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会社やエリアの垣根を超えて。
若手薬剤師合同研修を主催する狙いとは?
「薬局の存在を、次のフェーズへ」

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株式会社フォルマン

株式会社フォルマン

取締役・研修認定薬剤師秋山 真衣
研修認定薬剤師 小林 大介

栃木県佐野市を拠点に埼玉県や神奈川県で7店の薬局を経営する株式会社フォルマンは、2014年に代表の秋山太一さんが創業。妻の秋山真衣さんが薬剤師兼取締役として経営に携わっています。「For Human〜あなたの幸せのために私がいます」を企業理念とする同社は、従来の薬局の枠に囚われず新しいことを取り入れる柔軟さと、その実践に向けた若手薬剤師の育成に力を入れています。地域の人々の幸せのために同社が今取り組んでいることは何か、今後の展望や目標などを伺いました。

目次

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お2人のご経歴、現在の仕事内容についてお聞かせください。

  • 氏:
  • 秋山 氏:
  • 薬剤師になった後、大手薬剤師国家試験予備校に勤務しました。そこで講師として薬事関連法規や実務等を教え、その後、出身地である大阪で薬剤師国家試験予備校の設立に携わり、テキストや問題作成なども担当しました。産休・育休を経て、2014年、夫の出身地である栃木県で主人と一緒に薬局を開局。2022年春の時点で7店目の開局に至っています。各店それぞれにご縁をいただいた中で、代表である夫の意志もあり、立地や地域特性に合わせた異なるコンセプトを持つ店舗展開をしており、開業から1年1店舗ペースで増えています。
  • 氏:
  • 小林 氏:
  • 私は大学卒業後、大手の薬局に入社し、薬局薬剤師として勤務しました。当時の配属先は大学病院の門前だったこともあり、もっと地域に密着した店舗で働いてみたいという思いから、中小の薬局に転職、6年間ほど臨床の現場を経験しました。ですが30歳を目前にし、学生時代から抱いていた海外生活の夢が諦めきれず、ワーキングホリデーを利用しカナダへ渡航、そこで語学を習得し、その後はバックパッカーをしながらヨーロッパを1周して帰国しました。 帰国後は語学力が活かせる大手CRO(医薬品開発における治験サポート機関)に勤務し、副作用情報を取り扱う部署でプロジェクトリーダーなども経験しました。その後、住環境を地方都市に移す中でフォルマンと出会い、薬剤師兼若手薬剤師の研修講師を担当しています。

貴社が、若手薬剤師の研修に力を入れるのはなぜでしょうか?

  • 氏:
  • 秋山 氏:
  • 国家試験予備校の講師時代、私は資格合格までをサポートする仕事でしたが、薬剤師試験に合格すると必死に勉強した内容を忘れるほど“現場で学べ”と言われます。教えていた身としてはそこに違和感があり、自分が薬局経営者になったら、“国家試験と臨床がつながる”研修をしたいと構想を温めていました。 実際、6年制薬学部の新卒予定者で弊社を志望する学生さんの多くが、研修制度に魅力を感じて志望してくれました。彼らは学生時代の実習で現場の怖さや難しさを経験しており、社会に出て薬剤師として働くなら、しっかりとした研修を受けられる企業で働きたいと考えていることを実感しました。
  • 氏:
  • 小林 氏:
  • 私自身も、“国家試験と現場の架け橋になる”という秋山の考えに共感しており、その点を意識して研修に臨んでおります。先ほども申し上げた通りですが、私は大手薬局の門前から地域密着型の小規模店まで、さまざまな土地で臨床の現場を経験しておりますので疾患別の講義はもちろん、さらにCRO勤務で得た知見や医療英会話など、薬剤師のスキルアップや好奇心の枝葉を伸ばしていけるような講義を心がけております。

興味深い研修コンセプトと講義内容も独自性のあるものが多いですね。なかでも特徴的な研修プログラムはありますか?

