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2代目若手経営者の戦略
「薬剤師たちが、経験を積める場を作りたい」

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本通調剤薬局グループ

本通調剤薬局グループ

取締役副社長角田俊人

北海道札幌市で8店の調剤薬局を経営する本通調剤薬局グループは、1980年に角田都志夫さんが創業。現在は、息子である角田俊人さんが副社長として経営に携わっています。今年で36歳と若手ながら、薬剤師会の常務理事も務める角田俊人さんに、これからの薬局・薬剤師のために今取り組んでいること、今後の目標などをお話しいただきました。

目次

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第1号店である本通調剤薬局の開業から、現在までの経緯、主な店舗の特徴をお聞かせください。

  • 角田 氏:
  • 本通調剤薬局は、社長の角田都志夫によって1980年にスタートしました。開業当時、北海道はまだ医薬分業が始まったばかり。北海道薬剤師会は社会保険委員会を立ち上げて、医薬分業を広げようとしていた頃でした。社長もその一員として、病院に出向いて医薬分業を広げる活動をしていたそうです。 それから約40年間、各所から声をかけていただき、出店したり逆に手放したりしながら、現在は8店舗を経営しています。本店となる本通調剤薬局は、主に皮膚科の処方箋を扱っていて、月に1,300枚程度です。グループ内で一番受付回数が多いのが「えるむ薬局」で、月3,200枚くらい。そのうち、施設・在宅訪問が400枚くらいです。

角田さんご自身の経歴、本通調剤薬局グループに入ってからのお仕事についてお聞かせください。

  • 角田 氏:
  • 私が薬剤師として最初に働いたのは、調剤薬局も経営する神奈川県の病院でした。薬局薬剤師も病院薬剤師も経験してみたかったため、病院勤務を経て調剤薬局で1年働いた後、また病院に戻してもらうという具合に働いていました。同時に、金曜と土曜の夜はドラッグストアでアルバイトするという兼業生活をしていました。というのも、当時は病院の給料が低く、それに加え、体力もあり色々な職種を経験したいという思いもありました。そのドラッグストア勤務では、夜間に社員もいない中、入力から保険の確認などすべての作業を一人で任せられていたため、特に病院では経験できない事を学べました。一その後、結婚を機に北海道にやってきて、2013年に本通調剤薬局グループに入りました。今は、副社長としてグループ全体を見ながら、各店舗をまわっています。私が入るまでは手書きの薬歴だったので、電子薬歴を社長に懇願し、導入しました。2年間をかけて各人に操作をきちんと習得してもらいました。電子薬歴の経験が無い職員がほとんどでしたので、導入するのは大変でしたが、今となっては職員皆、問題なく使用できています。個人薬局は、まだまだ手書きの店舗も多いと思いますが、最近の薬剤師は手書き薬歴の薬局には面接すら受けに行かないと聞いています。 薬局以外では、2020年7月から薬剤師会支部長会の代表として常務理事も務めています。常務理事には同世代の薬局経営者もいて、皆さん色々な考えを持っているので、それぞれ自分たちの良いところを出していければと思っています。

薬剤師の仕事にやりがいを感じるのはどんなときですか?

  • 角田 氏:
  • 今は在宅訪問ですね。特に一人暮らしで外出できないような個人宅の患者さんの場合は心のケアもできる。そこに薬剤師が介入できるのは、やりがいも大きい。認知機能の低下から、「薬を飲み忘れてもいいや」と思う患者さんも多いのですが、ドクターに連絡し1日の服用回数を減らす提案をするなど、私たちがケアできることがたくさんあります。正直、利益にはならないけれど、モチベーションはあがります。 私自身は、病院薬剤師の経験から、ドクターと話すことに臆することはないのですが、薬局しか経験のない薬剤師は、最初、ドクターとのやり取りを敬遠しがちです。でも、みんなそのうち慣れてくるし、特に若い人たちは在宅訪問をやりたいという意欲も大きい。往診同行は特に勉強になり、聞かれたらすぐ応えなければいけないというプレッシャーもあり、そういう経験を積み重ねることで、薬剤師としての能力が伸びていると感じています。 だから、利益にはならないけれど、私たちの会社はほとんどの薬剤師が在宅訪問を行っています。一方、利益だけ求めている薬局は事務員が現場で薬をセットすることもある。それだと意味がなくて、ただ薬を送ってしまえばいい話。私たちの場合は、特別養護老人ホームでも看護師さんに代わって薬剤師が薬をセットしています。そうするともう半日以上はかかってしまいます。当然利益はあがらないけれど、薬剤師が訪問してセットし、看護師さんや職員さんと交流して、質問や疑問等に答えられるようにしています。 健康サポート薬局の要件からしても、国が求めているのは、一つの薬局がまとめてたくさんの数の在宅訪問をこなすことではなく、5万9,000件も薬局があるのだから、少しずつ手分けしてやりなさいということ。1人薬剤師の薬局も他の店舗と協力して、地域のコミュニティの中で、少しずつ実施していくことが望ましいのだと理解しています。

薬剤師の採用や教育はどのようにされていますか?

