薬局経営NAVIとは?
無駄のない流通が、
薬局の未来を明るく照らす
「薬局経営者が抱える大きなストレスを軽減したい」
「ちかくにいる。ちからになる。」第2回

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「ちかくにいる。ちからになる。」第2回

株式会社メディカルシステムネットワーク

株式会社メディカルシステムネットワーク

代表取締役社長田尻稲雄

「ちかくにいる。ちからになる。」 この連載は、“患者の方々や地域、さらには医療人を、いちばんちかくで支えるちからになりたい。”という想いから始まった企画です。地域医療の未来を創るさまざまな人物が、それぞれの役割や視点から想いを語っていきます。 前回に引き続き、薬局経営をサポートする株式会社メディカルシステムネットワーク代表取締役の田尻氏が登場。「医薬品ネットワーク」に加盟した調剤薬局が得られるメリットは多岐にわたります。また5,000件以上の調剤薬局が加盟する大きなプラットフォームに成長したことで、今後はさまざまなビジネスが可能となるだけでなく、よりよい地域医療を目指すための試みも始まっているようです。

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価格の透明性を高めた単品単価の交渉にこだわる

医薬品ネットワークの加盟店は、急配を減らす、発注や配送の時間を決める、支払サイトを短縮するなど、いくつかの条件に応じることで仕入れ価格の交渉をする必要がなくなり、安定した価格で医薬品を仕入れられるようになる。また医薬品卸売会社(以下、卸)にとってもさまざまなメリットがあり、薬局と卸がWin-Winの関係を目指せるビジネスモデルとなっている。

調剤薬局が医薬品ネットワークに加盟するメリットについて、ある加盟店からは「仕入れ価格の透明性が高い。また数字を見て予算が立てやすくなったので、非常に信頼を置いている」という声が聞かれました。この「数字」とは何を指しますか?

  • 田尻 氏:
  • 実際に薬局の方から、反響をうかがうととてもうれしいですね。 数字というのは、加盟店の方々が得られる経営アドバイスのようなものです。この数年、政府が「医療費の抑制」を掲げるなか、調剤報酬を含めて価格を下げていこうとする動きがあり、薬局経営者の方々に大きなストレスがかかっています。そこで加盟店の方々には、どうしたら調剤報酬点数を取っていけるのか、どの品目を選んだらどれくらい薬局の収支に影響があるのかなど、さまざまな計算を行い提示できる仕組みを作りました。 例えば、商取引において政府や自治体間のやりとりを意味する「GtoG」という言葉がありますが、私たちはジェネリック医薬品のやりとりでこの言葉を用います。「今、仕入れているジェネリック製品からこちらのジェネリック製品に変更すると、これくらい安く仕入れられます」とか、「これを1年間続けると、200万円の差が出ます」とか、そういうことが即座にわかります。もちろん機械的な計算ですからその通りにいかないこともあります。このメーカーの商品が気に入っているとか、このメーカーの営業マンが好きだとか、人とのお付き合いもありますから。すべてが数字どおりにはいかないとしても、「理論上はこうです」と提案できるので、仕入れの参考に役立てていただけます。この経営アドバイスを得られることを理由に、加盟されるところも多いようです。

前回のインタビューでもおっしゃっていたように、価格に対して透明性を持つことがブレイクスルーにつながっているということですか?

  • 田尻 氏:
  • それ以外に何もないと思います。価格交渉においても、価格がなかなか提示されずに、時間の猶予がなくなるケースなど納得できないこともあったようですから。そういうやり方は「商人としてどうですか?」と問われれば、「消費者に、よい品物を安く届けることが第一」と答えるでしょう?それが商売の鉄則です。 でも、そういうことを感情的になって言っても仕方がないから、私たちは理屈が通る仕組みを提案しているわけです。薬局のビジネスモデルは厚生労働省が作っていますし、今はどこの卸から買っても仕入価格にそれほど差はありません。仕入れや物流の仕組みさえきちんとすれば、薬局は持続的に経営できるはずです。そのための流通のインフラを提供するのが私たちの役割だと思っています。

約5万JANもの医薬品を安定した価格で提供できるメカニズムは?

  • 田尻 氏:
  • 薬局を経営する際に大切なのは、安定した価格で仕入れられるかどうかだと思うんです。そこが不完全だったので、私たちがいろいろな条件をつけて安定させようとしているわけです。 例えば、業界の支払サイトは平均3ヶ月ですが、「2ヶ月にするから金利の分だけ多少安くしてもらえませんか?」と交渉したり。あるいは、「返品はしません」「急配も頼みません」と言うこともあります。当社では、流通の改善項目を8つ(EOS発注率の改善、返品率の改善、急配率の改善、納品回数の削減、発注時刻の適正化、納品時刻の適正化、発注行数の削減、配送方法の適正化)挙げていまして、それぞれ卸側のメリットについても議論を重ねることで、安定した価格を出してもらっています。

医薬品ネットワークが、他社サービスと比べて優れている点は?

