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医薬品流通

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流通改善ガイドラインの意義

「医薬品流通関係者が遵守すべき流通改善に関する指針(流通改善ガイドライン)」は、なかなか進展しない流通改善の取り組みを、国が主導することで加速させることを目的とする制度です。長年の課題となっている総価契約の見直しや、常態化する一次売差マイナスの改善とともに、薬局と医薬品卸売会社(以下、卸)との間で長期にわたり仕切価格が決まらない未妥結減算を防ぐことが求められています。多くの保険薬局には、毎年11月末までに妥結率などの報告をする義務がありますが、そもそも、なぜ妥結率を厚生局へ報告しなければならなくなったのでしょうか。期間終了が近づいてくると卸との価格交渉に多くの時間をとられてしまうことに悩む薬局経営者もいるでしょう。しかし、その業務には大切な意義があるのです。

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流通改善ガイドラインが導入された背景

「未妥結減算制度」は200床以上の病院と保険薬局が、以下の①〜③に係る状況を毎年厚生局へ報告し、妥結率が50%以下の場合は初診料、再診料、外来診療料、調剤基本料が引き下げられるという制度です。

  1. ① 妥結率
  2. ② 単品単価契約
  3. ③ 一律値引き契約

薬局にとっては妥結率が低いと調剤基本料の引き下げを課されてしまうこの仕組みですが、なぜ卸と薬局の間で未妥結の暫定価格で取引を行うことが問題になるのでしょうか。それは、薬価調査の信頼性に影響を及ぼすおそれがあるためです。たとえば、薬局が暫定価格で納品した後に卸と価格交渉した結果、半年後に値引きした価格で妥結したとします。もし未妥結の暫定価格が薬価調査に用いられたら薬価が過大に評価されることになり、調査の信頼性を損なうことになります。これが問題なのです。ひいては薬を実際に使う患者さんの経済的負担にもつながるでしょう。

このように医療用医薬品の流通の現場には未妥結・仮納入のほかにも安定的な医薬品供給を確保するためにクリアしなければならないさまざまな課題が以前より指摘されてきました。

こうした状況を受けて、医療用医薬品の流通における問題を解決する目的で作られたのが「医療用医薬品の流通改善に向けて流通関係者が遵守すべきガイドライン」こと「流通改善ガイドライン」です。

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医薬品の安定供給実現のために求められる3つの課題

流通改善ガイドラインが策定されるまでの間には、「医療用医薬品の流通改善に関する懇談会(流改懇)」における提言に沿ってさまざまな取り組みがなされてきました。そのひとつが2007年に流改懇において取りまとめられた「医療用医薬品の流通改善について(緊急提言)」です。

緊急提言では医薬品の流通に関わる関係者に対して、次に示す3つの課題の改善に取り組むよう要請されました。

1、長期にわたる未妥結・仮納入の改善

長期にわたる未妥結・仮納入は薬価調査の信頼性を揺るがすおそれがあります。そのため緊急提言では、次の2つを考慮した上で、早期妥結に向けて価格交渉の取引を行うことを求めています。

・医療用医薬品が患者さんに届くまでには長い開発期間や膨大な開発費用が費やされていること

・市場においては価値と価格が反映された取引が行われることによって新たな医薬品開発の原資に充てられるという循環的サイクルで成り立っていること

なお、薬価調査の信頼性の観点から長期にわたる未妥結・仮納入を「原則として6ヶ月を超える場合」と示しています。

2、総価契約を見直して単品単価契約を推進すること

1品目ごとに価格交渉を行うために事務的な手間とコストがかかる単品単価契約に比べ、それがないために総価契約にメリットを感じる薬局経営者もいることでしょう。しかし、医薬品は人の命や健康に関わる生命関連商品であり、その価値と価格を考慮した上で採否を決定することが望ましいということを忘れてはいけません。品目ごとの価格が明示されない取り引きは、薬価調査の信頼性を損なうことに繋がります。そのため、可能な限り医薬品ひとつひとつの価値を踏まえた価格の決定・契約を推し進めていくことが求められています。

3、一時売差マイナスの改善

一次売差とは、製薬会社に払う金額である仕切り価格と、薬局や医療機関に販売する納入価格の差額のことを言い、卸の利益となる金額のことを指します。現状では多くの場合、メーカーによる仕切価格が納入価格を上回っており、一次売差がマイナスとなることが常態化しています。

これを解消するために、緊急提言ではメーカーに対して納入価格の水準を踏まえた適切な仕切価格の設定を求めています。さらにメーカーから卸に支払われるリベート(取引量や仕入代金の支払条件などによって支払われるもの)とアローワンス(販売促進にかかる報奨金のこと)は、仕切価格に反映するよう求めています。

医療用医薬品の流通を取り巻くさまざまな課題は、この緊急提言によって一定程度の改善がみられましたが、さらに改善する必要がありました。

そこで、2010年に新薬価制度(新薬創出・適応外薬解消等促進加算制度)2014年には未妥結減算制度が導入され、翌年2015年には「医療用医薬品の流通改善の促進について(提言)」、さらに2018年には「医療用医薬品の流通改善に向けて流通関係者が遵守すべきガイドライン(流通改善ガイドライン)」が運用されることになりました。