  • 角田 氏:
  • 今は新卒採用はしていませんが、常に多めに採用するようにしています。調剤薬局の薬剤師は、普通の職種に比べたら休みが少ない。慣れてそれが普通だと思っているひとが多いのですが、私としては、働いてくれている従業員の休みをきちんと確保できる体制を作りたいと思っています。なんとなくただ働くのではなく、メリハリとモチベーションをもって働いてほしいのです。 また、今後、他の薬局で働くことになっても恥ずかしくないような薬剤師になって頂きたいと考えています。薬剤師は、ずっと一ヶ所で働くことはほとんどありませんから。e-ラーニングを用いた研修にかかる費用についても希望者には正社員やパート等にかかわらず会社が負担しています。薬歴研修も行っています。抜き打ちでお店に行き、チェックするのです。厳しく指摘するのではなく、こういうパターンもあるよ、こういったことも聞き出せるよとアドバイスする。更に、チェックをつけた薬歴をその店舗の薬剤師たちに共有することで、お互いの薬歴も見てもらっています。人の薬歴を見ると、「こういう切り口もあるんだ」と勉強になるからです。みんなちゃんと患者さんと話しているのだけれど、それをきちんと残さなければ意味がない。 弊社の薬局出身者がどこの薬局に行ったとしても、次に投薬する薬剤師に伝わる薬歴を書けるようにしたいと考えています。

2020年4月に薬局経営のサポートを行う「医薬品ネットワーク」 に加盟されたそうですが、その理由をお聞かせください。

  • 角田 氏:
  • きっかけは消費税の増税でした。薬は、患者さんに渡すときには消費税はかかりませんが、医薬品卸売会社(以下、卸)から仕入れるときにはかかります。消費税が上がるということは、薬局の負担になるわけです。制度上は薬価を引き上げることで増税が相殺されたことになりますが、年々、薬価は徐々に下がっているため負担が増えているように感じられます。でも卸にその分を下げてくれとは言いにくい。お金のことだけを考えて交渉して、今まで社長が一から築いてきた地元の卸との付き合いを壊したくないですから。でも、よい関係を続けようと甘い交渉をしていると、経営がうまくいかなくなると考えました。会社の業績が落ちれば、職員の負担になります。結局、約半年かけて検討し、最後は社長が卸に相談したところ、「今の時代はそうなってきている」「我々の関係もそんなに変わらないですよ」とご回答をいただき、加盟する決断に至りました。 「医薬品ネットワーク」には、他の類似サービスとは違う良さがあると感じています。それは、卸との交渉を任せて厳しい条件を押し付けるのではなく、卸の負担を減らすことでその分価格を安くできる仕組みです。薬局は当たり前のように急配の注文をするものですが、「医薬品ネットワーク」はそれを予測して注文することで配送回数を減らし、電子化することでオペレーターの負担も減らしている。そういう点が、これからの時代の流れにマッチしていると思います。

医薬品ネットワーク」に加盟して変わったことは?

  • 角田 氏:
  • 1つは、仕入れる薬をグループで揃えられる点です。例えばジェネリック医薬品。これまでは新製品が出ると各店舗にMRさんが営業に来て、それぞれの薬局長が仕入れの判断をしていました。そのため、店舗ごとに仕入れるメーカーがばらばらになっていたんです。在庫が動かなくなったとき、他の店舗で使ってもらうことができず廃棄になることがあり、8店舗あるグループの利点を活かせないケースもありました。「医薬品ネットワーク」に加盟してからは、本社だけで情報収集が完結することで、本社でメーカー選択の判断ができるようになり、トップダウンで店舗に的確な指示が出せるようになりました。薬局長も、MRさんに対して「本社が決めているから」と言えるので、複数のMRさんに対応する時間的負担が減り、仕入れるメーカーの選定もしやすくなりました。 もう1つ良かったのは、不動在庫をネットワークで売れる「デッドストックエクスチェンジサービス」ですね。在宅訪問をやっていると、幅広い種類の薬を取り扱い、その中には高額なものも結構あります。そうすると、仕入れるときに躊躇してしまいます。「医薬品ネットワーク」に加盟する前は、不動在庫が出ると、20~30店舗を経営する会社に依頼して、1ヶ月以上かけて調整してもらったりもしていました。今は、余ってしまってもネットワークで全国に回せるという安心感があります。うちのグループは薬局長=在庫担当なので、この点でも薬局長の不安や負担が軽減されたと思います。

今後の目標をお聞かせください。

  • 角田 氏:
  • 薬局を増やす時代ではないですけど、扱う科が少ない薬局が多いので、働いてくれている薬剤師がもっと経験できる場を作りたいですね。皮膚科メイン、眼科メインというような単科を扱う薬局にずっといると、知識に偏りが出てきてしまいます。例えば、大規模病院の敷地内薬局や医療モールの薬局だと特に診療科も多く、勉強できる環境が整っている。大手チェーンがそういうお店を独占するようになると、2~3店舗しかない薬局には色々な科の処方箋を経験したい薬剤師が入ってこなくなってしまいますよね。なので、「医薬品ネットワーク」の加盟店の中で、他の薬局に派遣し合えるような制度があるといいなと。小さい薬局でも、他の薬局で学んで知識を広げられるといったことができればいいですね。

プロフィール

店舗データ()

企業名 :本通調剤薬局グループ(有限会社本通調剤薬局、有限会社あけぼの、有限会社ファーマシー本通り)
所在地 :北海道札幌市白石区、中央区、北区、手稲区、豊平区
店舗数 :8店舗(本通調剤薬局、カトレア薬局、東邦生命ビル薬局、あじさい薬局、えるむ薬局、富丘調剤薬局、南本通調剤薬局、月寒調剤薬局)
創業  :1980年7月
従業員数:60名(正社員:薬剤師26名、事務13名/パートタイマー:薬剤師17名、事務4名)※2020年7月現在

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