  • 氏:
  • 秋山 氏:
  • 私も小林も臨床の現場を経験する中で、国家試験の大切さを身に染みて感じています。そこで、新人や若手薬剤師には「考える力」「調べる力」、2つの力に重点を置いて教育しています。現場に出てしまえば1年目の薬剤師も患者さんにとっては薬の専門家、つまりプロとしての即戦力を求められます。薬剤師は、患者さんに間違った情報をお伝えしてはいけない職業です。推測でいい加減なことを答えてもいけない。新人のうちは、分からないことが恥だと勘違いしてしまうので、「お調べしてもよろしいですか?」「お時間を頂戴できますか?」と正直に患者さんに言えるようになること、これが薬剤師という職業には重要であることを伝えています。調べ方も大事ですよね。こうした薬剤師としての姿勢や役割を最初のうちにしっかりと教育しています。 4月開催の新人研修では薬剤師と医療事務の合同研修もあり、最初の数日間は新社会人としての心構えやビジネスマナー、接遇といった基礎も教えています。おじぎの角度から教えますね。薬剤師には保険調剤に必要不可欠な調剤報酬のことや、医薬品名テスト、薬物動態などの薬学的知識、投薬RPGも行います。
  • 氏:
  • 小林 氏:
  • 秋山の投薬RPGは結構厳しいんですよ(笑)
  • 氏:
  • 秋山 氏:
  • そうなんです、私、意地悪な患者さんの役を徹底的に演じています(笑)。研修を受ける薬剤師たちには現場で即戦力になって欲しいですから、RPGで免疫を付けてから現場に出てもらいます。受講した薬剤師からは「店舗に出てみたら、優しい患者さんが多いですね」なんて言われます(笑) 他には、自分の関心事を他人に話して、学びのモチベーションアップを図る講義などもあります。例えば、筋トレに興味のある新人薬剤師が、そのことを人に話して意見交換するうちに栄養学にも興味が出て、糖尿病薬物療法認定薬剤師の資格を取得したいと目標を語るようになります。講義をきっかけに視野が広がり、目標達成に向けてさらに学ぼうとする。特徴的なプログラムの1つだと思います。
  • 氏:
  • 小林 氏:
  • 薬剤師として学び続けるモチベーションをどう維持させるか。生涯学習の楽しさを実感してもらえるようなカリキュラムを毎年計画しています。

独自の研修制度で若手育成に力を入れるフォルマンさんですが、「医薬品ネットワーク」加盟に至った経緯を教えていただけますか?

  • 氏:
  • 秋山 氏:
  • 医薬品の購入に関しては、開業当初から薬価差益を計算しながら自分たちで行ってきました。ただ、店舗数が増えていくと業務の煩雑さに加え、弊社代表が直接、医薬品卸会社(以下、卸)と価格交渉することが難しくなっていきました。特に県外店舗の交渉が難しくなり、共同購入を検討し始めた時に「医薬品ネットワーク」のことを知りました。 営業担当の方と話すうちに、メディカルシステムネットワークグループに研修受講シールを発行する「医薬総合研究所」があることをお聞きし、私自身はその点も魅力の一つと感じていました。しかし、代表が直接取引交渉している店舗は差益も出ていましたし、加盟を決めるまでは1年近く検討を重ねました。

「医薬品ネットワーク」を選択した理由は何ですか?

  • 氏:
  • 秋山 氏:
  • 数社から説明を受けましたが、「医薬品ネットワーク」には他の類似サービスとは異なる良さがあると感じました。価格交渉も卸に厳しい条件を押し付けるのではなく、卸の負担を減らしてその分価格を安くしたり、配送回数を減らすといった仕組みを実践しています。また、不動在庫をネットワークで売れる「デッドストックエクスチェンジサービス」もいいですね。互いの負担や無駄を減らすWin-Winの仕組みは、今の時代にマッチしていて共感できます。

「医薬品ネットワーク」に加盟して変わったことは?

  • 氏:
  • 秋山 氏:
  • 代表が直接交渉できなかった店舗でもちゃんと価格が形成できるようになりました。特に、売上が大きい店舗で合理的な価格を獲得できている点は有り難いですね。また、交渉や支払いに関する業務が7店分一括で済みますから、業務効率が大幅にアップしました。これは圧倒的に大きなメリットです。 また、「医薬品ネットワーク」加盟店のスケールメリットを活用して、弊社の研修を他社さんに告知いただいていることも非常に助かっています。

貴社の研修を「医薬品ネットワーク」加盟店に広く知ってもらうことが、フォルマンさんのメリットにつながっているのでしょうか?

  • 氏:
  • 秋山 氏:
  • この研修を社外に広く周知したい理由は大きく2つあります。1つは、薬局の在り方を次のフェーズに進ませるのは今しかないと、私自身が感じていることです。コロナ禍で急速に進んだ社会変容の波を逃すと、「薬剤師」の社会的な立場はこれ以上変えることは難しいのではないかと。薬剤師にしかできない職能を最大限に発揮するには、会社の垣根を超えて広く若手薬剤師研修を行い、地域全体でレベルアップを図っていきたいと考えています。 もう1つは、全国に60,000店舗もあるといわれる薬局は、その多くが中小の薬局です。小規模な企業ですと新卒入社の薬剤師は毎年1〜2名ほどでしょうか。彼らが自分たちの会社のことしか知らず、限られた経験値のまま社歴を重ねていく現状があります。同期社員や先輩社員の数も少ないため、学ぶ機会も限られています。特に、栃木県は数年前まで薬剤師の就職希望地として人気の低い土地で、薬剤師不足が深刻だった時代もあり、中小の薬局には非常に厳しい環境にあります。 そのような状況を打破すべく、合同研修会を通じて中小の薬局・薬剤師同士の“横のつながり”を作る機会になればと考えています。その点で全国に7,000店以上の加盟件数(※2022年4月現在)を持つ「医薬品ネットワーク」のスケールメリットには大きな期待と魅力を感じています。

7店舗の中には特徴的な展開をされている店舗もありますが、どのような想いがあるのでしょうか?

