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地域医療

もっと話したいのに…連携したい薬局は少数派
訪問看護師「コミュニケーション力を高め、地域に」

なの花訪問看護ステーション仙台 藤本 亘史 所長
(株)ひまわり看護ステーション 富山 浩太郎 社長さん

地域の医療提供施設と情報連携できるなど、特定の機能を整備済みの薬局を認定する制度が2021年8月に施行されるなど、薬局にとっては、地域の多職種の信頼をいかに勝ち取るかが一層大切な課題になります。訪問看護師が連携したいのはどんな薬局なのか-。メディカルシステムネットワーク(メディシス)グループの(株)ひまわり看護ステーションが運営する「なの花訪問看護ステーション仙台」(同市青葉区)の藤本亘史(ふじもと・こうじ)所長と、同社の富山浩太郎(とみやま・こうたろう)社長に聞きました。

薬を届けるだけの薬剤師

なの花訪問看護ステーションの概要を教えてください。

  • 藤本所長:
  • 1カ月の訪問件数は400件程度で医療が全体の6-7割を占めています。末期がんの患者さんが多いのが特徴です。

地域の薬剤師とはどのように連携していますか。

  • 藤本所長:
  • 今は、医師が指定する薬剤師や薬局とチームを組むケースがほとんどで、ほぼ全てがメディシスのグループ外の薬局です。

在宅など地域医療に参入する薬局は増えていると感じますか。

  • 藤本所長:
  • 増えていますが、中には患者さんに薬を届けるだけの薬局もあります。

薬局によって連携しやすさに差はありますか。

  • 藤本所長:
  • あります。困るのは、処方変更などの情報が私たちに届かないことです。薬局には、訪問看護ステーションに情報を提供する義務はありませんが、患者さんと最も濃密に接して、薬の副作用がないかをチェックするのは看護師です。どの薬が変更されたのか、薬局から情報が届かないなら医師に確認しますが、多忙だとすぐには情報をもらえません。結局、患者さんをお待たせしてしまう。

連携しにくいと感じるのは、ほかにどのような薬局ですか。

  • 藤本所長:
  • つい最近、内服が難しい末期がんの患者さんに注射が必要になったので医師が指定する薬局に電話をすると、「在庫がなく取り寄せている」とのことでした。仕方なく、ほかの方法で痛みを和らげようと試していると、その後に薬を届けにきた薬剤師の最初の一言が、「お変わりないですか」でした。薬がなくて患者さんが苦しみ、それを和らげるために私たちが四苦八苦しているのに。「この人には何も頼めない」と感じました。
  •  
  • さらに、次の言葉が「空アンプルはいつ取りにくればいいですか」です。患者さんを前にそんなことを尋ねる状況ではありません。自分たちの業務のことばかりで患者さんや周囲のことが見えないのでしょう。そのことを医師に報告すると、「そうは言っても在宅医療に動いてくれる薬局は少ない。今回は目をつぶろう」と言われました。
  •  
  • 別の患者さんが亡くなった時にもがっかりさせられました。その方の場合は医療用麻薬をご自宅の金庫で管理していたので、「後ほど薬剤師が回収します」とご家族にお伝えし、金庫のカギをお渡ししました。すると、それから1カ月後に薬局から私たちに電話があり、「金庫のカギはどこか」と聞かれました。大切な医療用麻薬を管理する金庫のカギの保管場所すら確認せず、1カ月間放置していたわけです。

点ではなく「線の情報」を捉える

  • 富山社長:
  • 薬局薬剤師が失敗していると感じるのは、「点の情報」で患者さんに接して、現場を混乱させてしまうような場面です。同じ薬でも、患者さんの状態によって使い方を調整するなど、保険適用の範囲の中で医師が臨機応変に方針を立てることがあります。それなのに、関わりの少ない薬剤師が「通常とは異なる」などと話して患者さんやご家族を不安にさせ、多職種への信頼まで損ねてしまう。それが正しいとしても、医薬品の柔軟な使い方をする背景には理由があるはずで、そういう「線の情報」も把握しないと失敗します。

  • 藤本所長:
  • そういう場面では、私たちに理由を確認してくれるとありがたい。それが連携のきっかけになることもあるでしょう。患者さんやご家族に疑問を投げ掛けるなら、「先生はどうおっしゃっていますか」という尋ね方をすればコミュニケーションを深めるチャンスだと思います。

逆に、連携しやすいのはどのような薬局ですか。

  • 藤本所長:
  • 薬のことだけでなく、病気に対する認識や家族構成など患者さんの背景の情報まで把握し、提供してくれる薬剤師です。処方された薬をなぜ飲まないのか、今はどんな心理状態なのかを教えてくれるとありがたい。そこまでしてくれる薬剤師もいますが、経験値が高いひと握りにすぎず、医師からの指名が集中して、薬局が業務過多になっています。地域で選ばれるのはそういう薬剤師がいる薬局だということでしょう。

薬局薬剤師が苦戦するのはなぜでしょうか。

  • 富山社長:
  • メディシスのグループに限らず、薬局薬剤師という医療職種は人に接することを忘れてしまったのではないか? と強く感じます。医療者は、専門知識を発揮するために患者さんの生活状況などを把握するコミュニケーションに努めます。医師も看護師もホームヘルパーもそうです。
  • しかし、薬局薬剤師は副作用を回避するため医師に疑義照会をし、医薬品を間違えずに調剤しさえすれば患者さんと積極的にコミュニケーションを取らなくても報酬を算定できてしまいます。スキルの問題などではなく、薬局薬剤師の役割が対物中心に制度で位置付けられてしまった。業務を早く回すことが最優先で、患者さんからの相談に時間をかけて応えることは「悪」だとする風潮を感じることさえあります。それが数十年続き、専門的な知識を発揮するためのコミュニケーションをどう行えばいいか分からないのかもしれません。