  • 田尻 氏:
  • 医薬品ネットワークは、バイイングパワーの組織ではありません。そこが一番の特徴だと思います。 私たちはインフラを作っているので、継続して使っていただくために何が必要なのかを考え、卸の方々、ユーザーである薬局の方々とWin-Winの関係を作るために両者と議論を重ねてきました。卸や薬局の方々と一緒に持続的な仕組みを作ってきたことが、ほかのネットワークとの違いであり、評価していただける部分ではないでしょうか。 私たちが薬局の方々に提示する価格は全部、枠組みの中でやっていることですから、単品単価の交渉経緯をきちんとした形で説明できます。「私たちがこの点について問いかけたところ、こういう回答があり、こういう値付けになりましたが、いかがでしょうか?」というふうに、どんな議論がされたかきちんと説明できる。それに私たちは長年こういった説明をしてきましたから、言葉に嘘がない。そこが薬局の方々から、一番納得いただけているところじゃないかなと思います。 今は厚生労働省の「地域包括ケアシステム」によって、薬局の役割、薬剤師の役割が相当増えています。薬局経営者の方々のなかには、かかりつけ薬局、かかりつけ薬剤師など地域の患者の方々のために時間を割きたいのに、価格交渉にかなりの時間を取られてしまい苛立ちを覚える方も多いと思います。医薬品ネットワークは、価格交渉にかかっていた時間を一挙に取り除けますから、薬局経営者の方々のニーズに応えられたのだと思います。

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配送負担軽減と支払いサイト短縮で、卸にもメリットを

卸にとっては、どのようなメリットがあるのでしょうか。

  • 田尻 氏:
  • 発注から配送までの流れを卸側から見ると、薬局の発注時間や配送時間を変更してほしい、あるいは発注の回数や急配、返品を減らしてほしいなど、さまざまな要望があります。医薬品ネットワークではオンライン発注や適正な在庫管理を行うので、卸にとっても急配が減って作業効率を上げることができますし、コスト計算もしやすくなると思います。 もうひとつのメリットは、支払いサイトが短縮されることです。業界の平均は3ヶ月ですが、医薬品ネットワークでは2ヶ月で支払います。そのため、債権の管理がしやすいはずです。薬局に関しては、患者の方々が来られてレセプトを処理し、社会保険、国民健康保険に請求を出す。その2ヶ月後に入金があります。その入ってきたお金がそのまま、当月のうちに支払いに充てられるということです。卸にとっては、得意先の薬局のお金が回っていることが可視化されるので、個々の薬局の経営状態や債権管理の基本的なところがきちんと見える。これはすごく大きいと思います。

2ヶ月の支払いに難色を示される薬局も多いのでは?

  • 田尻 氏:
  • いらっしゃいます。3ヶ月を2ヶ月に短縮するのは大変なことです。薬局の方々からは「2ヶ月と言われても、1ヶ月も縮められないですよ」と言われることが多いので、こちらからは調剤報酬債権を流動化して、社会保険や国民健康保険からの入金を1ヶ月以上前倒しで現金化する方法などを提案しています。 支払サイトの短縮は、卸にとってのアドバンテージなんです。卸にとって2ヶ月で払ってくれる得意先を作ることがどれだけ苦労を伴うことか、債権の時間を短縮するのがどれだけ大変なことか、皆さん分かっておられるはずです。 その大変な部分を我々がやって、流通の改善に取り組むわけです。卸にとってもメリットのあることですから、そこはご理解いただきたい。私たちも最大限頑張りますから皆さんもお願いします、ということですね。やはりビジネスは対等な関係のもとで行われるべきだし、そういう関係を築く作業を、私たちはこれからも進めていきたいと思っています。

薬局と卸との流れを整えてからメーカーに働きかけていく、というお考えですか?

  • 田尻 氏:
  • 両方から、ですね。私たちのネットワークを見たジェネリックメーカーから「こういう計画生産ができないでしょうか? コスト的にはこれだけ下げられます」という提案も出てきていますし、それがGtoGの提案にもつながっています。今はGtoGですが、遅からず新薬メーカーのところまでつながる時代がやって来ます。ですから、そこに向けてGtoGのモデルを作ることができれば、業界全体の流通がローコストになる。これはぜひ、やっていきたい部分ですね。

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過剰在庫も不動在庫もない“無駄の少ない世界”を実現したい

医薬品ネットワークの加盟店が増加し、ひとつのプラットフォームとなったことで、卸やメーカーからはさまざまな協力が得られるようになってきた。また地域医療においても、ネットワークを活用した、新たな試みが始まっている。

現在のシステムで、今後改良していきたい点はありますか?