流通改善ガイドラインの注目すべき点は、これまではメーカー、卸、医療機関、保険薬局という流通当事者間の取り組みとして進められてきた流通改善を国が主導し、流通関係者に対して遵守を求めている点です。流通改善推進のための主な課題として挙げられたのは、これまでの提言で要請されてきた上記の3つです。これらの課題をこれまで以上に重く受け止め、取り組む必要があると言えるでしょう。

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流通改善ガイドラインを守る上で薬局に課せられたハードルとは

厚生労働省医政局長と保険局長の連名で通知された流通改善ガイドラインでは、薬局が卸との間で留意すべき事項として①早期妥結と単品単価契約の推進、②頻繁な価格交渉の改善、③医薬品価値を無視した過大な値引き交渉の見直しが求められています。具体的にどう取り組み、また、交渉が難航するなどして是正を図るのが難しい場合には、どう対処すればよいのか頭を悩ませている薬局経営者がいるのではないでしょうか。流通改善ガイドラインの遵守にあたり困ったことがあるときは、厚生労働省が用意する質問応答集が参考になります。このウェブサイトにはこれまでに寄せられた相談内容が公表されているので、同様の相談事例を参照することができます。

具体的にどのような相談が寄せられているのか、薬局経営者が流通改善ガイドラインの遵守にあたり直面しそうないくつかの疑問と回答についてみてみましょう。

Q:流通改善ガイドライン中「医薬品の価値を無視した過大な値引き交渉」とは、具体的にどういうものをいいますか。


A:ガイドラインにも記載のとおりですが、例えば、価格交渉に関与するコンサルタント業者の一部が行っているような未妥結・仮納入を助長しかねない全国一律のベンチマークを用いた値引き交渉は、医薬品の安定供給を阻害するものと考えられます。

※出典:厚生労働省 「医療用医薬品の流通改善に向けて流通関係者が遵守すべきガイドライン」に関する質疑応答集(Q&A)について p.4より抜粋

さらに流通改善ガイドラインでは、医療機関や保険薬局に対して「医薬品の安定供給や卸売業者の経営に影響を及ぼすような流通コストを全く考慮しない値引き交渉を慎むこと」を求めています。急配や返品にかかる手間など、卸が医薬品を流通させるためにはさまざまなコストがかかります。こうした流通コストを踏まえたうえで、適正価格を提示することがこれからの薬局の役割と言えます。

Q:単品単価契約を進めるための取り組みを教えてください。


A:個々の医薬品の単価が掲載された覚書による契約が効果的です。併せて、年間契約などより長期の契約を結ぶことも、効果的だと考えられます。未妥結減算制度の報告対象期間である4月~9月の間のみ単品単価契約を締結し、それ以降に総価契約を締結することは、未妥結減算制度の趣旨に反しており、また、その交渉が煩雑化し医薬品の安定供給にも支障を来しうるため、望ましくありません。

※出典:厚生労働省 「医療用医薬品の流通改善に向けて流通関係者が遵守すべきガイドライン」に関する質疑応答集(Q&A)について p.4より抜粋

さらに流通改善ガイドラインでは「価格交渉の段階から個々の医薬品の価値を踏まえた交渉を進めること」を求めています。これを実現するために薬局は、ひとつひとつの医薬品の単価を確認する作業が発生します。薬局は多大な作業コストを抱えることになります。その解決策として、卸との取引を代行してくれるサービスが注目されています。

相談窓口に寄せられた事例を調べても対処法が不明な場合や問題が解決できない場合には相談窓口を通して相談でき、その後も改善がみられない事案に対してはヒアリング、指導、流改懇への報告などの措置がとられます。

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医療用医薬品の流通改善のために

薬局経営者にとって、取り扱うすべての医薬品について毎年単品単価契約を行うなどの流通改善ガイドラインの遵守を推進することは、業務上の負担となっているかもしれませんが、地域に暮らす患者さんに対して適正な価値の医薬品を提供し続けるためには重要な役割と言えます。

2016年末に打ち出された「薬価制度の抜本改革に向けた基本方針」では、保険収載後のさまざまな状況変化に対応できるよう薬価制度を見直すことがきまりました。中でも大きく見直されたのは、毎年の薬価調査と薬価改定です。一方で、これにより懸念されるのは、医療機関が薬価関連の事務処理に追われ、膨大な時間やコストを費やす可能性が増えることです。そのため、流通改善への取り組みも後退しかねません。そうした価格交渉の負担が重くのしかかる薬局をはじめとした医療機関にとっては、全国約60社の卸と連携して取り扱うすべての医薬品の単品単価を決定し、どの卸に注文しても同じ価格で購入することができる「医薬品ネットワーク」などのサービスもあります。

「医薬品ネットワーク」を運営するメディカルシステムネットワークは、流通改善8項目(EOS発注率の改善、返品率の改善、急配率の改善、納品回数の削減、発注時刻の適正化、納品時刻の適正化、発注行数の削減、配送方法の適正化)を挙げています。薬局と卸と協力して流通コスト削減に努める働きかけをすることで、安定した単品単価契約を可能にしています。患者さんに安心して適切な価格の医療を受け続けていただくためにも、こうしたサービスをうまく活用しながら流通改善を推進することが求められています。

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