「気軽な関係づくり」が第一歩

藤本所長は、病院で勤務している時代に薬剤師と連携することはありましたか。

  • 藤本所長:
  • 外部の薬剤師と連携する場面はありませんでしたが、緩和ケアチームで働いていたので病院薬剤師との連携は必須でした。彼らは抗がん剤や医療用麻薬に精通し、高い専門性を発揮しています。
  • 富山社長:
  • 薬局薬剤師と決定的に異なるのは、病院薬剤師は、自分が調剤した薬がどれだけ効いていて、副作用がないかどうかやしっかり服用できているかをすぐ把握できることです。それに対して薬局薬剤師が患者さんを訪問するのは、調剤報酬との兼ね合いを考えると多くて週1回ほどなので、患者さんの情報が不足しているのでしょう。

地域の薬局が在宅の患者さんをフォローするには、だからこそ多職種との情報共有が問われそうです。円滑な情報連携には何が必要でしょうか。

  • 藤本所長:
  • 気軽に相談できる関係をつくることが第一歩でしょう。例えば、患者さんの状況を私たちが医師に報告する前に、薬剤師から情報を聞きたい場面で薬局に電話をすると、「忙しくて手を離せない」と言われることがよくあります。こちらも時間的な余裕がないので結局、不十分な報告をするしかない。気軽に相談できる関係が出来上がっていたり、多職種からの相談対応に特化した薬剤師が薬局にいたりすれば、そうしたことは避けられるでしょう。
  • 在宅医療に参入するにはコミュニケーション能力も必要です。あいさつなど通常のコミュニケーションはもちろん、さらに大切なのは、患者さんの状況を把握するためのコミュニケーション能力です。それを身に付けて、患者さんの治療方針について地域の多職種と直接話す機会を増やせば医療連携が進むと思います。例えば退院カンファレンスに参加すれば病院薬剤師とも情報交換できるでしょう。
  • 富山社長:
  • ほかの職種に比べて人に接する時間が少ないからこそ、意識してもっと積極的にコミュニケーションを取るべきだと思います。自分たちの知識を発揮するため、患者さんのことを知りたいという気持ちを持つことがそれへの第一歩です。そうすれば、看護師やホームヘルパーに自分から連絡を入れるなど行動が自然に変わるでしょう。
  • 藤本所長:
  • 私たちはもっと話したいのに、薬局の薬剤師がなぜ現場に出てこないのか、不思議です。能力の差などではない何か構造的な理由があるのでしょう。そうであれば、それを乗り越えるために運営会社のバックアップが必要かもしれません。

「ふらつきに注意」小まめな情報提供を

薬局薬剤師にカバーしてもらいたいのはどのような役割ですか。

  • 藤本所長:
  • やはり薬に関することです。副作用を含む内服の説明や薬歴管理など、薬剤師としては一般的なことをカバーしてくれたら十分です。今は、看護師が患者さんに薬をお渡しし、残薬も整理していますが、そうした業務をカバーしてくれれば私たちは本来業務に集中できます。在宅医療でそれらをこなすのは、薬局での業務とかなり性質が異なるでしょう。これは看護師でも同じですが、障害を乗り越えて患者さんのニーズに応えると、自分たちの仕事がどれだけやりがいがあり、素晴らしいかが見えると思います。
  • 富山社長:
  • 薬局薬剤師が、少ない接点の中で患者さんから直接感謝される存在になるのは容易ではありません。ただ、「この人が必要」だと多職種に頼られる存在には必ずなれます。例えば小まめな情報提供です。処方が変更された時、「ふらつく可能性あり」などとちょっとした情報を電子メールやファクスで伝えれば、患者さんのニーズに応える一助になるはずです。薬剤師はそうした知識が豊富なので、これは今日からでもできることです。
  • 藤本所長:
  • まめに情報提供してくれるならぜひ連携したい。ただ、3日前の情報を提供されても対応できないのでタイミングも大切です。訪問看護ステーションは、薬剤師からまめに連絡があっても迷惑とは全く感じません。患者さんにとって大切な情報なら大歓迎です。
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医薬品流通

2020.07.21

医薬品卸売会社(以下、卸)は仕入れた価格よりも安い価格で薬局に医薬品を販売している——。
一見すると売れば売るだけ赤字になる、不可解な構造に思えますが、医薬品卸売業独特の商習慣であるリベート・アローワンスによって卸の利益が確保されています。

薬局にとっては、卸から購入する医薬品の価格をなるべく安く抑えることが利益の増加につながりますが、卸の立場を無視した価格交渉を行うと話し合いが難航し、かえって作業効率も悪くなります。まずは、卸の収益構造について学びましょう。

神奈川県横浜市の西部、内陸に位置する旭区。ベッドタウンとして発展してきたこのエリアに、「ふたば薬局」は3店舗を構えています。1988年の開業以来、30年以上にわたり地域に根ざした薬局経営を実践してきた向井秀人さん。開業当時の苦労話から患者さまとのエピソードまで、自身のこれまでの歩みを振り返ってくれました。自らも薬剤師として患者さまに向き合い続けてきた、その想いに迫ります。

医薬品流通

2020.07.15

医薬品を病院や調剤薬局に届けてくれる医薬品卸売会社(以下、卸)のことを、どのくらいご存じでしょうか? 全国には71社(2020年3月時点)の日本医薬品卸売業連合会(以下、卸連)加盟社があります。そのうち全国流通している4社は「4大卸」と呼ばれ、8割を越えるシェアを誇ります。再編や統合を経て巨大化し年商1兆円を超える4大卸は、「4メガ卸」の通称で呼ばれることもあります。今回は、医薬品の流通を支える4大卸を解説していきます。

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