  • 氏:
  • 秋山 氏:
  • 私は薬科大学の前に、芸術大学でグラフィックデザインを学びました。当時から建築デザインにも興味があり、2014年の開業後に店舗デザインやコンセプト作りを任せてもらえた際、従来の殺風景な薬局のイメージを一新したいと考えました。シンプルでありながら木を基調した温かみのある空間で、コーヒーやお茶を飲みながらお薬を待つ居心地のよい店舗にしたいなと。看板の店名フォント(文字の書体)も、親しみやすさの中に信頼感を持っていただけるよう、文字から受ける印象にもこだわりました。

小山駅前にあるドライブスルー薬局には、ブックカフェ兼コワーキングスペースが併設されています。

  • 氏:
  • 秋山 氏:
  • 実は、遅ればせながら昨年からSNSを始めまして。私は本が大好きで読書好きの人たちとSNSでつながった際、互いの書籍を共有できるリアルなスペースがあるといいなと思いついてしまったのです(笑)。そこで自分の蔵書を1300冊ほど持ち込み、ドリンクを飲みながら読書や仕事ができるコワーキングスペースを構想し、小山駅前の薬局に併設しました。
  • 氏:
  • 小林 氏:
  • おやまドライブスルー薬局は、2021年に県内初となるお薬受け取り用の「スマートロッカー」を設置したドライブスルー薬局です。同敷地内にブックカフェ兼コワーキングスペースが併設されていることで、地元メディアにも数多く取り上げていただきました。
  • 氏:
  • 秋山 氏:
  • 薬局は処方箋がないと行かない場所です。仕事や読書など目的を持って行く場所に薬局があれば、ついでにお薬をもらって行こうという自然な流れが生まれます。投薬までの待ち時間の解消にもつながりますし、何よりも薬局のイメージを変えていきたいという強い想いがありました。

最後に、今後の目標をお聞かせください。

  • 氏:
  • 小林 氏:
  • 若手薬剤師研修は毎年改編を重ね、よりよい研修内容になるようブラッシュアップしています。1年目薬剤師の年間研修スケジュールは、春の新人研修を2週間、その後、月1回の研修、さらに秋にも2週間ほどの研修を実施しています。ただ、自分にとっての目下の課題は、2年目以降のアフターフォロー研修の充実です。冒頭にお話しました“国家試験の勉強と臨床をつなぐ”研修を継続させるためにも、2年目以降の薬剤師の学習モチベーションをどう維持させていくか。その仕組みをしっかりと考え、実現させていきたいです。
  • 氏:
  • 秋山 氏:
  • 理想としては、北関東エリアの新卒薬剤師を集めた合同研修会を実現したいですね。薬局・薬剤師同士のつながりを作り、他社の薬剤師と有益な情報交換を自由にできる環境を整えていくことが、直近の大きな目標です。次年度4月開催の新卒薬剤師合同研修会も社内外に広く周知していきたいと考えておりますので、多くの方にご参加いただきたいですね。 2023年には電子処方箋の運用も始まり、門前だから患者さんが入るという時代は終わります。服薬管理方法や医療機関との情報共有の在り方も、改善が必要になることでしょう。そのような変化の時代に、弊社が患者さんに選ばれるには何をすべきか。薬剤師の職能を最大限に活かすことは前提とし、付加価値のある新しいコミュニケーションを実践する店舗づくりを、地域の先陣をきって実現していきたいですね。薬局業界の新たなフェーズ突入を楽しみながら、社内みんなで発案・企画し、実践に移していく。これがフォルマンとしての今後の取り組みの一つだと考えています。

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「VOICE 〜他社薬局から合同新人研修に参加〜」 タカハシ薬局合同会社 タカハシ薬局 大竹 彩海 薬剤師

  • 氏:
  • 受講者と講師が双方向にコミュニケーションを取れる講義でしたので、受け身ではなく自発的に考えながら受講できたことが印象的です。疾患別の講義後に服薬指導のRPGで多くの処方例に触れることができ、より深い知識が身に付きました。また、毎日の報告書が知識の整理につながりました。私は1店舗経営の地域密着型薬局に入職しましたが、他社の新入社員の方たちと同期のように過ごせたことが楽しく、得難い経験をさせていただいたと思います。

プロフィール

店舗データ()

企業名 :株式会社フォルマン
所在地 :栃木県佐野市堀米町3966-1
店舗数 :7店舗〈あきやま薬局(栃木県佐野市)、みのり薬局(栃木県上三川町)、にじいろ薬局(神奈川県茅ヶ崎市)、ひかり薬局(埼玉県川口市)、ことのは薬局(神奈川県中郡)、おやまドライブスルー薬局(栃木県小山市)、つむぎ薬局(神奈川県伊勢原市)〉
創業  :2014年2月
従業員数:51名 ※2022年3月現在

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