  • 田尻 氏:
  • 今、注力しているのは自動発注ですね。自動発注化が進めば、卸側も薬局側も負担が軽減されて、流れがすごく良くなると思います。今、直営店では手動でも入力できる発注機を使っていますが、自動発注化に向けていろいろと動いているところです。 自動発注すると、一時的に在庫が多少膨らむこともありますし、「不足するのでは?」と不安になったりもしますが、最終的にはうまく在庫も減っていくし、品切れもなくなります。実際、直営店ではほとんど急配がなくなりました。できるだけ早く、5,000件の加盟店に広げていきたいですね。これができれば、時間の無駄も相当減ると思います。

加盟店が順調に増えています。5年後を目処に加盟店1万件を目指すとのことですが、今後どのようなビジネスをお考えですか?

  • 田尻 氏:
  • 現在、加盟店は直営店を含めて5,000件を超えており、市場全体の10%を超える域に入りました。統計的に考えても8%以上あれば、いろいろなモデルを提案でき、数字的な根拠になるといわれています。医薬品ネットワークというひとつの大きなプラットフォームを、加盟する薬局の方々と一緒にどう利用していくかを議論したいですね。それに加えてシステム販売やビッグデータを使ったビジネスなど、新たなビジネスを作ることができればいいと考えています。 それから、今はエリアごとに加盟店同士のローカルネットワークを作ることを進めています。このプラットフォームをどう活かすかという話は今後展開していきますが、厚生労働省が進めている地域包括ケアシステムとうまく重ね合わせることができれば、地域医療にとってもいい展開になるのではないでしょうか。最近は地域の薬剤師会単位で医薬品ネットワークに加盟されるところが増えていますので、地域ごとの薬剤師会と一緒に、いろいろな仕事をやっていけるのではないかと思っています。 プラットフォームをもう少し整理して、いろいろなご提案をしていきたいですね。いずれにしろ、すごくおもしろい時代に入っていくんじゃないかと思います。

加盟店同士のネットワークについて詳しくお話いただけますか?

  • 田尻 氏:
  • 新潟県の上越市や神奈川県の一部で始めています。地域の薬局同士が常時在庫情報を共有し、医薬品を融通し合えるシステムはすでに構築できています。そのシステムを使って、前回お話しした流通改善の8項目(EOS発注率の改善、返品率の改善、急配率の改善、納品回数の削減、発注時刻の適正化、納品時刻の適正化、発注行数の削減、配送方法の適正化)の実現に向けてどういう取り組みをすればいいのかを卸も含めて議論しています。

最後に、薬局の皆さまにメッセージをお願いします。

  • 田尻 氏:
  • 医薬品ネットワークは、この業界のサプライチェーンマネジメント、ローコストオペレーションというものを、きちんとした形で定着させています。これだけの加盟店の方々と一緒にやっていることですから、卸の方々にも必ず、我々がやっていることの意味は理解していただけるでしょうし、実際、いろいろな協力体制を敷いてくださる会社も出てきています。 卸と薬局が一緒になって流通改善を実現できれば、メーカーが計画生産できるようになり、過剰生産もなくなります。そうすると過剰に在庫を抱えることもなく、不動在庫もなくなって、非常に無駄の少ない世界が実現できます。生産から消費までをきちんと俯瞰し、そこに関わっている人たちが物量をコントロールできるようになります。意外とその実現は難しくないと私は思っています。そういう世界を私たちにぜひ作らせていただきたいですし、薬局の方々には「ぜひ、そういう世界を一緒に作りましょう」と申しあげたいですね。

ありがとうございました。

プロフィール

田尻 稲雄(たじり いなお)

1948年、北海道小樽市生まれ。74年一の山形薬業(株)入社、81年メディカル山形薬品(株)入社、89年に同社代表取締役就任、91年には親会社の(株)秋山愛生舘(現・(株)スズケン)の取締役に就任し、北海道内に多くの薬局を展開する。
99年(株)メディカルシステムネットワークを設立し、代表取締役社長に就任、現在に至る。16年(株)フェルゼンファーマ代表取締役社長就任、また、札幌を拠点に活動する社会人ラグビークラブ「北海道バーバリアンズ」の設立者の一人でもあり、現在は北海道ラグビーフットボール協会の会長も務める。

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