生労働省のバーコード表示の実施要項では、医療用医薬品の種類と包装形態ごとにどこまでの情報を含むコードを表示するのかを整理し、それに基づくコード表示が原則として2008年9月にスタートしました。相次ぐ医療事故を未然に防ぐため、国が2002年にまとめた「医療安全推進総合対策」の中に、製品のバーコードチェックを普及させるためにコード表示の標準化を検討すべきだという提言が盛り込まれたのがきっかけです。

実施要項での医薬品の分類は、輸血用血液などの特定生物由来製品、ワクチンやインスリンなどの生物由来製品のほか、内用薬、注射薬、外用薬の5種類。また包装形態は、錠剤のPTPシートなど医薬品を包装する最小単位の「調剤包装単位」、PTPシート100枚入りの箱などの「販売包装単位」、販売包装10箱入りの段ボールなどの「元梱包装単位」の3通りで、特定生物由来製品では、包装のタイプによらず有効期限や製造番号(製造記号)などの詳しい情報を含むコード表示を求めました。

実施要項はこれまでに何度か見直されました。原則として2015年7月以降は「GS1」(またはコード128)と呼ばれる国際標準のコード表示に統一され、それまで任意で併記していた日本標準の表示は廃止されました。さらに2016年8月の改正では、それまで「任意表示」が認められていた販売包装単位の注射薬などでも、有効期限や製造番号など詳しい情報を含むコード表示が義務付けられ、原則2021年4月以降に出荷されるものにこのルールが適用されます(図)。

そうしたルールは2019年12月に公布された改正医薬品医療機器等法に引き継がれ、2022年12月以降は同法による規制に「格上げ」されます。それと並行して国は、薬局など医療現場によるバーコードの活用を推進する方針です。例えば、回収が必要になった医薬品が店内の在庫に無いかを薬局や医療機関が確認したり、医薬品を調製・調剤する際の取り違えを防いだりすることを想定しています。

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規格違いなど調剤ミスが激減

「医療現場におけるUDI利活用推進事業」の一環で、厚生労働省は、薬局によるバーコードの利活用の事例集も公表しました。この中では、医療安全の推進や業務の効率化などにバーコードを役立てている薬局6店の取り組みを紹介しています。

それによると、ウエルシア薬局千代田御茶ノ水店(薬剤師1人、2018年度の処方箋受付4,517枚)では、調剤時に薬剤を取り揃えたり補充したりする場面でバーコードを活用しています。同店では、調剤システムに処方箋の情報を登録すると、調剤する薬剤の情報がハンディ端末に送信される仕組みを整備しました。調剤の担当者は、端末に表示される棚番号を確認しながらその薬剤を探します。取り揃えようとする薬剤の箱やシートのバーコードを読み取り、薬剤を間違えていたらアラートが出るため、ミスを防止できているということです。

また、(株)ツルハホールディングスのメディモテイネ調剤薬局(札幌市手稲区、薬剤師4人、2018年度の処方箋受付1万430枚)では、薬剤の取り揃えや補充だけでなく、棚卸しの場面でもバーコードを活用しています。棚卸しの際に薬剤の箱のバーコードをハンディ端末で読み取ると、レセプトコンピューター(レセコン)に薬剤の種類が自動的に反映されるため入力の手間やミスを減らせているということです。

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導入当初は戸惑い、長期的にはメリット

(株)メディカルシステムネットワーク(以下、メディシス)でも、バーコードシステムを2011年から順次導入してきました。調剤の際に規格を間違えたり、医薬品を取り違えたりする事故を防ぐため、機械化による防止策の推進が第二次中期経営計画(2010年9月-2012年9月期)に盛り込まれたのがきっかけです。調剤時の取り違えが激減するなど、それによって医療安全の面で効果が表れています。

ただ、バーコードシステムの導入に際し、課題も見えています。システムの導入によって薬剤の有効期限も管理できるようになりましたが、それには全てのバーコードをスキャンしなくてはなりません。そのため、導入当初は棚卸業務の時間が急増するなど混乱するケースもありました。

また、薬剤コードの不一致などのエラーを解消するため、システムの改修も迫られました。エラーが発生するのはレセコンとバーコードシステムのメーカーが異なるためで、システムを使いやすくするまでに、薬局によっては数度にわたり改修したケースもあります。これは、システムの導入を拡大するたびに現場の要望を聞き取り、対応を重ねたためです。

バーコードシステムの活用が軌道に乗った現在では棚卸業務の時間は大幅に短縮され、グループ全体でのコスト削減につながりました。新たなシステムを導入する際には、このほかマニュアルの整備なども必要です。一時的な業務量の急増はそのためですが、長期的にはシステム導入のメリットの方が大きいとメディシスでは受け止めています。

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